りりさんの映画レビュー・感想・評価

りり

りり

映画(79)
ドラマ(2)
アニメ(0)

瞳をとじて(2023年製作の映画)

4.9

私の持っている言葉ではこの映画について何も言い表すことができない。ただ自分にとって特別な時間、特別な体験だった事実をその日のうちに記しておきたい。

かつてそこにあり今は失われてしまったもの、かつて希
>>続きを読む

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)

4.5

軽んじられてばかりの人生から自分を守るために心を硬くし、そのせいで他人と上手くやっていけなかったり、いつも見下されるせいで何でもないフリをするのが板についているけど実は傷ついていたり。

そんな2人が
>>続きを読む

エル・スール(1982年製作の映画)

4.8

光が美しく名画のような場面がいくつもあった。光と色合いが重なり合い静かに、しかし強く語りかける。私はそれをエリセ監督の作品でのみ感じる。

正体をしかとつかむことはできないが、不穏さや緊張が家庭の中で
>>続きを読む

絶好調(1965年製作の映画)

4.3

この人にひとりでキャンプさせたらダメなのに、でもこの人はきっとひとりでキャンプをしたいのだった。それなのに人間だけで構築された不思議の国のアリスのようなキャンプ場へ行くことに。起きることすべてが目を見>>続きを読む

破局(1961年製作の映画)

4.3

え!?大丈夫なの!?という終わり方(笑) いたって真面目な自分の心にはお構いなしで物事がことごとく失敗するときってある。ここで見せてくれるのはその延長線上にあるものだから、ここまでじゃないけど確かにあ>>続きを読む

幸福な結婚記念日(1962年製作の映画)

4.5

5分をこんなに面白くできることへの驚き。近年よく見かける「情報量が多い」という形容の仕方もできるのかもしれないが、私にはきれいなガラス玉がピタゴラ装置を流れていくように感じられた。巧みに装置をくぐり抜>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.8

一度はチケットを取ったものの不測の事態で行けなくなったり、諸々の都合によりスクリーンでは観ることができないものと諦めていたところ思わぬ機会に恵まれた。

自身が母を早くに亡くしているので冒頭から心を掴
>>続きを読む

真夜中の虹(1988年製作の映画)

4.6

不思議なタイトルだなと思いながら観始めた。テンポ良く悪い方へと話が進んでいく。どうなるのかと心配したのもつかの間、刑務所でペロンパーさんが登場。この映画でも持って生まれた才能としか思えない絶妙な立居振>>続きを読む

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)

4.8

目は語るものだけど、あれほどまでに見つめ吸収し訴えかける目を探し当てられたのは奇跡ではないか。

子どもは大人が思うよりずっと自分を取り巻く空気の中にあるものを感じている。ひとときそれを忘れて笑ったり
>>続きを読む

桜桃の味(1997年製作の映画)

4.2

主人公は何かしらの悩みがあって自殺を計画しておりそれをごく間接的に手伝ってくれる相手を探している。探してぐるぐると車を走らせ、適当そうな相手がどこかにいないかと暗い目で捉えようとする。

見込まれて「
>>続きを読む

レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ(1989年製作の映画)

4.3

最初の方から面白いのに物語が進むにつれてもっと面白くなっていってしまう。仲のいい友達とそっと肘を押しあって2人だけでこっそり笑っているときのような気分になる。押さえようとしても込み上げてくる親密なおか>>続きを読む

愛しのタチアナ(1994年製作の映画)

4.6

可愛らしくてケーキを2つだけ買ったときの小さな箱みたいな映画だった。ヴァルトとレイノの男2人組が不器用で、仕草や立ち振る舞いを見ているうちに小学校高学年の男子を具体的に思い出した。

ふくよかでしっか
>>続きを読む

コントラクト・キラー(1990年製作の映画)

4.5

愛おしくてほんの少し寂しく、優しい映画だった。人の心って実はこんな風だと思う。何かで光の入らない狭い道しか目に入らなくなっても、ちょっとしたことで明るい場所に出る。見える風景が変わる。不意に音楽や花や>>続きを読む

ロベレ将軍(1959年製作の映画)

4.7

先日観た「自転車泥棒」の監督ヴィットリオ・デ・シーカが俳優として出演している。第二次世界大戦末期のイタリアが舞台。ギャンブル好きで金のためなら良心の呵責もなく人を騙す男が主人公。ナチスに身内を捕らえら>>続きを読む

自転車泥棒(1948年製作の映画)

4.0

敗戦後のイタリア。人々は貧しく、家族のために何としてでも仕事を得たいがそれすら難しい。生活に必要なものであっても質屋へ入れてとにかく食べていかねばならない。

荒廃した街に暮らす人の多くは暗い目をして
>>続きを読む

かくも長き不在(1960年製作の映画)

4.3

強い愛を見た。主人公の女性は店を構え街の人々と交流しながらひとりで気丈に生きてきた。でも胸の内では十数年行方不明の夫を忘れることはなかった。

ダンスのシーン、夫かも知れない記憶喪失の男の頭に触れて大
>>続きを読む

冒険者たち(1967年製作の映画)

4.5

夢や野心、終わらないような日常、冒険、宝を勝ち獲りに行く互いへの信頼があり、思いやりのために秘められた愛も。

ジョアンナ・シムカス演じるレティアスの強いようで寄る辺ない子どもを思わせる瞳や、心を許し
>>続きを読む

ふたりのベロニカ(1991年製作の映画)

4.0

双子の人にはこの映画で描かれているようなことが起こるというのはよく聞く話けど、そうではなく自分のコピーのような存在がいて感情や痛みを共有していたのだと知ったら色んな感情に飲み込まれそうになるだろう。>>続きを読む

長屋紳士録(1947年製作の映画)

4.6

手放しでいい映画。1947年公開ということは戦後2年くらいで、その頃にこんなに愉快な映画を撮れるなんて驚いてしまう。主演の飯田蝶子さんが特に良かった。表情や台詞の言い回しが巧みで、脚本の良さをさらに何>>続きを読む

お早よう(1959年製作の映画)

4.5

このレビューはネタバレを含みます

子どもがとにかくかわいい。生意気の限りを尽くすのだけど、大人の目線からはフフッと笑ってしまう程度のもの。当時の子どもってもっと厳しくされておとなしくしていたという漠然としたイメージがあったけどまったく>>続きを読む

東京物語(1953年製作の映画)

4.5

この映画に登場するやさしい人たちは、心の中に悲しみや寂しさがあっても周囲には笑顔で振る舞う。他者の身勝手な言動も背景にある事情をくみ取って責めることもせずに受け入れる。身近にいる大切な人に真心を示す。>>続きを読む

街の上で(2019年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

同監督の別の作品を観て苦手だと思って以来触れてこなかったが、たまたま観る機会が訪れたのでなるべく先入観を持たずに鑑賞。完全に好みだけど、中盤までは感情移入できる登場人物がおらず、自分とは重なるところの>>続きを読む

沈黙ーサイレンスー(2015年製作の映画)

4.5

映画としては文句のつけようがないものだった。俳優陣の演技は真に迫っていたし、どの場面を切り取っても画が美しかった(残酷な描写のときでも)。それでも、というかそれだからというか、ストーリーが進むほどにス>>続きを読む

白いリボン(2009年製作の映画)

-

合わないだろうなーと敬遠してきたハネケ監督の作品に初挑戦。合わなかった。最初から最後まで苦しいのみ、それ以外どう感じたらいいのだろうと困惑するほど。何かを訴えかけたいのでも解釈せよというのでもなく、監>>続きを読む

気狂いピエロ(1965年製作の映画)

3.7

アンナ・カリーナがずっとかわいい。男に何度訂正されても「ピエロ」と呼ぶ女。女に何度そう呼ばれても激しく怒るでもなく同じ調子で言い返す男。滑稽なことをしていても、海辺ではしゃいでいても、遠景には哀しみが>>続きを読む

チェンジリング(2008年製作の映画)

3.7

お子さんと再会できたのはこの世ではなかったかもしれないけど、彼女が並大抵ではない強い意志・勇気・聡明さを失わずにいたから多くの誤ちが正され、大勢の人を救うことになった。どんなつらいことが降りかかっても>>続きを読む

運び屋(2018年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

今のイーストウッドだからこそ説得力を持たせられるメッセージ。他の何よりも、家族を、時間を大切に。

ザリガニの鳴くところ(2022年製作の映画)

4.0

湿地に棲む生き物や自然そのままの風景が美しかった。大半の者は未知な存在をただそれだけで遠ざけ嘲ったり、物珍しさで近寄り搾取しようとする。一方で少数であっても色めがねを持たない人々が手を差し伸べ、互いに>>続きを読む

小さなジャンボ(1977年製作の映画)

4.0

幸せなときと不穏なときでは色使いが巧みに描き分けられていて、歌と音楽・キャラクターの表情と相まってより感情に訴えてくる。「よかったね」と言えるストーリーだけど経由する不安や悲しみによって、平和がどんな>>続きを読む

おみおくりの作法(2013年製作の映画)

4.0

周囲の価値観に染まらずに自分にとって大切なことをあくまでも守る主人公が好き。義務はなく誰に感謝されるわけでもない。ひとりひとりの人生をかけがえないものだと思うからそうする、そんな主人公の人生もまた満ち>>続きを読む

ぜんぶ、ボクのせい(2022年製作の映画)

4.0

この中にあるきれいなものもひどいことも全部現実にある。そこらじゅうにある。わかる人には最後の台詞の意味もわかる。悪くない側がそう思わせられる世の常。

こちらあみ子(2022年製作の映画)

4.8

あみ子の周りにいる大人たちは努力をしたのだろうし傷つきもしただろうが、子供というまだ無力な存在に対してできることはもっとあっただろうと思う。坊主頭のあみ子の同級生は家庭で大事にされていることが容易に想>>続きを読む

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

-

田畑智子さんの佇まいが良かった。韓国手話で話す女性はそれほど多く出るわけではないけれど、仕草や台詞が光を放っていて作品全体を照らしているようだった。

血と骨(2004年製作の映画)

4.0

北野武とオダギリジョーの乱闘シーンが凄まじい。

ウーマン・トーキング 私たちの選択(2022年製作の映画)

4.8

とても良かった。学び、知り、考えることで光が差す未来の方向を探せる。

ヴァスト・オブ・ナイト(2019年製作の映画)

4.0

不思議な出来事に巻き込まれるときってこんな感じなのかも?と思ってしまう勢いがあった。

>|