departmanさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.6

恫喝か交渉か

なぜウルトラマンは
人類を愛したのだろう

現代ならではの手に汗握る描写と
現代だからこそ眉をひそめる描写に
賛否の声が心から溢れ出る

「人類はまだ幼い」

再び開いた目には何がみえ
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春のソナタ(1989年製作の映画)

4.3

鍵は2つ持っているけれど
今、帰るべき家はない

偶然訪れた部屋には
春の花を思わせる新しい友人
窓からはあたたかな陽が注ぐ

恋と哲学
嫉妬と陰謀
現実と空想

ぎりぎりのバランスは
何かが変わった
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先生、私の隣に座っていただけませんか?(2021年製作の映画)

3.0

漫画と現実の交差点
彼女が車で向かう先は
最終回まで分からない

「うそぉん」

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)

4.2

堰き止めていた感情が
やさしく、丁寧な質問で
崩壊する

多くは語られないが
全てを察するには容易い
彼女の支えになるならば
重い荷物だけでも
引き受けたい

「ダンゴムシみたい」

二人の旅に
よう
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流浪の月(2022年製作の映画)

3.9

月が何度満ち欠けようが
あの時見つけた二人の居場所は
今も変わらずここにある

二人の叫びが聞こえないならば
二人の目を見て話せないならば
二人の流れ行く先に
干渉することは許されない

「人は見たい
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ほえる犬は噛まない(2000年製作の映画)

4.0

どれだけ消毒液を撒いたって
貧富の差が生む世界は変わらない
そんな現実を写すミラーには
親友のドロップキックが
ちょうどいい

「屋上の切干大根を食べておくれ」

届かないトイレットロールもあれば
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天国はまだ遠い(2015年製作の映画)

4.0

見えているものを隠し
見えていないものを映す

憑依が嘘だったとしても
マイクが拾った抱擁の音は
確実に響いた

「雨音は聞こえる。雨粒も見える」

傘に入ったら?
濡れなくたって
雨に降られているの
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不気味なものの肌に触れる(2013年製作の映画)

3.7

触れ合うことのない触れ合い
そこには
性が静かに滴っている

「触れるのが怖いものは何?」

魚と水の関係
ポリプテルスが
頭から離れない

ある夜、彼女は明け方を想う(2022年製作の映画)

2.0

答え合わせは不要だ
始まりも終わりも
ぼくには少しもしっくりこない

アネット(2021年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

くすぐりすぎたのだろう

時間をかけて
愛は死に近づいていく
笑っていたはずのふたりの世界には
いつしか黒い雨が降り
その様子から
アネットは目を離さない

「We love each other s
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明け方の若者たち(2021年製作の映画)

2.0

明け方の空のように
一見美しい
薄い青春

「いつかは終わる」

フジロックは行った方がよいでしょう

ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い(2015年製作の映画)

4.0

自由、尊厳、未来のために
国民は立ち向かい続ける
何度侵攻されようが
白旗はあげない
革命の鐘は
今も鳴り続けている

「パパ、大きくなったら私がやっつける」

まだ殺し合いで
問題を解決しようとして
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

4.5

耳が聞こえないからこそ
娘の葛藤が伝わる
口がきけないからこそ
娘への愛が伝わる

家族のために
夢のために
彼女は
後悔のない航海に出る

「分かり合えない気がして」

彼女の歌声は聞こえなくても
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子供はわかってあげない(2020年製作の映画)

3.7

モルタルコンクリセメントは
恋も固めることになる

お互いに書かずにはいられない恋物語
眩しすぎて、面白すぎて、
どうか目を隠してほしい

「教わったことは教えられる」

大人は判ってくれていた
娘を
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いとみち(2020年製作の映画)

3.7

強すぎる津軽弁と三味線に
とにかく没入

模倣から始まる言葉と楽器は
下手なオリジナルより
ずっと個性的だ

「おけぇえりなすぁえませ、ごすずんさまあ」

見上げてばかりだった大都会青森も
父と見下ろ
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ちょっと思い出しただけ(2022年製作の映画)

3.6

歩んできた道を少しずつ巻き戻す
何気なく迎える誕生日には
それぞれがちょっとだけ思い出してしまう
一日があった

一年に一度だけ
たまには
迎えにいったっていいだろう

「あなた、映画スターにならない
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香川1区(2021年製作の映画)

4.5

「本人」の旗を揺らし
ゆっくり、けれども一歩ずつ着実に
自転車は進む
香川1区でうねり始めた小さな波は
確実にぼくの心を動かした
旅はまだ途中だ
これからは、見守る以上の行動が
ぼくらには求められよう
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ヒート(1995年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

二度目の銃撃戦を終え
同じ孤独を抱えるふたりは
最後の出会いを果たした

彼らは
唯一の理解者だった

「自由の国だろ?」

渋味溢れる大人の追いかけっこには
絶対に巻き込まれてはいけない

セールス
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乱れる(1964年製作の映画)

4.1

世間には常識があり
青年には想いがある
もっと大きく目を開けて
いっそ乱れてしまえばいい

「スーっと出てきて、パーっと消える」  

列車でなくなった二人の距離は
銀山の湯気に消えていく

乱れた髪
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好きにならずにいられない(2015年製作の映画)

3.9

周囲の雑音に耳を塞ぎ
ミルクと戦地に日々浸かる

なにがおかしい?

少女も、猫も、
タイ料理店も、ラジオDJも、
彼の非凡な魅力に気付いている

「どうして大人なのに奥さんいないの?」
「わからない
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つみきのいえ(2008年製作の映画)

4.0

水に沈んでも
浮かんでもいない

つみ重ねてきた人生に
乾杯を

第9地区(2009年製作の映画)

3.6

人間とエイリアンの暮らし

エイリアンは少し醜い
しかし本当に醜いのは
異物を平然と排除する
私欲を何よりも優先する
人間なのだろう

か弱いエイリアンの存在が
エイリアンになっていく過程が
そう強く
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ウエスト・サイド・ストーリー(2021年製作の映画)

3.8

まもなく地図から消える街

争う二つのグループは
それぞれのグルーブで
踊り歌い、泣き笑う

オリジナルから60年
観客を掴んで離さない恋物語はそのままに
観客は直視できない恋物語に苦渋をなめる
こん
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ブロークバック・マウンテン(2005年製作の映画)

4.0

そこに山があったから

大自然を前に
ふたりは自然に求め合う

「何を待ってるの?交尾の合図?」

言葉を使わずに
雄弁に語るふたり

「新婚生活は電話で事足りる」

山と妻は見ていた
シャツが重なり
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フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

3.5

生い茂る情報の森に
氾濫するセリフの洪水
ウェスのアートフェスティバル

豊かな色彩と
豊かなレアセドゥは
どうしたって奇跡かな

「筋肉が恥ずかしい」

細かい情報は気にしなくていい
お目当てのキャ
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サマーフィルムにのって(2020年製作の映画)

4.0

羨ましすぎる青い夏

7人のユニークな侍たちが描く
手づくりの時代劇は
勝新に並び、清く尊い

「わたし、とんでもない奴なんです」

「ライバルなら、決着つけなきゃ」

何度もやり直したラストシーン
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プロミシング・ヤング・ウーマン(2020年製作の映画)

3.9

たとえそれが故意ではなかったとしても
たとえそれが恋であったとしても
起こしてしまった過ちは
消えてなくなることはない

全男性をひとまとめにするつもりはないが
全男性が思いめぐらせるべきだろう

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ハウス・オブ・グッチ(2021年製作の映画)

3.9

悲劇か喜劇か

緊張と緩和が入り混じるお家騒動
3代目が流した血も
ブランドの未来には不要だった

「GUCCIとは、そう俺が定義するかだ」

俺とは誰だったのか

「物語には始まりと終わりがある」
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大統領の陰謀(1976年製作の映画)

3.5

徹底的な取材と裏取り
鳴り止まないタイプライターが
腐敗を炙り出す

「二人を見捨てるな」

イカロス(2017年製作の映画)

4.2

軽快に出発した好奇心の旅
行き着く先は
ロシア国家の深海だった

国家主体のドーピング
裏切り者の排除
政治圧力による抑制

スパイ映画にしては驚きはないが
現実にしてはあまりにも恐ろしい

「君はM
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パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

陰鬱な調べの下
兄は変わり、弟は自立し
妻は壊れ、子は目覚める

口笛で支配する男たちの館には
持ち込むことのできない秘密が
物語を大きく運んだ

「いいもんだな。一人じゃないって」

タバコを燻らせ
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PASSION(2008年製作の映画)

4.5

裏切りの逢瀬
軽薄な約束

本音から溢れ出る暴力には
身を任せた方が楽だろう

「あなたには真がない」

偽りの真は透けてみえるが
それは誰だって同じで
上手く付き合っていかないと
生きていけそうにな
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裁かるゝジャンヌ(1928年製作の映画)

4.5

ノーメイクがつくる美しい表情

恐怖が、悲壮が、絶望が、諦観が、
これ以上ないほどの接近と
流れ止むことのない涙から
痛切に染みわたる

アンナ・カリーナも泣くわけだ

「死ぬのがこわいです」

彼女
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ノッティングヒルの恋人(1999年製作の映画)

4.2

ちょっと世界が暗い時
この映画を見ればいい

ノッティングヒルから
誰もが願う愛の
誰もが笑う愛の
旅に出れる

「シュールだけど楽しかった」

最も微笑んだのは
ミスター、タキヤマ

青葉家のテーブル(2021年製作の映画)

3.7

なりたい自分はどこにいるのか
そんなこと大人にだって分かりっこない

誰かがいるテーブルを囲い
誰もいないプールに足を浸す
ひとまず、いまはこれで十分だ

「下書き保存だけが溜まっていく」

ちょっと
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メイキング・オブ・モータウン(2019年製作の映画)

4.0

モータウンの歴史に
名曲に揺られながらどっぷりと浸かれる
こちらは年明け早々ご機嫌に

「転べば痛いし、楽しけりゃ笑う」
「音楽も無色だ。感動や鼓動があるだけ」

誰一人取り残さない
なんて
彼らには
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