Machiko

ウーマン・トーキング 私たちの選択のMachikoのレビュー・感想・評価

5.0
素晴らしかった。2時間ほぼずっと女たちが話し合っているだけなのに、ずっと目が離せなかった。

これ、「マッドマックス怒りのデスロード」だし、「劇場版少女革命ウテナアドゥレセンス黙示録」だよね。
マッマFRの本編の前日、きっと子産み女たちはこの映画の女たちのようにたくさん悩んでたくさんぶつかってそしてあの答えを出したんだろうな、とすごく思った。
あとウテナもマッマFRも、ついでに「裸足の季節」とかもそうなんだけど、自由を掴み取った彼女たちの未来が「良いものとは確約されてない」のもミソで、もしかしたらあの女性たちの行く末は村に残るよりもっと多難なものになってしまうかもしれない、でも少なくとも「自分の、自分たちの意思で」そこに辿り着けるのが、何より大切なことというか……。客体化されていた人々が主体性を取り戻すことの意義の大きさと大切さがこれでもかと描かれていた。

あとはあの場にいた唯一の男性であるオーガストの存在がすごくこの映画、ひいてはそれが象徴する社会全体の肝だと思っていて、普段インターネットを見ていると「弱者男性」がどうとか、あとは例えばだけど女性の身体のこと、月経などについてあまりにも無知な男性が、女性に指摘されると「女から偉そうに講釈を受ける筋合いはない」とばかりに怒るくせに自分からは全く調べたり勉強すらしないような……そういう、女を蔑視するくせに結局女に甘えてるというか、「俺たち男は女からケアと教示を受けて当たり前だ」みたいな男性たちをよく見るけれど(もちろん男性全員がそうだとは思っていない、あくまでも一定数存在するそういう奴が目立つって話)、それに対してもこの映画はオーガストの存在をもって痛烈に批判しているんだよね。
彼は去りゆく女たちに、「少年たちの教育を請け負う」と約束する。ここには明らかに、女が男をケアしたり手とり足とり教えてやるんじゃなく、女が男を「立ててやる」なんてことももちろんせず、男である自分たちだけで、男同士でしっかりと正しく二本足で立って、人を傷つけず、必要ならば他人のケアもできるようになってくれ、いやなるべきだ、っていう強いメッセージが込められていると思う。

今の時代に確実に必要な大傑作だったと思う。傷つけあうのではなく、手を取り合って、神へ捧げる聖歌を歌う彼女達の姿が、今も脳裏に焼き付いている。
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