島晃一

マッチポイントの島晃一のレビュー・感想・評価

マッチポイント(2005年製作の映画)
5.0
ウディ・アレンがニューヨークを離れ、初めてロンドンで撮影を行ったサスペンス映画で、ロンドン三部作の一作目。この路線変更は批評的にも興行的にも成功を収めた。劇中で流れるのは軽快なジャズではなく重厚なオペラで、数々のロンドンの名所と合わさって、これまでの作品と異なる重厚な雰囲気を作っている。

冒頭、テニスボールがネットにあたり、モノローグで向こうにボールが落ちたら勝ち、こちら側に落ちたら負けという台詞。その後も劇中に何度も言及されることで、運がこの作品のテーマだとわかりやすく伝える。

この冒頭のシーンと対になる指輪の場面、階層の違いに関係する恋愛模様は『椿姫』を、殺人とその結末においては『罪と罰』を換骨奪胎した展開を含め、脚本と一つ一つのショットが、完璧とさえ思えるくらいに無駄なくつながり洗練されている。その罪と罰について、モラルについて、運と人生について観客に否応なく考察させるようなラストも印象深い。

階層の近いアメリカ出身の女性を演じたスカーレット・ヨハンソンと、主人公が初めて出会うシーンを含め、彼女の魅力を存分に引き出した点も素晴らしい。
島晃一

島晃一