departmanさんの映画レビュー・感想・評価

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ハズバンズ(1970年製作の映画)

3.5

親友を失った男たちの狂気

家庭を顧みず
暴力に躊躇なく
酒と女に酔いしれる

醜いシーンの連続に
終始不快ではあるものの
たしかにここには人生が映っている
関わりたくない人生が映っている

「出会う
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福田村事件(2023年製作の映画)

4.7

絶望する

この事件を知らなかった自分に
この事件の史実そのものに
いつでもこの事件の
加害者になりかねない自分たちに

「朝鮮人やったら殺してもええんか」

「あなたはまた何もしないつもり?」

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エドワード・ヤンの恋愛時代 4K レストア版(1994年製作の映画)

4.3

感情をありのままに表すのも
役を全うし何かのふりをし続けるのも
どちらも自分の中の自分には違いない

惹かれ合い、罵り合い、
離れては戻りを繰り返す二日半
複雑に絡み合っていたそれぞれの糸が
少しずつ
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

3.8

映画に取り憑かれた幼少期から
いよいよ映画人として歩み出すまで
続きはこれまでの作品にある

「すべての出来事には意味がある」

大好きな母の許せない瞬間も
大嫌いな同級生が輝いてる瞬間も
映画はその
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アルマゲドン・タイム ある日々の肖像(2022年製作の映画)

3.6

みんなとは違うんだという個性と
みんなと変わらないという頭脳を
ぼくたちはいつだってうまく伝えられない
聞く相手もまた
様々な矛盾のもとに暮らしているのだから

「人生は不公平だ」

けれど、

「高
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サイン・シャネル カール・ラガーフェルドのアトリエ(2006年製作の映画)

4.3

イメージしていた
クールでスノッブな様子は微塵もない

妥協を惜しまないカールと
文句を垂れながらも
その注文に懸命に応える職人による
泥臭くも美しいものづくりの話

「シャネルは、いつもこうさ」
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バービー(2023年製作の映画)

4.0

女性らしさと男性らしさ
定番と量産に
廃盤になる個性

それぞれの苦悩と解放を
コミカルかつシニカルに
エンタメに内包

「胸が痛むけどステキね」

これは単なる
ハッピーピンクワールドでも
女性と男
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シン・仮面ライダー(2023年製作の映画)

3.5

Sustainable
Happiness
Organization with
Computational
Knowledge
Embedded
Remodeling
にまあまあ胸熱

「私
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リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)

3.8

どうしようもないほど無駄な2分も
恋が動き出す甘酸っぱい2分も
そのどちらも大切で愛おしい

「初期位置」

2分をひたすらに積み重ねる
しつこいほどの繰り返しは
もはや人生

ザ・メニュー(2022年製作の映画)

3.6

食の周りに蔓延る
不健康な人々
自分も例外ではない
また今日も
食の写真を、批評を、評判を眺め、
消費し、忘れていくのだから

「食べたいのはチーズバーガー」

恭しい本日のメニュー表も
バーガーの前
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君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

3.5

息子へ
そして私たちへ

おれはこう生きた
君たちはどう生きる?

「自分の塔を築くんだ」

コクリコ坂から(2011年製作の映画)

3.5

旗は今日もはためいてる
私が今日もここにいる証として

「エスケープか」

永遠に美しく…(1992年製作の映画)

3.0

永遠に美しいとは

「車どこに停めたか覚えてる?」

これからも走り続けるのは
それはもう憐れ

サンセット大通り(1950年製作の映画)

3.9

失ったものを
失ったと気付いた時
スターは死ぬ

一度でも光を浴びたなら
その輝きを忘れることはないのだろう

「準備は着々と進んだ。
 回らぬカメラのために」

願っていた再演はついに果たせた
狂気
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死刑にいたる病(2022年製作の映画)

3.0

信頼
習慣
操縦
洗脳

一度植え付けられたトラウマの
跡は消えず、病は感染る

「小さい頃はね」

爪は散り、川へ消えた
きれいな爪への執着した理由は
きっと想像の通りか

夏物語(1996年製作の映画)

3.9

決断力があると言う
決断力のない男
3人の女性と南仏の波に揺られながら
孤独に、作曲に、ヴァカンスに勤しむ

成長譚というほどの出来事はなくても
振り返りたい夏はある

「偶然が習慣になる」
「あとで
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TAR/ター(2022年製作の映画)

4.3

絶対的な権力による支配は
キャンセルカルチャーにより喪失する
悪い男性性を自覚したとき
彼女は全てを吐き出せただろう

この作品は
音楽ではない「なにか」に
酔いしれる話だ

「まだ愛してるのね」
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aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

3.8

波と呼吸とビデオテープ
全編に漂う父の死の匂いに
ささやかなバカンスの生活音が
心地よく絡む
最後のダンスを振り返るのは
そう簡単なことではない

「将来、何してると思ってた?」

無邪気なインタビュ
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怪物(2023年製作の映画)

4.6

視点の転換による印象の変化
これは安易な怪物探しの物語ではない
誰もが内に秘める怪物性を炙り出す
無責任な人間の何気ない日常の話だ

信頼と裏切り
葛藤と決意

揺れる感情が帰結するのに
大人も答えは
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スープとイデオロギー(2021年製作の映画)

4.4

青森にんにくをこれでもかと詰め込む
5時間かけて炊き上がったスープには
その家族にしか味わえない
語られなかった歴史と
語り継いでほしい物語が
染みわたっている

「学校の運動場に引っ張っていって、機
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別れる決心(2022年製作の映画)

4.0

恋してはいけない相手だからといって
その恋を中断することはできない

意味ありげな視線
仄めかす会話
阿吽の呼吸

未解決事件になれたなら
あなたが忘れることはない

「品はどこからくるか?誇りです」
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パンチドランク・ラブ(2002年製作の映画)

3.7

彼は恋で力がみなぎっている

不器用な音色も
情けない告白も
少し飛んでいるふたりには
ちょうどよい

「マイル交換まで待ってくれるかな?」

ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

4.8

確実に丁寧に送っていたはずの日常は
少しのズレの積み重ねによって
終わりを迎える

泡を残した洗い物
見つからないボタン
落としてしまったカトラリー

誰もが抱える退屈で孤独な毎日は
何よりも美しく
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ダークナイト ライジング(2012年製作の映画)

3.7

死ぬ時は案外あっさりと
締め方は完全にアラバスタ

「この街に罪のない人なんている?」

「ヒーローはどこにでもいる」

バットマン ビギンズ(2005年製作の映画)

3.7

ダークナイト前後の見漏れ回収
バットマンに至るまでを丁寧に描くが
バットマンと名乗る瞬間は突然にやってくる
スカッとしたい夜に
仕事がうまくいかなった夜に

「人はなぜ落ちる?」
「這い上がるためだ」

アメリカン・サイコ(2000年製作の映画)

3.5

無個性の副社長たち

名刺の質を競っても
誰が誰だかわからない
代替可能な社会への痛烈な皮肉は
むしろ今の時代にこそ響く

「告白は意味を持たなかった」

現実か虚構か
どちらにせよ
ビデオは返しにい
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AIR/エア(2023年製作の映画)

4.0

ジョーダン以前と以後
バスケットの存在も
スポーツビジネスの在り方も
大きく変わったのだろう

ソニーの情熱的な行動と
母親の冷静な才覚は
これからの仕事の指針にせねば

「靴はただの靴だ。誰かが履く
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コロンバス(2017年製作の映画)

3.7

対照的な二人の前に
対称的なコロンバス
聞きたい言葉は建築の蘊蓄ではない
あなたの言葉で感動を伝えてほしい

「建築には癒しの力がある」

タバコと暗闇
ガラスと光
建築を彩る背景に
じっくりと魅入る
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Winny(2023年製作の映画)

4.0

出る杭は打ち
責任を誰かになすりつける
余りにも簡単な「処理」がもたらしたのは
もう二度と取り戻せない才能と時間の損失だ

「そこに山があるから」

結局今もトカゲは本体を現さない
正々堂々、ネコファ
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.3

膨大な情報の波に潜むコメディとオマージュに目を光らせていたらいつのまにやら家族愛を再確認してめでたしめでたし

もう一度見ないと言葉は出てこないが
もう一度見たいという気持ちでもない

「深呼吸を忘れ
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フィールド・オブ・ドリームス(1989年製作の映画)

3.5

あまりにも簡単に野球場が仕上がることも
あまりにも簡単に義兄が心変わりするのも
気にしてはいけない

「見当はずれでも情熱は情熱だ」

キャッチボールを終えた人生ならば
トウモロコシ畑の向こうへもきっ
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神は見返りを求める(2022年製作の映画)

3.1

残るから偉いとかではない
消費か鑑賞かの違い
どちらが好みだろうか

「バカどもには制裁を」

承認という消費の戦い
消耗の果てに手にした見返り

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)

4.3

金と美と権力
性と糞と差別
地獄のようなこんな世界が、実際は日常
つま先まで染みついた属性は
どうしたって変わらない

「船酔いの時は食べた方がいい」

数分前の「ざまあみろ」は
数分後には「Yes,
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ちひろさん(2023年製作の映画)

3.5

目の前にいても
共に暮らしていても
SNSで繋がっていても
大切なものは少しずつ溢れ落ちていく
誰の目も私を向いてはいないから

「あなたならどこにいたって孤独を手放さずにいられるわ」

今目の前にあ
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RRR(2022年製作の映画)

4.0

是暴力・偽服従

量産される死に目を背けたくなる気持ちを
圧倒的興奮が凌駕
最後に彼の求めたものこそ
人類の尊厳か

「責務は行為にある。その結果にあらずとも」

鑑賞後、すぐに動けなかったのは
この
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マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)

3.1

大丈夫かと尋ねるとき
しっかりと相手を見ようと思った

「だいじょぶに見える?わたし」
「だいじょぶにみえますよ」

もう居ない人に会いたいとき
しっかりと生きていこうと思った

「もう居ない人と会う
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