よどるふ

ウーマン・トーキング 私たちの選択のよどるふのレビュー・感想・評価

-
定められた期限までに決断を下さなければならない。決断を下すためには、話し合いが必須となる。話し合うためには思考することが必要であり、思考には言葉が不可欠だ。そしてこの映画は、“使う言葉”の吟味を重要視している。

男たちの暴力に脅かされた女(私)たちが使うべき言葉は「逃げる」ではなく「去る」であるという認識は、決断のための話し合いの場で早い段階から共有される。言葉に現れている“男ありきの思考”から脱却し、女たちが男に立脚した存在ではないことを確認するためである。

しかしこの映画は、女たちが“男性”について考えなければならない場面も用意されている。“男”というよりも”男性”という属性について考えること。いつから“男”は“男性”になるのか。この映画におけるイレギュラーな存在である記録係の男が、その思考の重要な役割を担っていた。

そして話し合いが行われている納屋という空間が絶妙だった。完全に閉鎖された場所ではないところは“風通しの良さ”を感じさせるし、話し合いの途中で人の出入りもあるし、途中ハッとするようなアクションによってその空間の“位置”を示すシーンもあるしで、飽きがこなかった。

この映画は、女たちが話し合いの末に出した決断を実行に移すところで幕引きとなる。そこで、とある人物が話し合いの中で披露していた「荒れた馬の手綱を引いたときに意識したこと」という挿話を思い出す。ここはまだ道の半ばだ。視線をどこに向けるかが重要なのである。
よどるふ

よどるふ