島晃一さんの映画レビュー・感想・評価

島晃一

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マンハッタン(1979年製作の映画)

5.0

ウディ・アレン演じる主人公アイザックは他の作品と同様、過去の芸術作品への憧憬、神経質さ、生きる意味についての悩みを持ち、複数の女性の間で揺れ動くアレン映画に典型的な自身を投影した人物。彼を中心に一見ス>>続きを読む

アニー・ホール(1977年製作の映画)

5.0

今日まで続くウディ・アレン作品特有のキャラクターや手法を確立した、記念碑的な映画。

死への強迫観念があるというセリフを述べるように、人生の意味や死といった実存的な問いに取り憑かれ、神経質かつ不安定で
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レベッカ(1940年製作の映画)

5.0

ヒッチコックによる、主体性についてあまりにも緻密に構築されたサスペンス。

ジョーン・フォンテイン演じるわたしは名前のない女性。彼女のモノローグからこの映画が始まるが、その時「幽霊のよう」と述べるのが
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オール・ダート・ロード・テイスト・オブ・ソルト(2023年製作の映画)

4.5

ミシシッピの黒人女性の生涯を描いたレイヴン・ジャクソン監督の長編デビュー作。

手の所作を丹念に映し、それと土地や水、共同体の生と記憶とがつながっているように感じられ斬新だった。冒頭の手を映した場面だ
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インテリア(1978年製作の映画)

5.0

ウディ・アレンが初めてシリアスなドラマに挑んだ作品。撮影は『ゴッドファーザー』やアレンの『アニー・ホール』、『マンハッタン』を手がけたゴードン・ウィリスだが、ベルイマンにインスパイアされたと言われる本>>続きを読む

マッチポイント(2005年製作の映画)

5.0

ウディ・アレンがニューヨークを離れ、初めてロンドンで撮影を行ったサスペンス映画で、ロンドン三部作の一作目。この路線変更は批評的にも興行的にも成功を収めた。劇中で流れるのは軽快なジャズではなく重厚なオペ>>続きを読む

サン・セバスチャンへ、ようこそ(2020年製作の映画)

2.5

ウォーレス・ショーン演じる主人公のモートは、かつて大学で映画を教え、今では小説を書こうとするもののドストエフスキー並みの傑作でないと意味がないと考え、うまくいかない。また彼は、多くのアレン映画と同様、>>続きを読む

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM(2024年製作の映画)

2.5

編集のリズムが中盤あたりからどんどん加速していって、あらゆるテンポが速くなる。最後には高速戦闘もオマージュもギャグも一気に詰め込まれ20年溜め込んだものが最後に爆発するようなお祭り感があった。

それ
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夫たち、妻たち(1992年製作の映画)

5.0

葛藤する夫婦2組を描いた物語。手持ちカメラでの撮影や(精神分析医の?)インタビューを交えた映像といったドキュメントタッチな作風、2組が集った冒頭の5分を含む長回しの多用は、この映画のリアリティを演出し>>続きを読む

スターダスト・メモリー(1980年製作の映画)

3.5

アレンが映画監督の役を演じた自伝的要素の強い作品。同時期のアレン映画に比べて失敗作とされることも多いが、フェリーニ『8 1/2』のオマージュが随所に伺える点は、同作含む過去の名作のよりストレートなパロ>>続きを読む

ワイルド・スピード/ファイヤーブースト(2023年製作の映画)

4.0

冒頭の回想シーンでは、リオデジャネイロが舞台の『MEGA MAX』で、金庫を引きずりながら運転する、当時度肝を抜かれつつも大笑いしたカーアクションが再び映り懐かしい気持ちになった。ある意味ターニングポ>>続きを読む

ジョン・ウィック:コンセクエンス(2023年製作の映画)

4.5

近年ますます映画とゲームは相互に影響し合っているように感じるが、FPS流行以降の臨場感とアクション性に負けずとも劣らない表現をなしえているのが『ジョン・ウィック』シリーズだ。ガン・フーと呼ばれるアクシ>>続きを読む

タイラー・レイク 命の奪還2(2022年製作の映画)

4.0

MCUのルッソ兄弟製作、サム・ハーグレイブ監督、クリス・ヘムズワース主演『タイラー・レイク -命の奪還-2』、前作同様ワンカット風アクションの迫力は素晴らしい。ジョン・ウィックなど含めこうした描写はし>>続きを読む

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)

5.0

ロバート・リチャードソンの撮影による豊かな風景、悪人でない者に撃たれたことによるデンゼル・ワシントンの身体性の崩れ、杖をついて階段を登る巡礼と再生のイメージなど、シリーズ最高傑作と言っていい作品だった>>続きを読む

劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)(2023年製作の映画)

2.0

パンフレットによれば、本作は「『最終章』の序章」として位置付けられており、アンジーをはじめとしたオリジナルキャラクターとオリジナルストーリーを展開しつつ、原作と接続している。

しかし、序章ということ
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キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(2020年製作の映画)

4.0

モーガン・フリーマン製作総指揮。実際に起きた事件に基づき、人種差別と貧困の問題、精神疾患への無理解がいまだに根深いことを突きつける。

実際の事件被害者の時間感覚を観客にも共有させるためだと思うが、警
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バービー(2023年製作の映画)

3.5

バービーたちの世界でノスタルジックなディスコポップが流れ、リアルワールドに行った瞬間にレゲトンが流れるのは、エンタメにおけるラテン系の人々の昨今の活躍を見た時に、現実を反映してると思ったし、とてもよか>>続きを読む

特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト(2023年製作の映画)

3.5

『特別編 響け!ユーフォニアム~アンサンブルコンテスト~』、来年のアニメ第3期のつなぎ的な役割もあり一見地味ではあるが、冒頭のユーフォの見せ方や緻密なマリンバの演奏シーン、表情としぐさ、セリフの独特な>>続きを読む

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)

4.0

少年の成長物語であると共に、自己を登場人物に強く投影させながら、困難な世界において創作とは?、世界と創作の関係とは?とストレートに問いた怪作。解説記事をこちらで書きました。
https://niewm
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インスペクション ここで生きる(2022年製作の映画)

3.5

A24製作、新鋭エレガンス・ブラットン監督の長編劇映画デビュー作。劇中、『ジャーヘッド』を見るシーンがあるが、同作や『フルメタル・ジャケット』やといった新兵訓練ものに連なる映画だとまずは言える。しかし>>続きを読む

マイ・エレメント(2023年製作の映画)

4.5

炎と水を活かした想像力豊かな表現がよかった。その巧みな表現と共に、自分と違う価値観の人たちとの交流によって主体性が変わっていくことをとてもポジティブかつわかりやすく描いていた。
また、移民家族の伝統と
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星くずの片隅で(2022年製作の映画)

4.0

香港の新鋭ラム・サム監督の単独長編デビュー作。監督は最も影響を受けた作品の一つに、是枝裕和監督の『誰も知らない』(2004)を挙げており、同作はもちろん、貧困や経済格差をテーマとしている点では、『万引>>続きを読む

ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE(2023年製作の映画)

5.0

トム・クルーズはもちろん、"ウォーロック"役だったチャールズ・パーネル、"コヨーテ"役だった"グレッグ・ターザン・デイヴィスといった配役、監督・脚本のクリストファー・マッカリー、編集のエディ・ハミルト>>続きを読む

ザ・フラッシュ(2023年製作の映画)

4.0

『IT/イット』2部作のアンディ・ムスキエティ監督が、はじめてスーパーヒーロー映画を手がけた『ザ・フラッシ』。DCコミックスの映像作品を再編する、DCユニバース構想の序章として位置づけられる。

まず
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インディ・ジョーンズと運命のダイヤル(2023年製作の映画)

3.0

スピルバーグだったらこんなに冗長にはならないはずと何度も思ったし、アクションシーンでハッとさせるようなショットが撮れてないと思った。ジョン・ウィリアムズの音楽と動きのマッチングもよくない。

また、な
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スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース(2023年製作の映画)

4.5

試写で鑑賞。マルチバースを使ってこんなにも豊かな表現ができますよ、と言わんばかりの膨大な情報量に圧倒されっぱなしだった。前作や『ワインは期待と現実の味』を担当したKier Lehmanが今回もミュージ>>続きを読む

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3(2023年製作の映画)

4.0

遺伝子操作された生物が登場するけど、いきなり穏やかな人型の穏やかな生物が生成されるシーンをみて、AIを真っ先に思い浮かべた。作品から離れるが、今生まれているAIグラドルやAI芸人のアカウントはこの先ど>>続きを読む

トップガン マーヴェリック(2022年製作の映画)

5.0

グランドシネマサンシャイン池袋は、上映開始から1年間、1日も休まずこの映画を上映し続け、現在も記録更新中だそうだ。私もこの映画館でIMAXを2回、4DXを1回鑑賞させてもらった。実際、この作品の良さは>>続きを読む

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)

4.0

素晴らしいショットの数々、そして音/楽。ベランダの父の背中をゆっくりカメラが追う。奇妙な動きをしており踊りのようでもある。部屋で寝る娘の寝息はだんだん音楽に、ビートのように聞こえてくる。この長回しにま>>続きを読む

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)

3.0

試写で鑑賞。過去作の監督ライアン・クーグラーや音楽のルドウィグ・ゴランソン、スタローンも後ろに引き、監督・主演のマイケル・B・ジョーダンが新しさをもたらそうとした意欲作。インタビューで答えていたように>>続きを読む

AIR/エア(2023年製作の映画)

4.5

「エアジョーダン」誕生を描いた物語。とにかく会話が面白いし脚本も秀逸で、キング牧師の逸話が活きるマット・デイモンのプレゼンシーンにはグッときた。『アルゴ』同様、無駄がなくテンポのいい編集も素晴らしい。>>続きを読む

ルパン三世 カリオストロの城(1979年製作の映画)

5.0

何度見てもいい。国内外のさまざまな作品に影響を与え最近でもオマージュされたカーチェイス、そして城へ飛びつく跳躍の躍動感は、アニメのアクションを評する際の参照点になっていると思う。また、こっちまで骨付き>>続きを読む

空に聞く(2018年製作の映画)

4.5

冒頭、ラジオで阿部さんの手と所作をカメラが捉えた場面でもう心を動かされた。陸前高田を撮ったドキュメンタリーという前情報がなかったとしても、このシーンを見た瞬間、「ああ、これから自分はいい映画を観るのだ>>続きを読む

銀河英雄伝説 わが征くは星の大海 4Kリマスター(1988年製作の映画)

4.5

銀英伝といったらラヴェル「ボレロ」を思い浮かべる人も多いと思う。実際、艦隊がゆったりと動き出すとともに流れ始める「ボレロ」は、約15分もの間流れ続ける。映画の4分の1はこのクラシックの音で埋め尽くされ>>続きを読む

ビール・ストリートの恋人たち(2018年製作の映画)

4.5

すごいと思ったのは、ファニーが刑務所帰りのブライアンと話すシーン。他愛ない話から徐々に深刻になるにしたがって、マイルス・デイヴィス「Blue In Green」の上に、スコアを手がけたブリテルの現代音>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

5.0

トップガンと並んで昨年の私的ベスト。ロングショットかつ長回しで被写体をゆっくりと映す。カメラのフレームの外、映像の外でボンっと音が鳴る。その音を追い求める物語がSF的なスケールへ、国や地域の集合的な記>>続きを読む

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