観々杉さんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

観々杉

観々杉

映画(855)
ドラマ(0)
アニメ(2)

プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

4.1

医学生を辞め有望な人生を捨てたかに見える女性は、レイプされ自殺した友人の恨みを晴らすために動く。設定や展開は重いが、ポップな音楽が伴奏に使われることが多く、比較的軽い気持ちで鑑賞できる。前半から中盤に>>続きを読む

我等の生涯の最良の年(1946年製作の映画)

4.4

第二次世界大戦後の帰還兵が自らの持つ傷と境遇に向き合う。ハリウッドが最も脚本に優れていた時代の中でも特に代表的な作品。上映時間は平均的な映画2本分と当時としてはかなり長尺な部類に入る。

ライトハウス(2019年製作の映画)

4.7

灯台で短期の仕事をする若者と仕事を押し付ける老人のドラマ。ギリシャ神話を基盤とし、ダークファンタジーのような要素も盛り込んだ。白黒の映像と厳格な演出によって、最近の作品とは思えないほど古典的な重みや叙>>続きを読む

ベイブ(1995年製作の映画)

4.5

子豚のベイブを主人公に据えて、農場のヒエラルキーやグループ対立の下で過ごす様子を描く。ブラックユーモアを込めて作られた脚本が最も見所である。台詞と動物たちの口の動きを重ねる技術が優れており、こちらもサ>>続きを読む

ビートルズ/イエロー・サブマリン(1968年製作の映画)

4.3

ビートルズ主演のサイケデリックなアニメーション。採用される楽曲はメロディアスで、これまでのビートルズ作品より音楽性の高い曲が多い。演出は凝っているがシンプルな物語なのでビートルズに興味がなくても楽しめ>>続きを読む

アレックス(2002年製作の映画)

4.1

時系列を乱すことによって物語の起伏を操作した。同じ手法を用いたパルプフィクションと違うのは物語の中核となるイベントを前半に集中させている所。他に目眩を起こすほどの回転ショットや被害者を強調して描く暴力>>続きを読む

オテサーネク 妄想の子供(2000年製作の映画)

4.1

題材の時点でかなり不穏であり、極端なアップやストップモーションを使い不気味さを強調させた。食人木と食を汚く描写するシュヴァンクマイエルの作風が上手く噛み合い強烈な不快感を与えている。コメディ寄りのシー>>続きを読む

イタリア旅行(1953年製作の映画)

4.5

当時のハリウッド最大のスキャンダルカップルであるロッセリーニとバーグマンがそれぞれ監督と主演女優を務めた。イギリス人夫婦がビジネス目的と不仲のもとでイタリアを旅する設定で、ロッセリーニは第三の視点から>>続きを読む

無防備都市(1945年製作の映画)

4.9

イタリアの降伏後、ナチス政権の支配下に置かれた町での人々の暮らしと闘い。本当に戦時中に作られているため、並々ならぬ緊迫感を持つ。救いのない物語であるが、同時にナチスの優生思想を糾弾する。映画史のみなら>>続きを読む

RRR(2022年製作の映画)

4.5

インドの英雄二人を脚色し壮大なエンタメ叙事詩にした。バーフバリで注目を集めたラージャマウリ監督の最新作が社会に旋風を巻き起こした。ストーリーや映像作りは良くも悪くもインド大衆作という感じで、CGもかな>>続きを読む

アルファヴィル(1965年製作の映画)

4.7

ゴダールがSFに挑んだ。古典的なディストピア作品にハードボイルドを組み込ませ、映画という媒体で輝くように無機質な演出を多く採用した。暗い物語であるがお洒落な雰囲気を強く残す名作。

はなればなれに(1964年製作の映画)

4.6

ゴダール監督による強盗映画。その手口に着目するのではなく、人物描写に重点が置かれている。三人のダンスシーンが印象的であり、以降の数多くの映画に登場するダンススタイルの先駆けとなった。無音を生かした前衛>>続きを読む

吸血鬼(1932年製作の映画)

4.8

映画史に欠かせない巨匠に数えられるテオドアドライヤーがドラキュラを扱った作品。この手の怪奇ホラー寄りの映画にしてはかなり説明が少ないので、ある程度見る側に想像力が求められる。明暗を上手に使いこなし、そ>>続きを読む

サン・ソレイユ(1982年製作の映画)

4.7

ラジュテのクリスマルケルが日本とギニアビサウを中心に世界からの映像を手紙の朗読と共に送る。監督の異文化に対する着眼点が巧妙であり、一般的な日本人が気にも留めないような所から情熱や哲学を見出している。ギ>>続きを読む

ラストエンペラー(1987年製作の映画)

4.7

清の最後の皇帝愛新覚羅溥儀の生涯を辿る。満州ないし日本史とも密接に関わる内容であるため、日本人にとって非常に惹きつけられる作品である。暗殺の森などの名作を生み出したベルトルッチ監督が出かける。溥儀の人>>続きを読む

生きる(1952年製作の映画)

5.0

黒澤明が自らの死を前にした役人の男の新たな人生を描く。時代劇で有名な監督は人道を主軸に据えた作品も数多く手掛けており、中でも『生きる』は稀代の傑作である。志村喬演じる主人公渡辺勘治の臆病ながら意思を強>>続きを読む

ガートルード/ゲアトルーズ(1964年製作の映画)

4.2

巨匠テオドアドライヤー監督の遺作。恋愛のために翻弄され自らも他を翻弄する女性ゲアトルーズの物語。演劇の翻案ということで必然的に会話劇となり、長回しが多いもののほとんど動きが見られないことも。モノクロ二>>続きを読む

皆殺しの天使(1962年製作の映画)

4.6

部屋に閉じ込められた富裕層たちのサバイバル。シュルレアリスム映画に分類されるが、物語の内容がとっつきやすく楽しんで見れる部類に入る。上流階級に対する皮肉な描写はブニュエルの後年の作品群にも共通している>>続きを読む

カンフーハッスル(2004年製作の映画)

4.5

少林サッカーのチャウ・シンチー監督のカンフー映画。前作同様ギャグ多めなんでもありの作風である。一方で本格的なワイヤーアクションや金庸の小説からの引用など侮れない映画作品としての完成度の高さを見せる。物>>続きを読む

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.8

一人で息子を育てる女性の三日間の生活を映す。家庭内で行われるルーティーンを絵画のような構図と色彩で描写される。同じ空間を繰り返し目にすることで三日目に起こるズレのイベントを繊細に感じることができる。台>>続きを読む

トゥモロー・ワールド(2006年製作の映画)

4.4

人類に出産の機能が失われ文明が壊滅した世界の物語。並外れた臨場感と強い音圧、登場人物の目線に合わせたカメラワークによって説得力を持った映像を作り上げた。長回しの多様も拍車をかけて、現実と錯覚させるよう>>続きを読む

テルマ&ルイーズ(1991年製作の映画)

4.6

90年代に生まれたアメリカンニューシネマ。二人の女性の逃避行を描く。軽快なテンポと気怠さの混じった空気感が心地良い。特に評価されたのは脚本でアメリカ南部の訛りが強く反映されているようなのだが、英語を聴>>続きを読む

アルマゲドン(1998年製作の映画)

3.2

エアロスミスのテーマ曲で有名な定番映画。公開当時はブームにもなった作品である。あまりにも考証が滅茶苦茶な設定でイジられることも多い。特にツッコまれる肉体労働者の一般人が人類の存亡に関わるプロジェクトに>>続きを読む

HACHI 約束の犬(2009年製作の映画)

4.1

渋谷駅の像で有名なハチ公物語をハリウッドがリメイク。舞台をアメリカに移しつつも基本的な筋書きは同じである。前半はフレンドシップを中心に見せてくれるので有名な結末までの感傷を段階的に増幅させている。大衆>>続きを読む

ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)

4.4

スウェーデンの名匠ハルストレムによる家族もの。脚本を手掛けたのは原作者当人である。扱う主題は非常に鬱屈とした重苦しいものにも関わらず、監督による優しい雰囲気作りと若いディカプリオやジョニーデップを中心>>続きを読む

郵便配達は二度ベルを鳴らす(1942年製作の映画)

4.2

ヴィスコンティ監督のデビュー作。議論はあるが一般的に初期のネオレアリズモとしての評価を得ている。本作を含め四度も映画化されている優れた原作によって物語を大いに楽しめる。郵便配達が登場しないのは原作から>>続きを読む

自由の幻想(1974年製作の映画)

4.7

自由をテーマにしたブニュエル監督のコメディ作品。作中の人々は現実の理から外れた正しく自由な反応を見せる。一騒動終えると小話の主人公から脇役へと焦点が移り、それが新たな主人公となる途切れのない展開が行わ>>続きを読む

ブルジョワジーの秘かな愉しみ(1972年製作の映画)

4.8

食への拘りを見せる上流階級の人々はなかなか食事にありつくことができない。ブニュエル監督の他作に比べモラルのある食欲をベースにしたコメディ作品だが、薬物取引や性行為の隠喩も含まれる。上流階級に対する痛烈>>続きを読む

ビリディアナ(1960年製作の映画)

4.7

修道女の慈善と堕落した人々の交流。本作の内容が不誠実かつ冒涜的だとしてバチカン市国から批判を受け、スペインでは長らく上映禁止の措置が取られていた。その上、本作とカンヌでの受賞はフランコ政権下で存在しな>>続きを読む

ブエノスアイレス(1997年製作の映画)

5.0

香港の巨匠ウォンカーウァイによる同性愛のロマンス映画。俳優、映像、脚本、選曲、美術、どれをとっても非常にレベルの高い作品である。その中でも最も優れているのは映像だろう。色合いの使い方が上質であり、感動>>続きを読む

人生スイッチ(2014年製作の映画)

4.6

アルゼンチンで作られたカタルシスのあるオムニバス作品。印象的なタイトルだが原題と全く違い、英題のWild Talesと同義である。前情報を入れずに見た場合、最初のエピソードがオープニングの前で完結する>>続きを読む

SNS-少女たちの10日間-(2020年製作の映画)

4.5

邦題からは解りづらいがSNS上のペドフィリアの恐怖を写した実験的ドキュメンタリーである。冒頭のオーディションの時点で、演者の性被害が明らかにされることが問題の深さを物語っている。単に会話のやりとりで終>>続きを読む

恋におちたシェイクスピア(1998年製作の映画)

4.1

シェイクスピア当人を主人公に据えて成功までのストーリーと恋愛を描く。本作は歴史的正確性に欠ける描写、先例の脚本との類似点、本作のアカデミー作品賞及び女優賞受賞と賞キャンペーンなど様々な物議を醸した。そ>>続きを読む

アダムス・ファミリー(1991年製作の映画)

4.1

原作はアメリカの人気コミックであり、ドラマ化やアニメ化がされている。巨額の制作費によって超常的なコメディを完成させた。ストーリーはあまりまとまりのない感じであるが、特徴的なシーンが多くとても楽しみやす>>続きを読む

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)

4.7

チタンでパルムドールに輝いたデュクルノー監督の初監督作品。カニバリズムを主題に挙げながらも、それだけに捉われない様々な不道徳行為を描写しており、他のホラー映画や低予算グロテスク映画に比べても非常に過激>>続きを読む

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ(1999年製作の映画)

4.8

ライ・クーダーとキューバのミュージシャンによるユニット「ブエナビスタソシアルクラブ」を特集した作品。監督はロードムービーの巨匠ヴィム・ヴェンダース。彼らしいキューバの風土に着目した映像も楽しむ事ができ>>続きを読む