かこゆさんの映画レビュー・感想・評価

かこゆ

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ゴースト・トロピック(2019年製作の映画)

4.2

本来会うはずのなかった人たちや立ち会うはずのなかった出来事、見ることのなかった夜中に遊ぶ娘の姿、、自分がいるはずのなかった世界からの視点という意味でゴースト的視点、ゴースト味を感じた。
いつもいる場所
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Here(2023年製作の映画)

4.5

物語を推進させるための「偶然」は、描き方によって真逆の「予定調和」と捉えられてしまうおそれをはらんでいます。
Hereにおいての重要な偶然、二人が森の中で邂逅するシーンを偶然たらしめているのは、それま
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ミレニアム・マンボ(2001年製作の映画)

4.0

クラブやヴィッキーが暮らす部屋など室内に人が密集している薄暗いシーンが多くヴィッキーの境遇も閉塞感に満ちているので、観ているこちらも実際息苦しくなって何度も深呼吸をした。
一転夕張の雪のなか戯れるシー
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落下の解剖学(2023年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

『私はいつも曖昧に描く。フィクションが現実を破壊できるように』

サンドラの小説内での一文ですが、映画そのものがサンドラの言葉を体現するような曖昧な物語となっていて、実際なにか事件の真相について答えが
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ボーはおそれている(2023年製作の映画)

3.0

過度の強迫性障害からくる妄想なのかとずっと思ってたけどそうでもなさそうだった
自分の中で興味を推進させる要素を見出せなかった
アリアスターさんの予習が必要だったのかも不徳の致すところです

王国(あるいはその家について)(2018年製作の映画)

4.2

調書、台本、手紙、
紙のモチーフが印象的だと思いました。
映画そのものも、世界が紙の束のような複数の層によってできているのだとしたら、それを一枚一枚剥がしてひとつのレイヤーごとに見せられているようなそ
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オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

4.0

旅中の浮遊感を味わえた。
犬が終始楽しそう(よかったねという気持ちになる)
マークの家、カートの家、温泉、
それぞれの地点での鳥も印象的
何も起こらないのにずっとおもしろいのは
何かが起こっているから
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哀れなるものたち(2023年製作の映画)

4.5

ひとりの人間の成長譚を造形を変えずに
説明できる(かなり狂った)映画内論理に
衝撃を受けた
中世の絵画から抜け出してきたような
色彩の異世界観も圧巻だった

真空状態で育った人間の挙動(あくまで作者の
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映画の朝ごはん(2023年製作の映画)

4.0

映画ができる裏側にたくさんの人の営みがあるということをポパイの弁当という食を真ん中に置いて語ることで親しみやすく共感しやすい作品となっていました。
制作部は映画作りの中でも最も人の生活に寄り添うセクシ
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ソウルに帰る(2022年製作の映画)

4.5

冒頭のフレディとテナの表情だけの会話の切り返しのシーン、フレディのなんとなく湛えているニヒルな笑みと短いやり取り(質問に素直に返さないところ)だけでどこか屈折したフレディの人物像が垣間みえるところ、み>>続きを読む

エンター・ザ・ボイド(2009年製作の映画)

2.8

晩ごはんを食べながら配信で観る映画を
探しててなぜかここにいきついた
ごはんを食べながら観る映画ではない
ということはまちがいなく言える

658km、陽子の旅(2023年製作の映画)

4.6

このレビューはネタバレを含みます

658km、陽子の旅は、突然今まで隔絶していた「社会」の中に放り出されてしまった声の小さい者(発声においても、社会においても)が今まで関わることを避けてきた他者に助けられ傷つけられながらヒッチハイクで>>続きを読む

怪物(2023年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

脚本の坂元さんは何気ない台詞や言動に作者の意図を含ませるような印象が強いので、ひとつひとつの細かな要素に気を張って見ていたら、後半でもっと大局的なところからうっちゃられたような、武術の達人技を目の当た>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.7

このレビューはネタバレを含みます

これは娘ソフィとその父カラムとの束の間のバカンスの物語です。
ソフィの記憶が物語の主軸となっているのでカラムになにがあったのかどういう心境でいたのか本当のところはわからないですが、ふとした表情や言動に
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

4.5

劇伴がないことで映っているもの、聞こえる音、に、より意識的になることができました。
イヤホンで音楽を流しながら町を歩いているとイヤホンしないときとの視野の狭さをいつも感じるのですが、映画の劇伴も同じよ
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宮松と山下(2022年製作の映画)

4.0

映画内映画の1シーンを演じる宮松と現実で生活する宮松が区別なく同列に描かれていて、現実宮松と思って見ていたら映画宮松だった(急に撃たれて映画だったとわかる、とか)というように淡々と観るものを欺いてみせ>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.3

コゴナダ監督が敬愛する小津安二郎の代名詞的なふたりのやりとりのバストショットの切り返しが画面比率も含めてアフターヤンのSF世界の中で違和感がないどころか効果的に再生されているのに驚きました。こういった>>続きを読む

彼女のいない部屋(2021年製作の映画)

4.5

人は映画を観る時無条件にその物語世界を受け入れていますが、これは物語が綴られる理由づけが物語になっている映画だと思いました。
なぜこの物語が生まれなければならなかったのか、雪がとけて地面が表出するよう
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三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実(2020年製作の映画)

4.0

三島由紀夫は、
思想は全く違うようでいて、
それぞれの思想を骨組みだけにしてみると
共通の部分があるのだよ
とずっと言っているような気がした
だからわかりあえる、と。

熱と敬意とユーモアでそれを訴え
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.9

原作「ドライブマイカー」、というより
「女のいない男たち」に通底する
人との分かりあえなさ、を
濱口竜介的映画話法でもって
豊かに映像化されていると感じました。

ラストの家福とみさきの上十二滝町への
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親密さ(2012年製作の映画)

4.9

途方もないとおもった。
膨大な言葉によってこの映画はできていて、
言葉ひとつひとつに監督の論理が潜んでいるようで255分にも収まらない濃度を感じた。
映画史に残るといわれるラストシーンに
御多分に洩れ
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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

4.3

ティルダ・スウィントン演じる
ジェシカにだけ聴こえる爆発音。
その音の謎を巡る静かな冒険映画。
ゆったりとした波長のシーンが続くが
時々あらわれる
宇宙人、古代の遺骨、忽然と消える音響士
などミステリ
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なみのおと(2011年製作の映画)

4.0

東日本大地震被災者の聞き取り取材の記録
姉妹や夫婦など親しい間柄との
対話から発せられる言葉は
その人の身体から紡がれた言葉と感じ
胸に響く

サタンタンゴ(1994年製作の映画)

3.8

風雨にゴミが舞い上がりながら
男二人が歩むシーンが
とんでもなくかっこよかった。
こういうのを見てしまうと映画は
物語よりなにが映っているか
が重要だと感じる。

ナイト・オン・ザ・プラネット(1991年製作の映画)

3.5

車の中の会話はお互いが
同じ方向を向いて話すのだなあと
当たりまえの景色にやけに意識的になった。
会話をしているお互いの真正面の表情が
ひとつの画面の中にある
というのも車ならではで、
その車自体はど
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