耶馬英彦さんの映画レビュー・感想・評価 - 40ページ目

耶馬英彦

耶馬英彦

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未来よ こんにちは(2016年製作の映画)

4.0

 ショーペンハウエルの「意志と表象としての世界」は、少しでも哲学を学んだ人なら必ず読むであろう世界的な名著だ。かくいう私も中学から高校の間に何度も読み耽った記憶がある。だからこの本が象徴的に使われてい>>続きを読む

ハードコア(2015年製作の映画)

4.0

 全編が主観カメラの作品である。主人公からは自分の手と足が見えるだけで、登場人物は主人公が見ている人ということになる。この設定を観る前に頭に入れておくと、映画の世界に入っていきやすい。
 最初は自分の
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祈りのちから(2015年製作の映画)

4.5

 さすがに信仰心の篤いクリスチャンが多い国アメリカの映画だけあって、映画の中でJesusという言葉がやたらに出てくる。強盗までJesus nameという言葉で撃退できるくらいである。
 原題の「WAR
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ゴースト・イン・ザ・シェル(2017年製作の映画)

3.5

 最近3D映画を観るたびに、2Dでよかったと思うことが多々あったので、この映画も2Dの吹替版で観たが、もしかしたら3Dのほうがよかったかもしれない。それに字幕版がよかったかもしれない。
 舞台は近未来
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(1985年製作の映画)

4.5

 黒沢映画が世界的に高い評価を得ていることは勿論知っていた。しかし敢えてDVDを借りて観るほどでもないだろうと高を括っていたのが正直なところだ。それが大きな間違いであったことがこの映画を観てよくわかっ>>続きを読む

ムーンライト(2016年製作の映画)

3.5

 言わずと知れたアカデミー賞作品賞受賞作である。落ち着いたストーリー展開といい、月や波の美しい映像といい、心を騒めかせることなく鑑賞できる作品である。同級生に虐められる子供が貧しい田舎道を逃げていく、>>続きを読む

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)

4.0

 久しく観なかった、本格的なミステリーである。これがアメリカ映画だったら万能のスーパーヒーローが派手なドンパチを繰り広げるところだが、フランス映画にはそんなリアリティのない人物は登場しない。
 主人公
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わたしは、ダニエル・ブレイク(2016年製作の映画)

4.5

 高校生の頃、民主主義の実体について議論したことがあった。ひねくれていた私は、民主主義でも専制政治でも何でも、政治は圧力関係と裏取引だと主張した。アドバイザーで参加していた教師は、そういう見方をしてい>>続きを読む

無限の住人(2017年製作の映画)

1.0

 モノクロの出だしはなかなかだったが、そのあとがいけない。可哀想な妹を語る兄の複雑な心情をまったく感じさせない棒読みの台詞。このシーンを観た段階で、この映画はこれまでの木村拓哉の演技から1ミリも抜け出>>続きを読む

LION ライオン 25年目のただいま(2015年製作の映画)

4.0

 ♪あーだから今夜だけは~♪で始まる「心の旅」という歌がある。チューリップというバンドが歌っていた。何故か映画の途中でその歌を思い出した。
 映画のタイトルや作品紹介からだと、ありがちなロードムービー
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パージ:大統領令(2016年製作の映画)

4.0

 トランプ大統領の出現前に製作された映画シリーズだが、不寛容な方向に向かいつつある人類を予言するかのような作品である。
 どの国の政権も様々な政策を実施するが、大方の政策は民衆に注目されることはない。
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ワイルド・スピード ICE BREAK(2017年製作の映画)

4.0

 登場人物のそれぞれに見せ場があり、運転技術、パワー、格闘術を華麗に発揮する。特にステイサムはジャッキー・チェンのアクションを彷彿とさせる、コミカルで見事な身のこなしを見せていた。
 ファミリーのメン
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八重子のハミング(2016年製作の映画)

4.5

 吉田拓郎の「我が良き友よ」という歌がある。先日亡くなったかまやつひろしが歌ってヒットした曲だ。その中に「男らしいはやさしいことだと言ってくれ」という歌詞がある。男らしさとは強くたくましいことだが、強>>続きを読む

映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ(2016年製作の映画)

4.0

 小説の手法のひとつに、表現したいものを直接的な言葉で表現するのではなく、それを取り巻く周囲を描くことによって表現したいものを浮かび上がらせる、というのがある。小説の場合は表現手段が言葉だけに限られて>>続きを読む

メッセージ(2016年製作の映画)

4.0

 相対性理論によれば時間と空間は変数である。定数は唯一、光の速度Cだけだ。理論はほとんど数式によって表されるので、よほど数学に詳しくなければ理解できない。何冊か入門書を読んだが、なんとなくの理解はでき>>続きを読む

STOP(2017年製作の映画)

4.0

 世界的に有名な映画監督が韓国からひとりで日本に乗り込んできて、ひとりで映画のプロデュースからリクルートから撮影から演出から編集までをマルチでこなした作品が上映されるとあっては、観ない訳にはいかない。>>続きを読む

ちょっと今から仕事やめてくる(2017年製作の映画)

4.0

 工藤阿須加は去年の北川景子主演のテレビドラマで初めて見た俳優で、真面目でお人好しな青年を好演していた。この作品でも同じような青年サラリーマンを演じていたが、テレビドラマよりも深刻な職場で、その分だけ>>続きを読む

追憶(2017年製作の映画)

3.0

 映画のテーマは降旗監督らしく、人と人との結びつきだ。どんなことがあっても家族は家族、友達は友達だ。信頼し、許し、助ける。それが人の美しさじゃないかと語りかけられているようだ。不寛容で身勝手な人間には>>続きを読む

バイオハザード ヴェンデッタ(2017年製作の映画)

3.5

 最初にプレイステーションで遊んだゲームがバイオハザード2だった。画像は所謂ポリゴンというやつで、ブレてよくわからなかったり、画面の視点が変わるのがややこしかったりしたが、それでも怖くて面白くて夢中で>>続きを読む

マンチェスター・バイ・ザ・シー(2016年製作の映画)

4.0

 人生には悔やんでも悔やみきれないことがある。人は自分を責め、心を閉ざして未来に背を向ける。もはや人生に喜びはなく、希望の明日もない。自分自身を見捨ててしまったのだ。そしてもう死んでしまいたいと誰もが>>続きを読む

家族はつらいよ2(2017年製作の映画)

3.5

 前作の「家族はつらいよ」と、その前の「東京家族」も、ルーツは小津安次郎監督の「東京物語」にある。
 「東京物語」も「東京家族」も家族のありようをテーマにした意外に重い作品で、考えさせられるところが多
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花戦さ(2017年製作の映画)

4.5

 萬斎ワールド全開の映画である。この人の狂言の舞台を見たことがある人なら、映画の演技も舞台の演技と同じであることがすぐわかる。喜怒哀楽を極端に表現することで笑いや涙を誘う演技だ。
 この作品では、そこ
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(2017年製作の映画)

4.5

 冒頭から結末までひとつの円のように繋がった見事な作品である。

 主演の永瀬正敏は去年の映画「64ロクヨン」や「後妻業の女」では物語の鍵を握る重要な役柄を上手に演じていたが、本作品ではさらに一段上の
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22年目の告白 私が殺人犯です(2017年製作の映画)

4.0

 何を書いてもネタバレになりそうなのでストーリーには触れない。設定は予告編の通り、殺人の時効から5年を経過した段階で真犯人が名乗り出るというものだ。なかなか興味深い設定で、何故そうなったのか、これから>>続きを読む

LOGAN ローガン(2017年製作の映画)

4.0

 XMENシリーズはいずれも、単なるヒーローアクションの映画ではなく、ミュータントとして生きている自分自身のアイデンティティの相克がテーマになっている。
 本作も例外ではなく、悩める主人公が迫り来る敵
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帝一の國(2017年製作の映画)

4.0

 平日の夜スタートの回だったが半分以上の席が埋まっていて、その8割を女性客が占めていた。流石にいまをときめくイケメン俳優たちの競演である。
 予告編ではバンカラの男子校が舞台のギャグ映画にしか思えずあ
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ハクソー・リッジ(2016年製作の映画)

4.0

 メル・ギブソンもついにクリント・イーストウッドやロバート・レッドフォードの仲間入りを果たしたかと思われる作品である。
 テーマは歴史的にも世界的にも一般的であるが、いまだに誰もすっきりした回答を出せ
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おとなの恋の測り方(2016年製作の映画)

4.0

 人間は社会的な生き物だ。他者の存在に常に影響されながら生きている。同じ星や花を眺めて美しいという思いを共有すれば、共生感を感じ、時には互いに愛情さえ抱くこともある。感動や価値観が一致することは、自分>>続きを読む

TAP THE LAST SHOW(2017年製作の映画)

4.0

 有名なジーン・ケリーの「Singing in the rain」を見てもわかるように、タップダンスを踊る人は大抵笑顔である。タップダンスは脚だけでなく体幹の筋肉を激しく使う、ハードな動作である。練習>>続きを読む

ローマ法王になる日まで(2015年製作の映画)

2.5

 キリスト教は自由と平等と寛容を説き、欲望を超越することで魂の平安を得ようという宗教である。教え自体は仏教とあまり変わらない。違う点は布教の姿勢だ。仏教は布教よりも修行を重んじるのに対し、キリスト教は>>続きを読む

ジョン・ウィック:チャプター2(2016年製作の映画)

3.5

 前作同様、兎に角たくさんの人を殺しまくる映画だ。殺すことに慣れすぎて、もはや流れ作業の感さえある。

 そのたくさんの殺戮を見ていて気づいたことがある。ジョン・ウィックが敵よりも先に撃つことができる
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セールスマン(2016年製作の映画)

4.0

 カンヌ映画祭で高い評価を得た作品。アメリカのアカデミー賞も受賞したが、トランプの政策に反対して授賞式はボイコットしている。それがいいことなのかどうかは別にして、権威に媚びない毅然とした態度は立派であ>>続きを読む

ライフ(2017年製作の映画)

4.0

 英語のLIFEには、複数の意味がある。3年前の映画「LIFE!」の意味は「人生」の意味だろうし、少しだけ「生活」の意味もあったかもしれない。
 この映画では当然ながらLIFEは「生命」の意味だ。機械
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ふたりの旅路(2016年製作の映画)

4.0

 出だしはコラージュ風で、いろいろなシーンが行きつ戻りつする。どういう状況なのかがわかりにくいまま、作品は進んでいく。この調子で日常的な整合性が得られないままに終わるのかと思っていると、だんだん光が差>>続きを読む

忍びの国(2017年製作の映画)

3.0

 石原さとみは「シンゴジラ」辺りから演技が一皮剥けた印象で、テレビドラマ「校閲ガール」では現代っ子の若い女性をコミカルに演じていた。
 この映画でも石原さとみの演技に期待していたが、まあ出番の少ないこ
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パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊(2017年製作の映画)

3.0

 このシリーズは見たり見なかったりだ。ディズニー映画だからというバイアスは特にないが、価値観はアメリカ映画に共通する「家族が一番大事」であることに変わりはない。ディズニーは特にその傾向が強い気がする。>>続きを読む