アルベルト・カヴァルカンティ、ロバート・ヘイマー、ベイジル・ディアデン、チャールズ・クライトンの4人の監督の競作によるオムニバス・ホラー。それぞれの作品は独立しつつも、主人公の建築家の悪夢のなかに、そ>>続きを読む
歌を通して人々に夢と希望を与え続けたエルヴィス。だが、スターであり続けるために彼が抱えてきた苦悩の大きさは計り知れない。母親、女、大佐、薬。さまざまなものに依存して苦悩を紛らわそうとするが、音楽のもた>>続きを読む
このレビューはネタバレを含みます
礼拝堂を備えた公共施設を設計するからには、あくまでそこを使う人々のためにつくる必要がある。私的理由ではなく公共性が求められる。架空の建築家・ラースローは公共施設としつつも、自身の心の闇をデザインに投影>>続きを読む
グレイシーの底知れなさはもちろんだが、それ以上に、エリザベスの利己的な面が不気味だ。エリザベスの介入によって、グレイシーとジョーとの間に亀裂が入っていく。グレイシーとジョーとの関係はある意味、パワハラ>>続きを読む
アメリカン・ドリームに敗れた父と息子たちが辿る過酷な現実と運命を描いた悲しき叙事詩。これは骨太!幸せの絶頂を描いた結婚式は『ディア・ハンター』を思わせる。そこからの悲劇の連続は釣瓶落としの如し。
監督が『ミナリ』のリー・アイザック・チョンで驚いたが、観終わって納得。ただのディザスター・ムービーに終わらず、登場人物の葛藤や挫折もよいバランスで描かれていて、非常に好感を持った。自然描写も『ミナリ』>>続きを読む
ヒッチコック監督のまだ観ていなかった作品を観ようと思い鑑賞。ヒッチコック監督の作品のなかでは地味な部類にあたるが、これがどうして、なかなか面白かった。告解を受けて苦悩する神父役に、生真面目な印象のモン>>続きを読む
そんなに期待しないで観たが、これはよかった。なんといっても、100分強で気楽に観られるのがよい。80年代末から90年代頭はこの手のB級映画が日曜洋画劇場で毎週のように放映されていて、いずれも話題作とい>>続きを読む
マーロウといえば、ハンフリー・ボガートやエリオット・グールドのイメージが強かったので、リーアム・ニーソン版のマーロウはまったく別物という感じがした。老い故の憂い、自虐、ユーモアがあって、ニヒルでぶっき>>続きを読む
過去の罪の意識から心を閉ざしたギャンブラーが、徐々に人間らしさを取り戻していく物語。一貫して無機質で単調な演出だが、復讐と再生の描き方が静かで、かえって味わい深い。
自然光に映える色とりどりの料理、逆光に浮かび上がる穏やかな明暗差、被写体から背景までの柔らかなボケ味にハッとさせられた。だが、それしか印象に残っていない。エンディングの「タイスの瞑想曲」もよかった。
難解。スペイン内戦の知識があったなら、もう少し深く理解できたかもしれない。絵画のように美しい映像で、一コマ一コマがミレーの「落穂拾い」やカミーユ・コローの風景画を見ているようだった。
「私がいないとダメ」と歪んだ共依存関係を築く、舞台俳優(ビング・クロスビー)とその妻(グレース・ケリー)の再生の物語。突如としてはじまる、グレース・ケリーと演出家(ウィリアム・ホールデン)の恋愛関係に>>続きを読む
相棒を隠れ家に匿った際のワインとラスクの慎ましやかな晩酌、パジャマに着替え歯磨きのシーンなどが、スピード重視の米国ノワールとは大違い。
2025年フィルム・ノワール13本目。
戦地に行きたいのに行かせてくれない。酒を飲みたくないのに延々と飲まされる。眠りたいのに眠らせてくれない。執拗に繰り返される天丼ギャグのオンパレード。戦争の不条理さを、シュールにではなくあくまで軽やかに>>続きを読む
フリードキンの映画をさほど観ているわけではないが、フリードキン作品のなかでも恐らくトップクラスの面白さだろう。CGの発達していない時代ゆえの不利はあるが、吊り橋を渡るシーン、行く手を阻む大木を爆破する>>続きを読む
場当たり的に出会う男に流されては失敗してを繰り返すワンダ。それでいて、時折強かな姿も見せる。とはいえ、一貫して目的も意志もない。あてどなく闇雲に彷徨するしかないのは現代人と変わらないような気もする。人>>続きを読む
蓄音機で流れてくる音楽を思い出せなかったが、ハンク・モブレー「Soul Station」の「Remember」だと気がついてスッキリ。残念ながら、音楽しか印象に残っていない…。
考え抜かれたインテリアや衣裳は確かに美しいけれども、私にはやや過剰に感じた。それよりも、やがて訪れる死を前にした厳かで静かな日々の描写が心に沁みた。そして、ジョイスの『死者たち』の引用、「雪はひそやか>>続きを読む
ギャンブラーのジョン・ヴォイトと相棒のバート・ヤングが借金の穴埋めのため、ラスベガスで一発逆転の賭けに出るが…。往生際、引き際の見極めがあまりに悪すぎて、「引くならいまだろ」と心中でずっと叫び続けてい>>続きを読む
ハル・アシュビーのデビュー作。何不自由なく育った白人のお坊ちゃんが、黒人スラム街にあるアパートを買って大家になるが、逆に人種差別に遭い…。1970年代当時に人種差別をテーマにした点では斬新だと思うが、>>続きを読む
アル中の失業者と、3人の子持ちの未亡人のロードムービー。未亡人役のバーバラ・ハリスがうるさくて、98分観続けるのは結構しんどかった。しかも、二人の会話がまったく噛み合っていない。ロバート・ブレイクが「>>続きを読む
失恋したアン・バクスターが、女たらしのレイモンド・バーと飲んで泥酔。翌日、レイモンド・バーは死体となって発見されるが、彼女は泥酔しすぎて前日の記憶がほとんどなく…。失恋した女性の弱みにつけ込み、酒を飲>>続きを読む
2022年のシネマヴェーラでの『蓮實重彦セレクション 二十一世紀のジョン・フォードPartⅠ』でジョン・フォード作品を何本か観て、その時も感じたことだが、ジョン・フォード作品は個人的にいまひとつ楽しめ>>続きを読む
『さらば冬のかもめ』『ハロルドとモード』以外観たことがなかったハル・アシュビーの遺作。B級感は否めない。だが、アルコール依存症から立ち直れず、精神的ダメージを負うとスリップしてしまう心の弱い元・麻薬捜>>続きを読む
一ヶ月の間楽しませてくれたダグラス・サーク特集も個人的には今日が千秋楽。フィナーレを飾るのはとびきり素敵なコメディ。ただ期待値を上げ過ぎていたようで、コメディとしては『僕の彼女はどこ?』の方が好みだっ>>続きを読む
『丘の屋敷』『ずっとお城で暮らしてる』などの恐怖小説で名をなした、シャーリイ・ジャクスンを題材にした創作映画。シャーリイと大学教授の夫との住まいに、夫の助手となる若い男性夫婦(フレッド、ローズ)が居候>>続きを読む
人気女優の愛人が、女優の夫を殺した犯人として警察に追われる身に…。その彼を助けようと奔走する役者志望の女の子が主人公。ヒロインのジェーン・ワイマンが地味で、華やかなシーンはすべてマレーネ・ディートリッ>>続きを読む
ヒッチコックのまだ観ていなかった映画を観ようと思い鑑賞。犯人ブルーノ役のロバート・ウォーカーが『二日間の出会い』のナイスガイとは打って変わって、イカれたサイコパスぶりを見せてくれた。通りすがりの子ども>>続きを読む
若返り薬研究に行き詰まった博士の留守中、檻を抜け出したチンパンジーが薬を調合し…!?ケイリー・グラントとジンジャー・ロジャースの若返り演技がとにかく面白い。特に、ジンジャー・ロジャースは振り切っていて>>続きを読む
フロイトの潜在意識に影響を受けたニューロティック・サスペンス。マザコンが行きすぎたばかりに女性を恋慕/憎悪する夫。ブラザーコンプレックスでやたらと干渉してくる夫の姉。挙動が怪しい秘書。登場人物がみな病>>続きを読む
アニエス・ヴァルダによるジェーン・バーキンの私的な肖像画。映画や歴史上の女性をジェーンに当てはめて劇中劇を自由自在に撮る一方、ジェーンとの対話が差し込まれる。内容自体はさほど面白くはないが、割と好きな>>続きを読む
初めてのアニエス・ヴァルダ。娘(シャルロット・ゲンズブール)の同級生(25歳くらい下)に恋をしてしまう中年女性の純愛物語。いまならば確実に犯罪行為になるであろうが、そこは流石アニエス・ヴァルダ。家父長>>続きを読む
駆け落ちした夜には水疱瘡に罹り、その後一年間は軍隊生活へ。休暇で花嫁の実家に喜び勇んで行ったものの、家じゅう謎の親戚で占拠され、二人きりになる時間がない。延々と引き延ばされる夫婦の営みを面白くおかしく>>続きを読む
ダグラス・サークが一部演出を担当。自らの美貌を武器に貧困から這い上がり、金も名声も男も手に入れるファム・ファタールもの。男を誘惑あるいは陥れる時のヘディ・ラマーの「してやったり」の微笑みに反吐が出そう>>続きを読む
一代で財を成した銀行家、エドワード・G・ロビンソンと、その4人の息子たちの愛憎劇。貧しい人にはよい条件でお金を貸すなど人情に厚いところもある反面、「この国は自由の国だ。弱肉強食だ」といい、兄弟同士で憎>>続きを読む