厳しいのに温かい。
橋口監督の作品はいつもそうだ。
私たちは何を大事にすればいいのか、この映画に全部つまってる。
信仰を失った現代人の物語。
相変わらず水の描写が美しい。
異常な緊張感、ラストの底知れない不安が素晴らしい。
タルコフスキーにとってのSFというジャンルは、哲学的なテーマを深めるための一つの装置に過ぎない気がする。
どこか手塚治虫の『火の鳥』を思い出させる虚無感が、作品全体を霧のように覆っている。
選択という無限の可能性を視覚的に示した稀有な映画。
選択できなかった少年の最後の選択に涙する。
過去のことは考えてもどうしようもない、未来のことは自分の行動だけでなくバタラフライエフェクトに左右され>>続きを読む
最初は何ともなく思える日常の描写が、だんだんと音楽を奏でるように私たちの胸に迫ってくる。
こんな体験は初めてだ。
カメラが追うのは、労働、自転車、ダンス、食事。
そして、丹念に登場人物の顔、手、皺を>>続きを読む
滅茶苦茶なハイテンション。
出てくる男が皆女性を怖がる、マチスモを皮肉るブラックコメディ。
地方から上京してきた私にとって、わすれようにも忘れられない映画だ。この映画の家族はいつかの私の家族であり、これからの私の家族であるかもしれない。
過ぎ去っていく生の中で、決して手放してはならないもの>>続きを読む
はっとして美しく、ぞっとして怖い。
メリハリが効いていて、目が離せない。
ラスト近くの長回しは、とても素晴らしい。
ロッセリーニは戦争が破壊してしまったものを刻々と映す。崩壊した街並みは、少年の心情を鏡のようにリアルに映す。
少年はもはやどこにも居られなかった。
ベトナム戦争から40年経っているのに、この映画を前に沈黙せざるをえない現在に愕然とする。
ベトナム人もアメリカ人もアメリカ兵もアメリカ政府も、そもそも何で戦争してるのか誰も分かってないのではないか。
学生運動の先頭に立っていた大島渚だから撮れた映画。
セリフを噛もうと構わず進む、演技的な奇妙な映像に、学生運動が孕む根本的な矛盾、そして決定的な敗北を直視せざるをえない。
政治的な題材を扱いながらも、どちらかに傾くことなく純粋に登場人物に感情を委ねられる。
革命後の体制の中で、誰もが真剣に国のことを思い、大切な人のことを思っているのが伝わってくる。
苺とチョコレートの違>>続きを読む
車という親密な対話の空間。映画は私たちの車の旅を思い出させる。『パリ、テキサス』は車と共に進む、ゆっくりだが確実な、過去と現在の映画だ。
テキサスの茶色い土地、青い空、赤い服と車、緑の明かり。色調が>>続きを読む
自分という存在はどこにあるのか。バードマンは常に自らに問い続ける。そして、私たちも自らに問いかける。この映画の物語は何が虚構で、何が真実なのか、と。
この映画における虚構と現実の入り乱れ具合は、よくあ>>続きを読む
これこそ映画だ。グリフィスの映画は映画の持つ本来の力を改めて提示する。
あのリリアン・ギッシュのクローズアップの表情に勝るものなどあるのだろうか。
驚愕でしかない。まさに怪物的映画。
一度見ただけでは、ただスクリーンの映像に圧倒させられることしか許されなかった。
この映画を観たあとに街を歩くと寒気がする。
泥と血と糞にまみれた映画の中の世界のほう>>続きを読む
ソシュールが言ったように、まず物があってそれに言葉がつくのでなく、言葉によって世界は分節され認識される。言葉を発達させてしまった人間は、果たして満たされているのだろうか。言葉を話さない犬は何をかんがえ>>続きを読む
冒頭のサイレンから始まる、映画全体に蔓延する捉えようのない不安、恐怖。それらはどことなく黒沢清の映画を連想させるが、それとはまた別の空気がこの映画には漂っている。
一つ一つのカットが重厚である。なに>>続きを読む
ただ主役のための映画である。
監督がどれだけ宮沢りえに賭けているか、その気迫が伝わってくる。
不倫の馴れ初めや夫との離別などの序盤の急な展開に違和感を覚えるも、終わってみればそんなことどうでもよくな>>続きを読む
キャラクターがまさに画面で生きている。こんなにチャーミングで、変で、愛すべき登場人物たちを、今まで映画で観たことがない。映画館で初めて号泣した。
終わってみて何の映画だったのかと聞かれると、返答に困>>続きを読む
極度にハイテンションな映像に序盤から圧倒されたが、まさかこのリズムが最後まで続くとは思わなかった。溢れ出るアイデアが止まらない。大林監督、恐るべし。
合成がチープなためそこまで怖くないし、笑ってみら>>続きを読む
現代中国をリアルに描きながら、「罪」という普遍的な問題に迫っていく映画。
冷酷かつ淡々とした暴力は、北野たけしの映画を連想させる。セリフよりも、登場人物の一つ一つの動きとその表情が魅力的だ。罪を背負っ>>続きを読む
現実と虚構が入り混じっていく見事な手腕。
重なっていく人々の生が本当に美しい。
誰もが心の中にそっとしまっている記憶がある。映画はその記憶を一瞬蘇らせ、過ぎ去っていく。『さびしんぼう』は、私たちの記憶を刺激する映画だ。
尾道の風景を大林監督は完全に自分の意のままに映している。尾>>続きを読む
ポスターの、挑発的なコピーとビジュアルに惹かれて観に行ったが、期待値が高過ぎたようだ。
脚本が不安定な印象を受けた。全体的に展開が無意味に分かりにくく、あまり物語に入り込めない。何度も一歩引いた目で>>続きを読む
ハネケの描写は、生理的に何かタブーのような、目を背けたくなるような性質を持っている。
処女作である『セブンス・コンティネント』でも、その才能は遺憾なく発揮されている。
序盤から後半にかけて、ひたすら>>続きを読む
赤と青の対比が素晴らしい。
鮮烈な血のような赤い花、幻のような、悪夢のような淡いブルーのフィルム。
男は女に赤を求めようとしたが、彼女の世界はひたすら青のままだった。
二人の生きる世界は決して混じらな>>続きを読む
序盤から、その映像の重さに愕然とする。確かにフィルムでしか捉えようのない画だ。最初のワンシーンでこの映画が込められた思いが伝わってきた。この映画は本当に集中して観なければと感じた。
ストーリーは改善>>続きを読む
話すことと聞くこと、人と人は対話によって関係を築いていく。
この映画は対話についての映画である。ジョルジュという流れ者の精神分析医が対話を通して、アメリカン・インディアンのジミーの心を解きほぐしていく>>続きを読む
一つ一つの所作がこの上なく美しい。
物語はほとんどない。
ある舞踏団のリハーサルを映すのみだ。
それなのに、次第にその踊りから、歌声から、表情から、豊かな物語が立ち上がってくる。
特にラスト10分>>続きを読む
安藤サクラが末恐ろしい。
特筆すべきは、その眼。
自堕落な生活を送るのっぺりとした眼、コンビニで弁当をこっそりとあげる可愛げさえある眼、新井浩史を見つめる少女のような眼、ボクシングの必死の眼。
眼でこ>>続きを読む
67分という短い作品だし、描かれるのは平坦な恋愛の話。でも、見終わったあと、不思議な満足感を覚えたことに驚いている。ドラマチックな恋愛映画を観たときの満足感とは全然違う、もっとモヤモヤして掴みどころの>>続きを読む
生々しい映画であった。
映像から、達夫たちの生きた痕跡が熱量をもって浮かび上がってくる。
描かれるのは、泥のように汚く、欲にまみれた世界だ。拓児と千夏の家の凄まじい底辺の描写、高橋和也演じる中島の歪>>続きを読む