レクさんの映画レビュー・感想・評価 - 10ページ目

アダプテーション(2002年製作の映画)

4.0

『マルコヴィッチの穴』脚本家チャーリー・カウフマンの苦悩。

リアルとフィクション、映画脚本に私小説を混ぜたような入れ子構造のストーリーに驚く。
自己憐憫から生まれるものは必ずしも負ではない。
適応と
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カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇(2019年製作の映画)

3.7

ラブクラフト原作の映画化。

80年代のSFホラー味を感じるクリーチャー造形と視覚的にやかましい色味の演出。
"色"に蝕まれて行く様は無色透明な水との対比として環境汚染に警鐘を鳴らすテーマ性が見えてく
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ペギー・スーの結婚(1986年製作の映画)

3.4

コッポラの手掛けたタイムリープ・ラブストーリー。

"過去に戻れたら"という空想体験から人生を取り戻そうとする。
配役は二人一役でよかった気もするが、大人のまま過去へと戻ったと考えれば納得がいく。
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月の輝く夜に(1987年製作の映画)

3.6

未亡人に求婚する兄弟を描いたラブコメディ。

シャンパンに角砂糖や「愛するものがふたつある、君とオペラだ」なんてロマンチックなクサい台詞すらも肯定できてしまうのはすべて月華のせい。
個人として好みでは
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ワイルド・アット・ハート(1990年製作の映画)

2.5

毒親からの悪夢の逃避行、性と暴力が紡ぎだす純愛。
リンチの映画は変なものが多いが、その中でもストーリーは至極単純なファンタジー。

『オズ』のオマージュによる帰るべき場所に戻る大きな回り道からのラブ・
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あなたに降る夢(1994年製作の映画)

3.3

実話ベースに警官の鑑である善人警官がウエイトレスに宝くじ当選の半額をあげると約束するハートフルドラマ。

お金が絡むと人間性が浮き彫りになる。
真面目な人ほど損をする理不尽な世の中に一石を投じる良い話
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バーディ(1984年製作の映画)

3.7

ベトナム戦争で精神を病んだ男と髪の毛フサフサなニコケイの友情。

「鳥になって自由に空を飛びたい」
籠の中で飼われた鳥が空へと羽ばたくように閉ざされた心を解放してくれるセラピー映画だ。
ラストに唖然と
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コレリ大尉のマンドリン(2001年製作の映画)

2.5

第二次世界大戦下のギリシャ・ケファロニア島を舞台に占領軍としてやって来たイタリア軍大尉が島娘に恋をする戦争ラブロマンス。

戦争を消費して男女の愛と悲劇を謳う映画は好きではないんですが、戦争と恋愛のど
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マッチスティック・メン(2003年製作の映画)

3.8

リドリー・スコット監督は会話劇からフィクションをリアルに、ハッタリをホンモノだと思わせる世界観の構築が上手い。

それと強迫性障害の詐欺師が見知らぬ娘と生活を送るという物語と見事に親和している。
この
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シティ・オブ・エンジェル(1998年製作の映画)

2.5

『ベルリン・天使の詩』のリメイク。

オリジナルが好きなので敬遠してた作品だが、これを機に鑑賞。
色彩や舞台がベルリンであることに大きな意味があるので、その重層的な深みはなくなってしまっている。
良い
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ノウイング(2009年製作の映画)

3.5

旧約聖書の創世記をモチーフに預言と予知から導き出した未曾有に立ち向かうディザスター・サスペンス。

途中から親子愛へとシフトチェンジして本筋の軸がブレてしまって残念だが、中盤までの展開はとても興味深い
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クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)

3.4

自分の引っ越し先、もしくは隣に越してきた人の素性なんてものはわからない。
そこと掴みどころのない偽りの隣人、香川さん演じる男の素行。
また理由がない犯罪の怖さが相俟って、黒沢清らしいスリラー映画となっ
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悦楽交差点(2015年製作の映画)

4.1

通行量調査で1000人目の女性を嫁にする。
ストーカー男と人妻、2つの視点を交差させることで交わるはずのない歪んだ愛が見えてくる。
見る側と見られる側の構造を逆転させ、読唇術を効果的に使い、何かに依存
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西部戦線異状なし: 制作の舞台裏(2022年製作の映画)

4.0

メイキングを描いた18分短編ドキュメンタリー。

ドイツ人によって映画化されたことがなかったドイツ文学の反戦小説。
撮影、美術、衣装、メイク、制作に携わった人たちすべてがひとつとなり作り上げたこの作品
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アメリカから来た少女/アメリカン・ガール(2021年製作の映画)

3.2

思春期と母の病気が重なり、米国から台湾へと引越しした少女の葛藤。
自分の境遇と重なるところもあり、少女を「可哀想」に描くこと、見ること自体が当たり前にある日常生活を送っている人間から見た傲慢さで、描写
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スウィート・ラビット(2012年製作の映画)

3.4

オランダの14分短編映画。

見向きもされないおばさんの耳がある日ウサギの耳に変わる。
僕も恐らく他人に興味がない部類の人間だが、細やかな変化に気づいてあげられるような、そしてありのままの相手を受け入
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タカナクイ(2015年製作の映画)

3.5

アメリカの11分短編映画。

ペルーの喧嘩祭り"タカナクイ"。
不満を抱く家族がクリスマスに殴り合いの喧嘩を始める。
アメリカのバカバカしさを真面目に作ったコメディとしてはなかなか面白い。
エンドロー
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屋根裏のアーネスト(2023年製作の映画)

3.2

現代的な皮肉と古典的なハートフルコメディのコラボ。
ミステリー的な要素を介して家族愛を再認識する物語だが、父親の父親像が最後まで好きになれず。
クリストファー・ランドンという色眼鏡で観たことで物足りな
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映画ドラえもん のび太と空の理想郷(ユートピア)(2023年製作の映画)

3.0

これは"夢を叶えてくれる"ドラえもんという作品とアンマッチ。
理想郷を否とする前提で作られたこの物語が子どもに与える影響を心配してしまう。
且つ暴力も意地悪も強情も個性だから受け入れてみたいなメッセー
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美しき大河/ベルリバー(2022年製作の映画)

3.5

10分の短編ドキュメンタリー。

2019年にミシシッピ川の水位が過去最高を記録。
20世紀半ばまで水に囲まれて陸路でアクセスできず孤立していたルイジアナ州ピエールパート。
米国の中でもフランス語比率
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夜警(2021年製作の映画)

4.0

12分の短編アニメーション。

華やかなパーティーの帰路で起こした口論からの交通事故。
姿を消した妻を追う夫が体験するまるで悪夢のような一夜を無声のモノクロ映像で見せる。
妻を取り戻そうとする夫の強く
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2本のトランペットのための物語(2022年製作の映画)

3.5

5分の短編アニメーション。

水彩画を背景とした絵本のような優しいタッチでありながら内容は奇抜。
鬱憤を吐き出すように水を放つ噴水、常識の型に囚われず何度も形を変えながら進行していく物語に生命の誕生と
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そんなの気にしない(2021年製作の映画)

3.7

第13回MyFFFグランプリ作品。

浮足立った私生活を送る客室乗務員が、あることをきっかけに地に足をつけた現実と対面する。
成長の機会と自身の感情、マニュアルを強いられる接客と気遣い。
繊細な心の機
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波の間に(2021年製作の映画)

3.9

女優を目指す固い友情で結ばれた2人の物語。
夢にまみれ、壁にぶつかり、また夢を見る。
押しては引く波のように人生の起伏は突然やってくる。

女優業がひとつポイントで、相互理解によって役を作り上げていく
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カタラクト ぼやけた世界(2021年製作の映画)

2.5

12分の短編映画。

最期を迎えつつある女性と残される犬を描いた社会派コメディ。
生活手当の受給を終えて生活苦に陥り、飼っていた犬を育てることすらできなくなって預かり手を探す。
先のぼやけたフランスの
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ジョーンについて(2022年製作の映画)

3.0

3つの異なる時間軸で紡がれるジョーンについて。
死によってしか生に近づけない。

イザベル・ユペールは相変わらず素晴らしい。
が、不要な描写が多々あることで彼女の人生の導線が定まりきっていない印象を受
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行く先/後世(2021年製作の映画)

2.5

作家を夢見る金のない青年が彼女と同棲しようとする。
正直、心に余裕がなければ恋愛なんてできないし金がなければ生活もできない。
が、それぞれの愛の形があるのも確か。

そんな理想や御託を並べたモラトリア
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パロマ(2022年製作の映画)

3.8

27分の短編映画。

恋人を失ったドラァグ・クイーンと道中を共にするトラック運転手。
ふとした出会いからこれまでの価値観が変わる(変えてくれる)ものの存在というのは貴重だ。
自分がロード・ムービーに求
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フェイブルマンズ(2022年製作の映画)

4.2

現実と映画は違う…それでもリアリティを求め、そこに理想を見出していく。

自身の体験した地獄絵図の不和を自身で映画化してしまうことも、それを観て観客が娯楽として消費してしまうことも、映画という芸術が持
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レッド・バイオリン(1998年製作の映画)

4.0

17世紀のイタリアで作られたレッド・バイオリンをめぐる悲劇。

イタリアからオーストリアの修道院、イギリスや中国など4世紀に渡り5つの国を巡って持ち主を変え、現代のカナダのオークションへとたどり着く名
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ザ・ワン(2001年製作の映画)

3.5

マルチバースで一人の自分が死ぬと強くなれることに気づいたジェット・リーが123人のジェット・リーを殺し、124人目のジェット・リーと対峙する。

超人的なパワーと時速80キロで走れるスピードを兼ね備え
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エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022年製作の映画)

3.4

ア・イ・シ・テ・ルのサイン。
より良い未来ばかりに目を向けがちな人生における数多ある選択肢、すべての人生で愛を叫ぶ。
マイノリティ、そして仮にどれだけつまらない人生であったとしてもそれを肯定してくれる
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西部戦線異状なし(2022年製作の映画)

4.0

第95回アカデミー賞作品賞ほかノミネート作品。

新たに脚色されたひとつ、停戦協定が今の情勢への問いかけでもあるのだろう。
1930年、1979年のアメリカ制作から漸くドイツ制作として再映画化されたこ
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マーサ・ミッチェル -誰も信じなかった告発-(2022年製作の映画)

3.6

第95回アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。

ウォーターゲート事件を経てニクソン政権司法長官の妻マーサ・ミッチェルの口封じを図った政権の隠蔽工作。
心理学用語"マーサ・ミッチェル効果"
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エレファント・ウィスパラー:聖なる象との絆(2022年製作の映画)

3.0

第95回アカデミー賞短編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。

南インドで野生の象を保護している夫婦。
我が子同然に象の世話をし、夫婦に懐く象を姿を見るだけで癒やされる。
自然美と過酷さも伝わってくるが
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PLAN 75(2022年製作の映画)

3.3

近未来を舞台にした人間が避けられないものを主題としていることから、映画として云々よりも制度や生活感などを含めたシステマチックな自死に対するレギュレーションが気になってしまう。
群像劇の相関も生きてこず
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