石口さんの映画レビュー・感想・評価

石口

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インフィニティ・プール(2023年製作の映画)

4.0

不条理展開が延々続いた末の曖昧な帰結が結局何だったんだという感じで釈然としない。バスで逃げる主人公を執拗に追いかける狂人軍団。エログロだけじゃなく精神的にもねちっこくダメージ与えてくるような描写満載で>>続きを読む

我輩はカモである(1933年製作の映画)

5.0

物語のスムーズな流れを阻害するかのようにナンセンスギャグを大量投入していく。この無秩序な作りが堪らない。圧倒的に傑出した鏡の場面を筆頭に冴えまくったアイデアの数々。ハチャメチャなカオス状態が加速し、そ>>続きを読む

青髭八人目の妻(1938年製作の映画)

4.0

男女のイニシアチブ争いで終始負け続けるクーパーが最高。シェークスピアを読んで感化され、妻の部屋と自分の部屋を行き来する間抜けさ。ネギ嫌いを伏線としたギャグ。ルビッチのスマートな語りが相変わらず素晴らし>>続きを読む

快楽学園 禁じられた遊び(1980年製作の映画)

3.0

悪趣味なエロコントの寄せ集めでストーリー性はほぼない。はっきり言って酷い出来なのだが、何か突き抜けたものは感じる。脈絡もなく始まる催眠術シークエンスが妙にしつこく続くと思いきやぬるっと終わる。この呆気>>続きを読む

偉大なるマッギンティ(1940年製作の映画)

4.0

政治ドラマとしての深い掘り下げはないものの、アクション・コメディ・恋愛などの要素を短尺にしっかり盛り込み手際良い。転倒し食器割りまくる主人公、ドッグハウスを引きずって走る犬など細部の描写は実に楽しい。>>続きを読む

忠臣蔵外伝 四谷怪談(1994年製作の映画)

4.0

格調とは無縁の深作時代劇。六平直政や荻野目慶子のやりすぎ演技に笑うし、幽霊が何故か戦いに参加する終盤にはズッコケる。ただ佐藤浩市は魅力全開で、彼を中心に据えたことで飽きさせない出来になってる。やはりダ>>続きを読む

オッペンハイマー(2023年製作の映画)

4.0

リンゴのエピソードが主人公の危うさを抱えたパーソナリティを強く印象づけており、映画のツカミとしてこれを最初に持ってきたのは巧いと思った。

オッペンハイマーがわりと序盤から鼻持ちならない奴として描かれ
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コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

5.0

カウリスマキ映画の人物は笑いもしなきゃ泣きもしない、にも拘らず、見てる側は心を揺さぶられっぱなしだ。ブレッソン的そっけなさにユーモアと温かみを加味したような彼の世界は一貫している。とりわけ本作は好きな>>続きを読む

好男好女(1995年製作の映画)

3.0

わざと分かりにくく作ってるのかと疑うレベルで筋が掴めないし、終始ダウナーなシャオシェン演出にはしんどさを感じる。ただ男女あるいは女同士の喧嘩の描写など面白くはある。台湾の歴史について知識があればもう少>>続きを読む

夜の看護婦(1931年製作の映画)

4.0

1930年代にして戦闘的女性を肯定的に描いていたアメリカ映画はやはり凄いと感心する。アル中女や悪党ゲーブルらクセある連中にも怯まず堂々と対峙するスタンウィックの心意気に惚れ惚れ。前半の手術シーンもなか>>続きを読む

極道戦国志 不動(1996年製作の映画)

4.0

ヤクザの抗争劇をマジに描く気はなく悪趣味なディティールにばかり凝る姿勢嫌いじゃない。小学生ヒットマンや生首サッカーなど一線越えてる表現が強烈。倫理や秩序がぶっ壊れた不条理世界を作り上げ最後まで貫き通し>>続きを読む

FLY!/フライ!(2023年製作の映画)

4.0

パパの心境が裏返るまでのプロセス描写がおざなりで序盤は性急だが、都会に来てからのダイナミックな映像表現、とりわけ落下の心地良さには抗えないものがある。鳥たちの連帯によりピンチを乗り越える王道展開。そし>>続きを読む

落下の解剖学(2023年製作の映画)

4.0

わざと下手に撮ってるかのようなぐらつくカメラワークが謎だが、法廷劇の面白さを堪能。各々が真反対の立場から話の筋を通そうとするのが見ててスリリング。母の旗色が悪くなってく中での息子の気丈な振舞いは立派だ>>続きを読む

女系家族(1963年製作の映画)

4.0

遺産をめぐるチマチマした争いは興味範囲外でありやや退屈に感じたが、若尾文子が登場すると一気に求心力が生まれる。悪意や軽蔑と孤立無援で対峙する姿の美しさは同時期の増村作品とリンクする。それだけに彼女を軸>>続きを読む

風と女と旅鴉(1958年製作の映画)

4.0

錦之助と2人の女の三角関係が楽しいし、賑やかな祭りが一転して不穏な空気に変わっていくシークエンスにも感嘆。美しいローアングル撮影と苦味を残す結末。東映プログラムピクチャーの枠を大きくはみ出した加藤泰の>>続きを読む

夜明けのすべて(2024年製作の映画)

4.0

救済は何か決定的な出来事によってもたらされるわけじゃなく、小さな変化の積み重ねによって訪れる。上白石・松村が各々抱える病に対して作品が真摯に向き合ってると思えたし、2人の間に流れる空気感に真実性を感じ>>続きを読む

哀れなるものたち(2023年製作の映画)

3.0

世界観の作り込みが凄まじく、街や船上の幻想的な光景に目を奪われる。言語力と自発性を獲得していく粗野な女と、翻弄される情けない男たちとの対比。そこは美点だが勿体ぶった語りで冗長に感じる。もっとコメディ寄>>続きを読む

執炎(1964年製作の映画)

4.0

増村・若尾に「清作の妻」があるなら蔵原・浅丘にはこれがあったとでも言うべき渾身作。線路上を歩く描写や雪の描写があまりに神々しい。手持ちのブレるカメラワーク、物凄い俯瞰ショットの挿入など変幻自在な映像テ>>続きを読む

太陽は光り輝く(1953年製作の映画)

4.0

南北戦争後のアメリカの世相を知らぬ者にとって肌感覚では理解しづらい物語だが、そういう見る側のハンデを軽々と乗り越えてくる素晴らしさ。葬列に人々が加わっていく場面には感涙。被差別者を切り捨てない主人公の>>続きを読む

幸福な結婚記念日(1962年製作の映画)

4.0

様々なトラブルが次々と起こる、そのアイデア量と畳みかけるようなテンポの良さが素晴らしく、たったの13分とは思えない密度の濃さ。エテックスの気弱そうな佇まいはキートン的愛嬌を感じさせる。

早春(1956年製作の映画)

4.0

あざとい岸惠子の誘惑に池部良がコロッといっちゃう描写はエロいが、2人の関係はそれ以上掘り下げられず、いつしかサラリーマンの悲哀みたいな主題のほうが前面に押し出されていく。インモラルな方向に振れない上品>>続きを読む

東京物語(1953年製作の映画)

5.0

この映画の良さについて語りたいが言語化するのが難しい。間違いなくオールタイムベストの一つ。感情を露にせず、多くを語りもしない笠智衆が、こんなにも感動的だなんて。

生きる(1952年製作の映画)

5.0

ハッピーバースデーの場面は何回見ても心が震える。未曾有の感動。

改めて見直して、本当に緻密に作り込まれた物語構成だと感じられた。前半で重要な役割を担うのは伊藤雄之助と小田切みきの2人なのだが、どちら
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キートンの大学生/キートンのカレッジ・ライフ(1927年製作の映画)

4.0

超人的身体能力を持つキートンが運動音痴のガリ勉を演じるが、最後は当然の如くできるところを見せつける。予定調和の展開であるのに、その痛快さは比類ない。ギャグも絶好調で走り高跳びのシーンは特に傑作。黒塗り>>続きを読む

簪(かんざし)(1941年製作の映画)

4.0

足を怪我した笠智衆のリハビリを子供たちと田中絹代が応援する、たったそれだけの描写の反復が生み出す情感が半端ない。特に笠が橋を渡るシーンは本作中の白眉。ここを筆頭にロケ撮影が優れているし、序盤の室内を横>>続きを読む

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976年製作の映画)

4.0

宇野重吉の変人キャラで引っ張る前半から寅の恋愛話にスライドしていく展開に引き込まれ、気づいたら太地喜和子の純情な思いの吐露に泣かされてしまっていた。凄い。この物語の構築力は見事すぎる。

とらやの場面
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アステロイド・シティ(2023年製作の映画)

3.0

いつの間にかよく分からない映画を作るようになってしまったウェス・アンダーソン。やたら凝った構成にするのも結構だが、それが面白さに繋がっているとは思えず、ただただ見てて混乱するだけ。もっとシンプルでいい>>続きを読む

東京の宿(1935年製作の映画)

4.0

岡田嘉子が美しく悲しい。坂本武がああいう行動をするのも納得できる彼女の存在感が物語を支える。終盤の突然インサートされる花火や、坂本と飯田蝶子の緊張感溢れる切り返しショット。簡潔な描き方でも心揺さぶるも>>続きを読む

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)

4.0

本とかカセットとか好きなものに囲まれてささやかな喜びを噛みしめ、自分からは出しゃばらないが求められれば応じるという具合にささやかな善行を重ねる。トイレ清掃業の若い同僚にはちょっとナメられており、一方で>>続きを読む

(1955年製作の映画)

4.0

ネオレアリズモ的作風の中にも後のフェリーニスタイルの萌芽が随所に見られる。とりわけ大人数が室内でガヤガヤ騒ぐパーティーのシークエンスが傑出。その後人通りの少ない寂しげな通路のショットになるのもいい。マ>>続きを読む

影武者(1980年製作の映画)

3.0

面白くなりそうな設定ではあるのに、各キャラを立たせることを放棄したかのような覇気に欠ける演出が黒澤らしくもなく、弛緩した空気が全編を支配。中途半端にモノクロ時代の残滓を感じる部分もあるのが、かえって衰>>続きを読む

枯れ葉(2023年製作の映画)

4.0

紙片紛失から始まるすれ違いの切なさもアル中男の自省を経た再出発も、そこを広げて面白くしようという欲張り方を一切しないのだが、この腹八分目な感じも含めてカウリスマキらしさを堪能。カラオケ映画としても「3>>続きを読む

やくざ絶唱(1970年製作の映画)

4.0

暴力兄の束縛から逃れようとする前半はまだ追えた大谷直子の心の動きがどんどん理解不能になっていく。それでも圧倒的な演出のテンションで見せきってしまう。この時期の増村は完全にトチ狂ってた感あるが、これはこ>>続きを読む

天はすべて許し給う/天が許し給うすべて(1955年製作の映画)

4.0

ジェーン・ワイマンがロック・ハドソン宅に再訪した時に、窓が屋外を見渡せるようなとても大きいガラス窓に変わっており、ちょうど外では雪が降っている、という美しい描写がある。ここは本作の中でも強烈な印象を与>>続きを読む

アリスの恋(1974年製作の映画)

4.0

友達みたいな関係性の母子とイカれた周辺人物たち。ハッピーエンド風だが実際はそうとも思えないような帰結。敵対してた相手と仲良くなる展開も、それぞれのマトモじゃなさが際立つような描き方で妙に可笑しい。女性>>続きを読む

フェノミナ(1985年製作の映画)

4.0

ド派手な音楽と突拍子もない殺人描写は相変わらず。本作は何と言っても大量の虫が空からやってくるという発想が強烈で、ヒッチコック「鳥」をグロくしたようなヴィジュアルは相当な驚きを与えてくれた。しつこいぐら>>続きを読む

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