レクさんの映画レビュー・感想・評価 - 12ページ目

トムボーイ(2011年製作の映画)

4.0

ひと夏の経験と嘘、性自認を介して不安定な子ども視点だからこそ見えてくる繊細な感情。
自身を偽る気持ちや他者との価値観の違いを友人関係やその群れで表現し、風呂や排泄描写を用いて見せる生物学的な性差。
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スランバー・パーティー大虐殺(1982年製作の映画)

2.5

電動ドリル片手に狂った殺人鬼がパジャマ女子会に乗り込む。

40年前の古さを考慮しても殺人鬼の心理描写と殺人描写がアンマッチ。
テンポは早くて良いが物語もあってないようなものなので最後まで真顔でドリル
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とべない風船(2022年製作の映画)

3.5

多美島と呼ばれる瀬戸内海の美しい島を舞台に、癒えることのない心の傷と向き合う人たちを描く。

過去に囚われたままの人、前を向けず足踏みする人に寄り添う優しさ。
生きる力強さと脆さ、コミカルとシリアスの
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ノベンバー(2017年製作の映画)

4.0

モノクロームの耽美な映像とシュールな世界観で寓話的に綴る悲愛。
血の契約と魂の取引、悪魔を騙し神に背く。
エストニア神話によるアニミズムの思想が"月光"の調べとともに我々観客をゴシックでダークな世界へ
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ファミリア(2023年製作の映画)

3.0

"家族"という人と人との繋がり、国籍や血縁を超えて形づくるもの。
絶望の末に行き場を失った感情をどこに持っていけば良いのか。

役者陣の演技で引き込む力がある。
ただ、移民問題に焦点を当てたヒューマン
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ブラック・フォン(2022年製作の映画)

3.3

子ども連続失踪事件と死者の声、誘拐された兄と予知夢を見る妹。

兄妹の能力設定の面白さは然ることながらティーンホラーとして楽しめる要素も多々あるものの、『羊たちの沈黙』的な"誤解"の使い方は下手くそだ
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おやすみ オポチュニティ(2022年製作の映画)

4.2

火星に送られた双子の探査機を描いたドキュメンタリー。

論理的に進められる責務の中で感情的な要素が生じてしまう人間らしさが随所に散りばめられている。
まるで我が子を見守るような愛情に溢れたエンジニアた
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ナイブズ・アウト:グラス・オニオン(2022年製作の映画)

3.6

豪華さと空虚さ、ガラスの玉ねぎのように形骸化された様相が透けて見えてくるのが巧い。
ただ、1作目と比較すればミステリとしてのオチが弱すぎる。

謎解きよりもその裏側や伏線が明かされる楽しさは、このシリ
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台風クラブ(1985年製作の映画)

3.5

台風が来ると、不安な一方で、どこかワクワクする気持ちの高ぶりを感じることがある。

大人になりたい、でも大人になりたくない。
台風一過なんて言葉もありますが
中学生視点で描かれる大人への憧れと醜さ(性
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ザ・ロストシティ(2022年製作の映画)

3.6

ラブコメでありながら、男女の立場を逆転させるアイデアが活きている。
ストーリーはあってないようなものだが、虚構を介して現実になるしっかりした構造、サンドラ・ブロックとチャニング・テイタムの掛け合いで最
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Mr.タスク(2014年製作の映画)

3.5

『キル・ビル』事件を取材する青年の身に降りかかる不条理。
後悔と贖罪や他人を餌にする因果応報の側面でも読み解くことができる本作は"変貌"を最高に皮肉る。

猟奇殺人事件の被害者の声は届かない…舌を抜か
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辻占恋慕(2020年製作の映画)

3.0

夢と現実のバランスは良いし、決して悪い映画ではない。
が、シニカルな台詞の言葉選びや過剰演出の乱暴さに冷めてしまった。

シュールな掛け合いやテーマ自体は好みだが、具体的な目標設定が見えてこない。
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ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)

3.9

日常、会話、ミット打ち。
互いに歩み寄ることで成り立つ意思疎通。

相手を理解できないからこそ寄り添おうとする、即ち"目を澄ませる"="映画から汲み取れる"こと。
主人公に共感させる物語ではなく、周り
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あのこと(2021年製作の映画)

-

選択肢のない人生で彼女が下した決断とは。
ノーベル文学賞を受賞した小説『事件』を基に、その虚構をまるで現実であるかのように"痛み"を追体験させる。

時代背景が前提にあることは承知の上で個人的な倫理観
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アトランティス(2019年製作の映画)

4.1

ロシアとの戦争終結から1年後のウクライナの近未来。
根深く残る爪痕と心の傷。
灰色の雨と火の温もり、サーモグラフィで見せる生と死の温度差。
シンメトリーで捉える定点カメラからその枠外を想像させるように
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スウィート・シング(2020年製作の映画)

3.7

16ミリフィルムで捉えるモノクロ映像と名作オマージュがノスタルジックを醸し出すと共に、時折見せるパートカラーが鮮明に残る記憶の断片を覗き込むようで。
社会的弱者の心情の吐露として上手く機能している。
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リフレクション(2021年製作の映画)

4.7

戦争と平和、生と死、キリスト教による寓意性や魂の所在。
失われた時間を取り戻す日常で示される自己言及性と自己反射性。
長回しやフィックスによる演出が途轍もない吸引力を生み出し、映画と現実の境界線を暈し
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バーバリアン(2022年製作の映画)

4.0

B級ホラーっぽいテイストの中で、視点を入れ替えて先の読めない展開へと転がすエンタメ性が抜群。

そこで湧き上がるある感情が、恐怖の対象を移すことで本質的に浮かび上がってくるのも見事。
場所、空間、対象
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愛への跳躍(2016年製作の映画)

3.8

フランスの9分短編映画。

切っても切り離せない愛と嫉妬を超低予算でも作れてしまうタイムリープのアイデアと短編映画でしかできない整合性を無視したインパクトの強さで語るフレンチ流のオシャレなラブストーリ
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たまご少年の恋(2016年製作の映画)

3.4

ノルウェーの12分短編アニメーション。

割れることへの恐怖から控えめだったたまご少年がミツバチの少女に恋をした。
傷つくことを厭わず、殻に閉じ籠もらず外へ出れば、いつもの景色が違って見える。
価値観
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スーツの中は?(2012年製作の映画)

3.0

オランダの10分短編映画。

働き者の母親が子どもたちと遊園地に出掛ける。
誰かに愛されたいと願う強い気持ちが公私や夢現を越えた危険領域に足を踏み入れる。
後先を考えていない一時の感情に任せた妻の身勝
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ロウフとペート(2017年製作の映画)

3.2

ドイツの6分短編アニメーション。

2Dと3Dの融合、創作における非情さとひらめき。
未完成のものを作り上げるために力を合わせてひとつになること。
この独創的なアイデアはどこから来たのかと観ながら考え
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ギレルモ・デル・トロのピノッキオ(2022年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ディズニーアニメ『ピノキオ』に込められたメッセージとは異なる、ギレルモ・デル・トロの過去作にも共通する異型への愛と父性や戦争といったファシズムに対するメッセージ。

人はどうしても自分の理想を描き、相
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白い自転車(2019年製作の映画)

4.0

イスラエルの20分短編映画。

第93回アカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされた本作は、盗まれた自転車を取り戻そうとする男をワンカットで捉える。
緊張感を持たせたまま社会問題に切り込み、皮肉交じり
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トロール(2022年製作の映画)

3.2

ノルウェーで語り継がれる伝説と自然崇拝を下敷きに、自然破壊によって目覚めたトロールが「お分かりいただけただろうか…」的に登場し、「トトロいたもん!」的文脈で堅実なモンスターパニック映画として現代社会に>>続きを読む

アフター・ヤン(2021年製作の映画)

4.3

家族の在り方から死生観に至るまで、個を介して見る走馬灯。
湯の中で舞う茶葉とメモリに残された欠片、捉えきれないものの追求と感覚で掴む味わい深さ。
人の記憶とAIの記録をフィックス(固定撮影と修理)のダ
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THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)

3.7

世代を超えても根底にあるスポーツの熱さと感動がここにある…!
当時の突き動かされた想いはそのままに、『SLAMDUNK』という人気コミックのコンテンツのひとつから生まれた新たな作品"THE FIRST
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手紙と線路と小さな奇跡(2021年製作の映画)

3.8

韓国初の私設駅開業を描いた実話ベースのハートフルコメディ。

過去に囚われたまま前を向けない青年が姉弟愛、恋愛、人情、親子愛を通して未来を掴む。
線路は人生のメタファーとされることも多いが、そこにノス
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怪人現る(1928年製作の映画)

4.2

アメリカの22分映画。

突然屋敷に現れた怪人ヒゲ爺を捕らえろ。
現代のお笑い、主にコントに通ずる「志村後ろ!」のシュールな絵作りに笑う。
ストップモーションアニメーションとスラップスティック・コメデ
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ほらふき倶楽部(1926年製作の映画)

4.0

アメリカの21分短編映画。

ほらふきばかりが集まる集会で話す奇天烈な事実。
ネズミに悩まされる家で、猫を大量に産み落とす万物の木を生み出す。
天才ではなく狂人と呼ばれる所以をこの作品で知ることになる
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オトボケ脱⾛兵(1918年製作の映画)

2.5

アメリカの6分短編アニメーション。

他5作品がどれも面白くて、どうしても見劣りしてしまう。
現代でも使われるようなアニメーションでしか成立しない過剰表現は楽しいが、ストーリーとしては一番つまらなかっ
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全自動レストラン(1926年製作の映画)

3.9

アメリカの23分短編映画。

短編アニメーション『とても短い昼食』の効率化アイデアをそのままにワンオペをストップモーションアニメーションと実写で魅せる。
機械的な描写の中で無機質なものに生命を吹き込む
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たまご割れすぎ問題(1926年製作の映画)

4.5

アメリカの23分短編映画。

割れやすい卵を割れにくくする装置を開発。
ストップモーションアニメーションと実写の融合はシュールでありながら絵作りとユーモアに溢れたスラップスティック・コメディが笑いを誘
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とても短い昼⾷(1917年製作の映画)

3.5

アメリカの6分短編アニメーション。

キッチンからホールへ。
パイプを使って直接お皿にスープを流し入れ、口を開けたお客目がけてアップルパイを発射する。
発明狂チャーリー・バワーズの自由すぎる発想が楽し
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君を想い、バスに乗る(2021年製作の映画)

4.3

覚束ない足取りで辿る色褪せない想い出の軌跡。
説明不十分な話運びによって、いつしかお爺さんを見守る観客たちと自分が同化する。

過去と今を結びつける約束と力強い愛の前に、第三者はそれを阻むことを許され
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リセット 決死のカウントダウン(2017年製作の映画)

3.3

シングルマザーが息子のために奔走するSFアクション。

タイムリープ設定の縛りを上手く用いたギミックで時間跳躍や時間の逆説を力技でねじ伏せてるのが良い。
使い古されたものだけど、最後まで面白さが持続す
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