スキピオ

シン・ゴジラのスキピオのレビュー・感想・評価

シン・ゴジラ(2016年製作の映画)
3.0
<「現場」を持ち上げすぎ。>

「現実(ニッポン)対虚構(ゴジラ)」というど真ん中のテーマ、高すぎるハードルに愚直に、ポジティブさをもって挑んだ庵野総監督は敵の豪速球を完璧に捉えていたのは認める。しかしながら自分にはホームランではなく大ファールだった。

まずボートの逆流シーンはじめ国内最高クラスの予算がかかっていながら「10年遅れか」と笑ってしまうほどのCGレベルの低さに見ていられなかった。あれは優れた俳優、脚本の足を明確に引っ張っていた。「アイアムアヒーロー」とかで国産CGに感心した分ショックが大きい。これでよくもゴーサインが出たものだ。

あとベテランから若手、個性派中堅までめくるめく日本国内俳優の競演につぐ競演、特に例のチームメンバーの演技は素晴らしかった。けど出演者のあまりの多さとそれぞれの知名度に反する出番の少なさに観ているこっちが落ち着かなかった!気になるわ!

"この国最大の力は現場にある"そしてストーリーは現場すげー、現場すげー、の「現場賛歌」づくし、もはやファンタジーの世界、あまりに「現場」を持ち上げすぎ。仮に東日本大震災が起きていなければそれでもよかったかもしれないけど。このテーマ、このタイミングでこれでは、現場の頑張りでなんとかして、本質的なところをうやむやにしてしまった5年前を是としているようにどうしても見えてしまうんだよなー。キャッチコピーに「現実」を謳っていながら、あの時、日本人と日本政府の駄目さを徹底的に目の当たりにした日本人の傷口を、途中ギャグを入れ込んだりして巧妙に避けているのが白々しい。総理がピエロなのか有能なのかもブレブレだし、他の人もだいたい有能すぎ。やるならもうちょいガチでやってほしかった。何度も超有名なエヴァのBGMを入れるのも興醒め、鷺巣詩郎さんネタ切れですか。

というわけで最速上映の終演後、自分にはとても「拍手」はできませんでした。ただ絶賛の嵐へのカウンターという意識もあってのツッコミまくりかも。

観るべきかどうかというと観るべきです。