クロさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

クロ

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ミリオンダラー・ベイビー(2004年製作の映画)

4.0

一番心に残ったのは自分が信じているものに脇目も振らず突き進むマギーの清々しさだった。彼女は体躯は引き締まってごっつい31才だけど、薄暗い控室でフランキーと二人ボクシングについて語り合い、自分が頑張って>>続きを読む

めぐり逢う朝(1991年製作の映画)

5.0

愛する妻に先立たれたヴィオール音楽家サント・コロンブは隠遁の末、粗末な離れの小屋に籠り惜別の情を奏でる日々を送る。幼ない娘たち、姉マドレーヌ、妹トワネットが美しい女性へ成長したある日、いつもの様にヴィ>>続きを読む

ケス(1969年製作の映画)

4.6

主人公ビリー少年の周囲の人々は、肉親も友達も教師も新聞配達屋のおじさんも貧しさが落とす陰の下で苛立っている。少年もまた、身なりは薄汚れ、冷えきった共同体の中で日常的に盗みを働いている。

そんな救いの
>>続きを読む

きっと、うまくいく(2009年製作の映画)

4.5

何度も泣かされ、笑わされた。予備知識も無くぼんやり見始めたが、エンターテイメントとして洗練されており直ぐに惹きこまれ時間が経つのを忘れた。フレンチコメディのタッチにも通じる小気味よさがあり、観客の情感>>続きを読む

ストレンジャー・ザン・パラダイス(1984年製作の映画)

4.2

できそこなった守護天使風情のエヴァ姐ゃんのやさぐれ具合が最高。やくざな兄ぃの手向けのドレスも放たってせせら笑う、その鼻息のすかしっぷりに痺れる。ダメ出ししながらも別れ際にはちゃっかり着てみせる愛嬌もあ>>続きを読む

放浪の画家 ピロスマニ(1969年製作の映画)

5.0

なんて甲斐性が無くて一途で意固地で孤独で優しい人だろう。彼の凋落ぶりにひたひたと共感してしまう。悲しいかな私に絵心は無く、酒の相手にもなれはしない、けれど放っておけない友達の顛末を目の当たりにする気分>>続きを読む

奇跡の丘(1964年製作の映画)

3.8

マタイの福音書に基づいたイエスの姿を虚飾を排して描く。その語り口は聖書に近い。 イエスは聴衆に向かって「私が地上に平和を投じるために来たなどと思うな、平和ではなく、剣を投じるために来たのだ」と言う。 >>続きを読む

ダーティハリー(1971年製作の映画)

4.2

市民を守るため、犠牲者の無念に報いるため、理由は何であれ人を殺めることは碌でもない、そうわかっている。しかし無法者を野放しにはできない。強者であるはずのハリーは自分の責務から、時に身内から次第に追い詰>>続きを読む

パンドラの箱(1929年製作の映画)

4.3

ルルは彼女の父親たろうとする男たちを、おそらく彼女が子供の頃からずっと抱えている地獄に堕としてゆく。いたって無邪気に。 ラスト、ルルは彼女が熱望する特別な男と出会う。蝋燭に火を灯す。男は暖かくルルの手>>続きを読む

空気人形(2009年製作の映画)

3.8

本作ができる前、出勤前にあのベンチから彼岸の高層マンションを眺めてたそがれるのがきまりだった。当時その界隈を歩くと、バブルの夢の跡、世の中の時間から置いてきぼりをくっているような空気を感じた。彼岸はま>>続きを読む

リュミエールと仲間たち(1995年製作の映画)

3.5

ロベール・ブレッソンつながりでシネマトグラフについて知りたくて鑑賞。40人の監督による52秒の作品たち。好きな監督が生で語る姿を見ることができるのも嬉しい。初めて知った監督も結構居た。アラン・コルノー>>続きを読む

西鶴一代女(1952年製作の映画)

4.5

愛した男と死別し、住まいを追われ、我が子を引き剥がされ、父から疎まれ母から憐れまれ、男たちから慰みものにされ、仏の門から放擲され、女が穢土の底に落ちる。木枯らし吹き荒ぶ最果てで女に寄り添い癒やすのは女>>続きを読む

(1960年製作の映画)

3.8

たとえ罪人にまで身を持ち崩したとしても、人間としての矜持を失ってはならない。ラストで鉄の楔のようなメッセージが私達の心に打ち込まれる。熱い映画だった。題材はブレッソンと同じでも。

海の沈黙(1947年製作の映画)

3.8

姪のひとこと「さようなら」で広がる浄化のしじまが凄い。ドイツ高官が抱いた儚い理想のための葬いの祈りのようだ。

恐怖分子(1986年製作の映画)

4.2

それぞれが透明な膜に覆われていて、心を通わすことができないまま窒息してゆく。私も彼らの虚ろな孤独に侵食されるような気分を味わった。台湾の町並みは日本のそれと似ていながら少しずつ何かが違っている。あのガ>>続きを読む

召使(1963年製作の映画)

4.1

傑作だが後味は大変悪い。宿主を洗脳し死に至らしめる寄生虫のようなぬらぬらした召使いの存在感に鳥肌。ダーク・ボガートは嫌悪感をもよおす程の名演。サラ・マイルズも破滅型の小悪魔のような危うい愛らしさを放っ>>続きを読む

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(2009年製作の映画)

3.2

ぽかぽかとは何だったのか。翼をくださいとは何だったのか。

アキラ AKIRA(1988年製作の映画)

3.2

良作ではあるが、圧倒的な書き込みによって底なしのエネルギーが溢れる原作と比すると小じんまりしてしまった感は否めない。一方、芸能山城組の音楽は、ネオ東京の混沌、健康優良不良少年たちの疾走、アキラによる浄>>続きを読む

天使(1982年製作の映画)

4.6

執拗に反復しながら次第にずれを生じ胸の奥に澱を積もらせる音楽と、リズムに同期して底意地悪く振動するオブジェクトたちが紡ぐ悪い夢。サイレント特有の早回しも効果的で、吊るした少女の人形をサーベルで突きまく>>続きを読む

ピカソ-天才の秘密/ミステリアス・ピカソ(1956年製作の映画)

3.8

ピカソの創作過程を連続撮影と時間を圧縮したコマ撮りで追う。 ラスト20分で彼は重ね塗りの過程の撮影を提案するのだが、そこからは想像力の暴走をみせつけられる思いだった。 一旦決めた骨格は変わらないが、個>>続きを読む

果てなき路(2010年製作の映画)

4.2

腕からすり抜けてしまいもう手の届かないかつての恋人。彼女にまつわる映画作りを通して、彼女を映画そのものへ焼き付けたい、そんな狂おしい思いが伝わってくる映画だった。

大人は判ってくれない(1959年製作の映画)

4.5

アントワーヌの視線は劇中、満たされぬ愛を探すように宙を漂っていた。 ラスト、鑑別所を抜けだして誰も居ない浜辺へと辿り着いた時、 彼の熱情は行き止まりの海と空に吸い込まれるように消えて行った。 そこから>>続きを読む

黄金の馬車(1953年製作の映画)

4.8

監督は老若男女、貴賎もまぜこぜにひとびとが乱舞するシーンを撮るのが楽しくて仕方ないのだろう。 役者一座の子役が画面の中をクルクル転げまわる場面には何度も胸が暖かくなった。 気分屋の女将さんキャラのカミ>>続きを読む

春にして君を想う/ミッシング・エンジェル(1991年製作の映画)

4.2

老齢の男女二人が異星のような北の地の果てを経巡る帰郷の旅。 黒々と剥き出しの山々、その裾にささやかに咲く花々、湖、滝、せせらぎ、断崖、海辺の寒村、、 ずっと薄曇りで寒々とした風景なのに、時折差す一瞬の>>続きを読む

パプーシャの黒い瞳(2013年製作の映画)

3.8

監督は細心の注意を払い、ポーランドの冷たくも美しい風土と、ジプシーたちが追い詰められて定住する薄曇りの街と、彼らの過酷で貧しくも活き活きとした生活を静かな眼差しで映し出している。ただ、私にはジプシーが>>続きを読む

叫びとささやき(1972年製作の映画)

4.3

人間の孤独・絆と冷酷・寛容を解剖し、その切断面をおしなべて示すような作品。アングネスの死の床の悶えと叫びの痛ましさ、死の床から蘇る彼女の死臭が漂うようなおぞましさ。それに手を当て癒すのは肉親でも神でも>>続きを読む

イノセント(1975年製作の映画)

4.5

刹那主義が嵩じて救いようのない疑り深さで悪事に手を染め自滅してゆくダメ男トゥリオ。貞淑を身上としていたはずが一時のアヴァンチュールに身をやつし終いには自分の命と引き換えにトゥリオを呪って骨まで砕いたず>>続きを読む

バベットの晩餐会(1987年製作の映画)

3.8

才能を認められながら華やいだパリを追われうらさびれた漁村で過ごしたバベットの14年間はどんなだったろう。 ひとつだけ願いが叶うなら持てる技芸で人を幸せにする、そこに全ての力を注いだ彼女の思いが静かに伝>>続きを読む

セラフィーヌの庭(2008年製作の映画)

4.0

セラフィーヌの作品を見ていると、無数の原始的な魂のようなものが蠢きもつれあい霊気が溢れてくるようだ。彼女は守護天使から力を授かって自然の中にあるただならぬものにいつも触れていたのだろうか。監督は風景や>>続きを読む

悪魔のような女(1955年製作の映画)

4.0

恐怖の報酬と同様、娯楽作品としてとても楽しめた。ぬめったプールの水が纏わりつくようないやらしさが漂ってくる。出てくる大人たちはみんな碌でもない。パワハラ・セクハラ・モラハラ夫と隷従する妻のやりとりや教>>続きを読む

紙の花(1959年製作の映画)

4.7

いい映画だった。骨格はメロドラマだが、恋に落ちる二人がどこまでもお互いを思いやり優しさを失わない。そしてつつましさを貫くがゆえに二人は添い遂げられない。監督は実生活のワヒーダー・ラフマーンとの悲恋をひ>>続きを読む

怒りの日(1943年製作の映画)

4.5

ドライヤーはキリスト教を題材とした作品が多いが、本作、裁かるるジャンヌ、奇跡など見るとかなり懐疑派であり、死や悪や滅びの手触りに強く惹かれていたようだ。彼のカメラは私達の住むうつし世からいちど地獄のう>>続きを読む

白夜(1971年製作の映画)

5.0

罪の天使たちから始まる監督の長編作を見終えた。後期の一連の作品では、モデル(俳優)たちの身振りから演劇臭さが排されており、能を見ているような新鮮な感銘にとらえられた。本作ではジャックにせよマルトにせよ>>続きを読む

銀河鉄道の夜(1985年製作の映画)

4.5

漆黒の闇に青白くちらちらと頼りなげに明滅する電燈まがいのもの、そのまたたきを自分にたとえた宮沢賢治、彼の四次元幻想の淵へ誘ってくれる作品。常田富士夫さんの春と修羅の語りと細野晴臣さんのテーマソングと天>>続きを読む

リトル・フォレスト 夏・秋(2014年製作の映画)

3.5

撮影技術の向上により、食材を育む風土や料理の美しさ、料理の過程の豊かさが鑑賞者の衝動にリンクする作品が生まれてきたんだな、このような映画もありかな、と考えさせられた。育て、拵えることに比べ、食べること>>続きを読む

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