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ゴヤの名画と優しい泥棒のayellowbirdのレビュー・感想・評価

ゴヤの名画と優しい泥棒(2020年製作の映画)
3.7
実際に起こったゴヤの名画盗難事件の知られざる真相を描いたドラマ。昨年9月に亡くなった“ノッティングヒルの恋人”のロジャー・ミッシェル監督の遺作となった。
1961年、世界屈指の美術館ロンドン・ナショナル・ギャラリーから名画“ウェリントン公爵”が盗まれた。この事件の犯人はごく普通のタクシー運転手である60歳のケンプトン・バントン。長年連れ添った妻とやさしい息子と小さなアパートで年金暮らしをするケンプトンは、テレビで孤独を紛らしている高齢者たちの生活を少しでも楽にしようと、盗んだ絵画の身代金で公共放送(BBC)の受信料を肩代わりしようと企てたのだ。しかし、事件にはもうひとつのある真相が隠されていた…。

社会風刺の効いた人間ドラマ! 公共放送の目的は“全国にあまねく放送を普及させ、豊かで良い番組による放送を行うこと”(by NHK)で、その目的を“他者、特に政府からの干渉を受けることなく自主的に達成できる”ようにするには “財政の自立”が必要で、“それを実現しているのが受信料制度”なのだと言う。ただ、某局の自主的な判断だけで、本当に“公共性”のある番組が放送できていると言えるのか? また、“受信料制度”は、公共放送の目的を達成するために最も相応しい制度なのか?
某局を訴えている某党の主張に与するつもりは毛頭ないが、バントンの事件がきっかけとなって、受信料制度の母国英国では、高齢者の受信料が免除されたことを知ることができたのは、受信料負担者の一人として、有意義な作品だと思う。
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