ポケ文太郎

ウーマン・トーキング 私たちの選択のポケ文太郎のレビュー・感想・評価

4.5
2022年 アメリカ🇺🇸

この映画は2000年代ボリビアのメノナイトのコミュニティで実際に起きた集団暴行事件に着想を得て書かれたミリアム・トウズの小説『Women Talking』が原作

現代社会から隔離された小さなコミュニティ内で起きた事件、小さな幼女から年配の女性、既婚者までがその被害にあっていたが、強力な動物用麻酔薬で眠らされて多くの女性の記憶があいまい
そのため長く”女たちの妄想だ””悪魔の仕業だ”と無視されていたこの問題が犯人逮捕でついにあかるみになった

というところから始まります
以下はほぼ自分の感想で多少のネタバレを含みます
監督の意としていることと違うかもしれないので未見の方はスルーしてください



登場する女性たちは読み書きができません
そういう最低限の教育すら受けていないのです
暴行をした犯人が証拠不十分で一時釈放されること知った女性たちは納屋に集まり今後の対応を話し合います

「男たちを赦す」
「闘う」
「逃げる」
という三択

「闘う」と「逃げる」が同数だったので代表者が話し合います

そもそもこんな酷いことをされて何故「赦す」のか

メノナイトとはキリスト教の宗派のひとつで、電気や水道などの現代文明から距離を置き質素な生活様式を保っている宗教団体です
よく似ているのが1985年の映画『刑事ジョン・ブック目撃者』で有名になったアーミッシュで、こちらはメノナイトのから分離したさらに厳格な保守派団体

キリスト教の教えに「赦し」があり、罪や罪人を赦さないとイエスの教えに背くことになる、と考える人もいるわけです

「逃げる」を選んだら?残された男たちの世話はどうするの?
と尋ねる女性もいました
そんなの男だけでもどうにかなるのに、長年男中心の家族の世話は女性しかしていないのでこのような疑問が起きるんですね

本作の中で女性たちがたくさん疑問を投げかけながら語り合います
時にはそれが問答のようにも聞こえてきます

何の教育や知識も与えられず宗教の名のもと男中心の社会に生活していた女性たちが、今までの生活すべてに疑問を持ち始めます

同じ被害を受けていても皆それぞれ意見は異なります

多数決で決めたり、問題を解決していくのではなく「語る」ことで各自に新たな「気づき」が生まれてくる
本作撮影中も俳優同士で意見を出し合いセリフの変えていったそうで、製作中からウーマン・トーキングですね

女性ばかりのキャストの中でオーガスト役のベン・ウィショーが唯一の男性
彼はコミュニティを出て大学へ行ったことのある教師
彼の存在は本作でひそかに重要な役どころでした
女性たちの話し合いに意見はせず、受け入れる
そして「有害な男らしさ」へ言及する場面もありました
彼がいるおかげで「女性vs男」の構図にならない、貴重な存在です

「赦し」に戻りますが、本作中にもありましたが赦しは時々許可(許し)と誤解されます
相手が罪を認めて改心していなければ「赦す」必要はないのです

女性たちの会話劇ではありますが非常に哲学的でもあると感じました
「語り合う」こと、それは女性自身で考えることなのです

特殊はコミュニティ内の話でありながら現代の女性の人権問題にもかかわる話になっていて、アカデミー賞脚色賞受賞も大大大大大納得です!!!

ラストも結論は同じでもそこに至るまでので考えが各々違うところが凄くいいです
ポケ文太郎

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