pherimさんの映画レビュー・感想・評価 - 5ページ目

モリコーネ 映画が恋した音楽家(2021年製作の映画)

4.1

凄まじい出演陣。エンニオ・モリコーネをトルナトーレが撮ることでのみ為しえた、戦後映画史を体現する70名超の顔ぶれに圧倒される。

映画音楽の道を迷い恥じたという驚き。ハンス・ジマーらが解析する旋律の革
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ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)

4.5

単純に楽しかった。この「単純に」を引き出すべく張り巡らされた手管へ意識を向かわせないことが、ある種の人にとってはたぶん肝要。次のシーンで何が起こるかわからない、そのワクテカだけでエンドロールまで行ける>>続きを読む

ヘイトフル・エイト(2015年製作の映画)

4.3

タランティーノによる楽しすぎるウェスタン密室劇。

オタク的に娯楽映画を極めるとこうなるっていう理想形で、いつもの面子のいつも通りを速度超過で突き破る。🐎

嗜虐諧謔詭弁緊縛抱腹激おこ全部盛り。🏔️
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無理しない ケガしない 明日も仕事! 新根室プロレス物語(2024年製作の映画)

2.8

2006年、おもちゃ屋を営む代表サムソン宮本のもと旗揚げされたプロレス団体・新根室プロレスの来し方。💪

人気者アンドレザ・ジャイアントパンダの登場&地元愛に和む。難病による宮本の引退と死、そして再生
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バグダッド・カフェ(1987年製作の映画)

4.8

見惚れる。

4半世紀ぶりに観た。とてもいい時間。筋立てや派手さやどんでん返しより大事なものを表現する力が、映画にはあるということ。

初めて観たのは渋谷南口時代のユーロスペースで、十代だった。ふいに
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バグダッド・カフェ 完全版(1987年製作の映画)

4.9

見惚れる。

4半世紀ぶりに観た。とてもいい時間。筋立てや派手さやどんでん返しより大事なものを表現する力が、映画にはあるということ。

初めて観たのは渋谷南口時代のユーロスペースで、十代だった。ふいに
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バグダッド・カフェ<ニュー・ディレクターズ・カット版>(1987年製作の映画)

5.0

見惚れる。

4半世紀ぶりに観た。とてもいい時間。筋立てや派手さやどんでん返しより大事なものを表現する力が、映画にはあるということ。

初めて観たのは渋谷南口時代のユーロスペースで、十代だった。ふいに
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コンクリート・ユートピア(2021年製作の映画)

4.0

天変地異にてソウル壊滅、1棟だけ残ったマンション住民が生存を賭け協力して外部を排斥、英雄を創りだす。

君臨し狂気の王となりゆくイ・ビョンホン、白頭山大噴火/非常宣言など災害物で醸してきた孤高の系譜の
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ゴッズ・クリーチャー(2022年製作の映画)

3.8

アイルランドの漁村で、義父の介護をしながら牡蠣工場で働く主人公の元へ、家出息子が帰還する。

エミリー・ワトソンが僻村の閉塞感や母の欲望入り混じる複雑な役柄を熱演。小さな嘘が雪ダルマ式に膨れる村八分ス
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アース・ママ(2023年製作の映画)

3.7

養護施設にいる実子と暮らすため更生教育中の主人公が、お腹の子を里子に出すか悩む。👶🏼

基調はMoonlight以降のA24味ながら、母として目醒めゆく点や映像の距離感、サンフランシスコの町景などカサ
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マイ・ハート・パピー(2023年製作の映画)

3.3

求婚相手が犬アレルギーとわかり、愛犬の里親探しを始める青年とその従兄。🐕

ユ・ヨンソクxチャ・テヒョンのコンビがハマるハートフル・コメディを、『ディヴァイン・フューリー/使者』他の監督が撮る意外性。
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天命の城(2017年製作の映画)

4.2

厳寒、孤立、飢餓。1636年、清の大軍に囲まれた南漢山城内で、李氏朝鮮の帰趨を賭け重臣二人が対立する。竜虎の激突かの如き論戦の気魄にひたすら痺れる。厳しく抑制を利かせた坂本龍一音楽が、籠城を巡る密使、>>続きを読む

ザ・ヒューマンズ(2021年製作の映画)

4.3

A24製作。

感謝祭の夜、和やかな一家団欒の端々に不穏さがむくりと顔を覗かせゆく。NYの古住宅建築が影の主役で、舞台劇を観たような充実感。

スティーヴン・ユァンxビーニー・フェルドスタインの夫婦演
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スライス(2018年製作の映画)

3.2

田舎町でピザ配達員が殺されて始まるホラー・コメディ。👻

BGM&キャストでストレンジャー・シングス味も出しつつ、基本はトロマ・エンタメ&ブラックスプロイテーションへのオマージュという、A24配給でB
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エターナル・ドーター(2022年製作の映画)

3.7

霧深く隔絶したホテルで過ごす母娘の黄昏。

ティルダ・スウィントン1人2役で、神経質な娘と超然とした母の演じ分けはお見事。音への敏感さに『Memoria メモリア』も想起させる。A24xBBCxスコセ
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ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代(2023年製作の映画)

3.0

樺太で虜囚となりカザフスタンへ移送された少年の道行き。

「サムライ!」と少年を呼ぶ好々爺演じるキルギスの名優アクタン・アリム・クバト(馬を放つ/父は憶えている)、奔放に演技を楽しんでいる様が大変好ま
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NOCEBO/ノセボ(2022年製作の映画)

3.4

脚光を浴びるファッションデザイナーが、巨大ダニに寄生された病犬に襲われる幻から始まるスリラー。

妖しげな民間療法により主人公を癒やすフィリピン人家政婦の下地に、現代資本主義の搾取構造を敷く仕立ての妙
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ブルーバック あの海を見ていた(2022年製作の映画)

4.0

海洋生物学者アビーが、老母を世話するため海辺の町へ帰郷する。

この海を守るために下す少女の決断。幼馴染らと過ごす穏やかな時間が、巨大魚“Blueback”との悲しい記憶を蘇らせる。🐟

エリック・バ
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ラ・メゾン 小説家と娼婦(2022年製作の映画)

3.6

“La maison”

作家としての好奇心と野心から娼婦の世界へ入り、地獄を知りボロボロになりながら見いだすリアル。プライドもつ同僚たちの描写が良い。👠

娼婦やAV女優から作家へなるパターンとは逆
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きっと、それは愛じゃない(2022年製作の映画)

3.8

『きっと、それは愛じゃない』

見合い結婚を決めた幼馴染を撮るドキュメンタリー監督が、戸惑い迷い恋わずらう。

語り口は軽快ながら、南アジアのお見合い文化を多面的に見せる構成の巧さは、さすが『エリザベ
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ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(2018年製作の映画)

3.2

“違い”とは特別であること。
誰もがフリーク。 美は至るところにある。

ゴルチエ企画演出“Fashion Freak Show”の舞台制作を背景に、本人が来し方を語る。

ドヌーヴ/マドンナ/マリオ
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アンブッシュ(2021年製作の映画)

3.4

イエメン紛争下、峡谷でゲリラの待ち伏せに遭い孤立した同胞を救い出すべく奮闘するアラブ首長国連邦軍の兵士達。

『96時間』のP.モレル監督作で、ブラックホークダウンのUAE版焼き直しプロパガンダながら
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ファニー・ページ(2022年製作の映画)

3.9

漫画家志望の少年が家を飛び出て、謎の中年男性たちとシェア生活を始めるも七転八倒のビルドゥングス・コメディ。

16mm撮影のザラ目感が、バイト先のカートゥーンショップなど米国サブカル文化への哀愁を引き
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Somebody Comes into the Light(2023年製作の映画)

3.1

ヴィム・ヴェンダースが“PERFECT DAYS”クランクアップ当日、踊る田中泯を撮った短編。音楽: 三宅純

弦のようにしなる躯体へ木漏れ日が注ぐ白黒映像は瑞々しく、PERFECT DAYS本編(役
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オアシス(2012年製作の映画)

4.1

“綠洲” 2012

工業ビルの一画をシェアする若者たちのスクワット感あるまったり日常。

『少年たちの時代革命』の林森監督作で、雨傘運動前の作品ながら鋭くもしなやかな視座は一貫する。

ヌードモデル
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ソク・ソク(2019年製作の映画)

4.0

高齢男性同士の穏やかな恋模様。

引退間近のタクシー運転手役タイポーと、退職済みシングルファーザー役ベン・ユエン/袁富華(翠絲↓)がいぶし銀の名演で魅せ、香港現代における同性愛模様も活写して飽きさせな
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最悪な子どもたち(2022年製作の映画)

3.5

“Les pires”

養護施設の子供を主人公とする映画の撮影現場に渦巻く混沌を通じ、社会の権力構造を炙りだす。🎥

子の泣き顔を喜んで撮り、頑固な子と喧嘩さえ始める中年男性を監督本人と思い込めるほ
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阿彦哲郎物語 戦争の囚われ人(2022年製作の映画)

2.7

シベリアの民間人抑留者を描く日本+カザフスタン合作。

舞台のステップ草原や大戦時再現セットが見応えあり。カザフ側俳優陣の出色演技に対し、非専業役者を揃える日本側の座組はひたすら惜しい。残留邦人に樺太
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フォルス・ポジティブ(2021年製作の映画)

3.5

不妊治療に成功しすぎて三つ子を孕み、母子安全のため男2か女1の堕胎を迫られる女性。

夫と名医への疑念高まりゆくマタニティホラーで、キャリア上でも妊娠をポリコレ的に活かす展開が面白い。 皆少しずつ狂っ
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神の道化師、フランチェスコ デジタル・リマスター版(1950年製作の映画)

4.1

ロベルト・ロッセリーニ監督&フェデリコ・フェリーニ脚本で描かれる、踏みつけられても明るく歩みつづけるアッシジの聖人フランチェスコとその弟子達。

中盤の異様な煉獄行のあと訪れる一瞬の煌めきに『ローマで
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神の道化師、フランチェスコ(1950年製作の映画)

4.0

ロベルト・ロッセリーニ監督&フェデリコ・フェリーニ脚本で描かれる、踏みつけられても明るく歩みつづけるアッシジの聖人フランチェスコとその弟子達。

中盤の異様な煉獄行のあと訪れる一瞬の煌めきに『ローマで
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ファースト・カウ(2019年製作の映画)

4.0

西部開拓時代のオレゴンで、一攫千金を夢みる料理人と中国系移民が意気投合、当地では稀少な牛から乳を盗み絞って菓子商いに挑戦する。

ケリー・ライカートが西部劇を撮るとこうなるんだ、って嬉しくなるやつ。至
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トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

5.0

ズルいくらい、一生モノの体験でした。

現代撮影術と役者胆力の粋を集め、己が困難へ立ち向かう🇺🇸娯楽映画の王道をスペクタクルの極みへ昇華。

グースの残像、嗄れ声アイスマン、F14操縦席。一人で海軍や
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ヴァル・キルマー/映画に⼈⽣を捧げた男(2021年製作の映画)

3.5

“Val”

咽頭癌を抱えて復帰した“Top Gun: Maverick”も記憶に新しい、信念で駆け抜けた銀幕男の一代記。

20代時のケヴィン・ベーコンやショーン・ペンとの楽屋映像など見処大漁。
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ゲッベルスと私(2016年製作の映画)

4.4

ナチス宣伝相ゲッベルスの秘書だった103歳の女性による告白。それは稀有の内幕語りであり、かつアーレント“凡庸な悪”の一典型にも映る。老化した皺の陰翳を過剰なほど仔細に捉えた映像が、「何も知らなかった」>>続きを読む

メンゲレと私(2023年製作の映画)

4.2

6つの強制収容所を経験したダニエル・ハノッホは、当時幼かったためその証言が長く軽視されてきた。

少年がみた人間の真実。人体実験を行うナチス医師ヨーゼフ・メンゲレに気に入られて生き延び、昨年90歳を迎
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