レクさんの映画レビュー・感想・評価 - 49ページ目

キング(2019年製作の映画)

3.5

シェイクスピアの戯曲を原作に、放蕩王子が王に即位し宮廷内闘争や戦争に翻弄されながら成長していく歴史ドラマ。‬

原作であるシェイクスピアの戯曲の原型はほとんどなく、大胆に脚色されています。
本来は勇ま
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トゥンバード(2018年製作の映画)

3.8

‪"眠らざれば、ハスタル来たる"‬
‪創造主とされる女神の子宮に住まう罪深き欲深さの具現化。‬
‪飢餓で苦しむかつての神ハスタルの呪いと恵み。‬
‪ヒンドゥー教における人生の目標のひとつとされるアルタ
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夜が明ける前に(2014年製作の映画)

3.3

娘を誘拐された警察官が事件を追っていく社会派ドラマ。

インドのムンバイでは、年間10万人の子供が誘拐され行方不明となっている。
人身売買、児童虐待、売春斡旋。
これこそが現状であり、子供の流した黒い
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ライース(2017年製作の映画)

3.3

生きるためなら小さな商売も尊い。
禁酒法の裏で荒稼ぎし、街の人々から厚い信頼を得た一人の男の物語。
規制されると不正が跋扈するのは当然のこと。
その一方で、犯罪は減少。
しかし、アルコール産業に大きな
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リクシャー(2016年製作の映画)

3.2

三輪タクシーの運転手に密着したフェイク・ドキュメンタリー。

富裕層への嫉妬、貧困層の鬱屈、孤独と哲学、罪と罰。
普段観ている明るいインド映画は謂わば表側であり、その裏側の知られざる狂気を映し出す。
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ルストムの裁判(2016年製作の映画)

3.6

海軍将校が起こした実際の殺人事件が基になっているそうです。
妻の浮気相手を殺した罪、無実を訴える海軍中佐は愛国者か、それとも計画的殺人犯なのか。

軍人と富豪、権力と財力、復讐と報復、掌握術と弁論術。
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ソニ(2018年製作の映画)

2.7

インドの大都市デリーで凶悪事件に立ち向かう二人の女性警官。
権力と公務、誤解と阻害、理性と感情。
国に根強く残る男尊女卑と警察組織にも影響する性差別を問題提起としながらも、それがインドでは当たり前の日
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受取人不明(2001年製作の映画)

4.3

‪米軍基地のある村を舞台に描かれる貧困、差別、暴力は物語る上での背景に過ぎず、青春の群像劇へ溶け込む。‬
‪何かに縋る想いが負の連鎖を引き込み、枯渇する愛が求める潤いは希望のない未来、絶望を引き寄せる
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執行者(2009年製作の映画)

3.3

形骸化されている韓国の死刑制度。
刑務所に配属された新人と先輩刑務官、そして収監されている死刑囚たち。
死刑の是非が問われる中での苦悩や葛藤、移りゆく心情と人間性が描かれる。
二人の刑務官の対比、死刑
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LUCK-KEY/ラッキー(2016年製作の映画)

3.5

『鍵泥棒のメソッド』原案、名脇役として知られるユ・ヘジン主演の韓国映画。

‪ある事故で記憶喪失になった殺し屋と自殺未遂の貧乏役者、二人の人生が入れ替わる。‬
‪劇中劇となりすまし、二つの芝居と情愛
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時間回廊の殺人(2016年製作の映画)

3.2

ベネズエラ映画『マザーハウス 恐怖の使者』の韓国リメイク。‬

‪一家を崩壊させたある事件から25年、時を経て真実の扉が開かれる。‬
‪プロットは殆どオリジナルと同じ。‬
‪演出はアレンジが利いていて
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マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985年製作の映画)

3.7

生きていく上での指標となるもの。‬
‪"自分はスプーニクスに乗せられたライカ犬よりもマシだ"‬。

母親に語る小話ひとつひとつが彼の人生であり、記憶に残る生きた証でもあるのだ。
‪様々な登場人物を介し
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IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。(2019年製作の映画)

2.5

前作から27年後の変化と成長を描いた青春ホラー。
目を背けたい過去と目を向けなければならない現在。
回想を交え描かれるルーザーズの再開と恐怖の記憶、心の傷と団結力には熱いものがある。
しかし、肝心の恐
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ターミネーター ニュー・フェイト(2019年製作の映画)

3.5

『ターミネーター2』の正統な続編。
人と機械の成長と交流、未来と現在の変遷と交錯。
変えられない過去は過去作のオマージュ、運命への抗いが今作の設定か?
根本的な意味での物語の広幅化ではなく、こうするこ
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ひとよ(2019年製作の映画)

3.9

背負い込むには重すぎる罪と償うには大きすぎる贖罪、そして家族の救済と再生。
過去に囚われた人間の記憶を辿る現在、切っても切れない家族としての繋がりと在り方。
愛憎が綯交るその心中を暴き掘り出される苦し
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宮本から君へ(2019年製作の映画)

4.5

「宮本から君へ」は新井英樹による漫画原作。
新卒営業マンの主人公が、恋や仕事に不器用ながらも成長し、自分なりの生きざまを見つけていく物語。
ドラマ版では池松壮亮演じる主人公の宮本が営業マンとして奮起す
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ムンバイのバイオリン弾き(2016年製作の映画)

3.9

バイオリン奏者が帰宅途中の駅で見知らぬ男から仕事の依頼を受ける。‬
‪バイオリンの旋律に揺さぶられる感情。‬
‪不穏な空気までも飲み込む圧巻の独奏、ひときわ異彩を放つ余韻に圧倒的な映画表現。

パブロ
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ガウダ爺さんのお葬式(2015年製作の映画)

3.1

101歳の爺さんが亡くなり、集まった家族の11日間がインド地域の風習を交えてドキュメンタリー映画のように淡々と描かれる。

欲望が入り乱れる中での業、家族という繋がりや縁の危うさ。
爺さんの残した土地
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信じる心、危機一髪(2015年製作の映画)

4.0

ヒンドゥー教として生きてきた中年が、実はムスリムの出生であったことを知ることで宗教に振り回されるコメディ。
ヒンドゥー教とイスラム教の対立を描きつつ、突きつける本質。
"宗教は人が創作したもの"であり
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ビジョン(2015年製作の映画)

4.6

キャンプ中にシャワーシーンを盗撮され脅された娘が誤って殺してしまった相手は警察署長官の息子だった。
かけがえのない家族の為なら何でもする。
偽装工作をする家族と息子の失踪を探る警察の攻防。
真実を覆い
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兄の見た風景(2010年製作の映画)

2.5

亡くなった兄の遺品を見つけ、事態は次第に動き出す。
心を閉した無表情な青年の現実を受け入れられない虚無感。
肉眼で見たものとカメラを通して見る景色。
枯れ落ちるカエデの葉と生きたまま捌かれる羊。

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殺さない彼と死なない彼女(2019年製作の映画)

2.8

SNS漫画家・世紀末の4コマ漫画原作。
三組の高校生の何気ない日常を群像劇でもオムニバス形式でもない独自の構成。
会話劇の中に見え隠れする本心と強がり、捉えきれない各々の心情が独特な距離感で描かれる。
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CLIMAX クライマックス(2018年製作の映画)

4.0

スペイン語で"出血"の意味を持つサングリアが誘発させる真紅の狼狽、薬物が与える混沌。
それらが無秩序な世界を創り上げる。
クソかっこいいショットと汚い絵面と会話が脳を刺激し続ける毒と化し、観客をも狂酔
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ロボット2.0(2018年製作の映画)

3.7

スーパースター・ラジニカーント主演『ロボット』の待望(笑)の続編。‬
‪我らのチッティが戻ってきた!‬
‪負のオーラ、死の怨念を纏ったスマホの怪鳥が齎す黙示録的なホラーコンテクストが現代社会へのメッセ
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ロボット(2010年製作の映画)

3.8

天性の知能と強い探究心、無限の力と未知の頭脳。
開発者とロボットの対比は旧約聖書のヤハウェとアダムとイブを逆位置へと誘う三角関係へ。
心を与えられたロボットが失恋し暴走する"ワケわからんが面白い"おバ
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生と死と、その間にあるもの(2015年製作の映画)

3.5

偏見、貧困、カースト制度、インドが抱える問題を2つの物語で交錯させ、そこにある悲劇と小さな希望が啓示される。

生と死の境とされるガンジス川で、若者たちはどんな景色を見るのか。
現実の過酷さは心を痛め
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ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)

4.1

「ボーダー 二つの世界」
"自分は誰なのか?"
現実と異界の境界線で自身のアイデンティティを模索する。
美しく静謐な世界観の中で蠢き顔を覗かせる畏怖と虐遇、ヒシヒシと伝わる不穏感。
性別や容姿、是非と
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スペシャルアクターズ(2019年製作の映画)

3.8

日常にも在る"演技"と"嘘"。
芝居というフィクションが作る救済の一手。
憧れや理想を実現することだけが重要なのではなく、その願望を持つことが時に力を発揮することもある。
自分を想ってくれる人、頼れる
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フィッシュマンの涙(2015年製作の映画)

3.3

治験によって魚人間となった青年を中心に韓国で三者三様の若者の苦悩を描く。
仕事に対する信念と不満、メディアと世間の反響、無力感と憂鬱、置かれた環境と理想。
現代社会に一矢報いた風刺で痛烈に皮肉るシュー
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空の青さを知る人よ(2019年製作の映画)

4.1

『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『心が叫びたがってるんだ。』の監督・長井龍雪、脚本家・岡田麿里、キャラクターデザイン&総作画監督・田中将賀が再結集し、前2作同様に秩父を舞台にオリジナルスト>>続きを読む

サタンタンゴ(1994年製作の映画)

5.0

貧困、抑圧、暴力などから抜け出せない人々の絶望的で出口のない不条理な状況を複数の視点から描く。
繰り返しと複数の視点や時系列を基本構造とし、長回しとモノクロで映し出す技法が取られている。

負の連鎖が
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最高の人生の見つけ方(2019年製作の映画)

3.2

同タイトルのハリウッド映画「最高の人生の見つけ方」の邦画リメイク。
人生の大半を家庭に費やした主婦と人生を仕事に捧げてきた女社長が余命宣告を受けて"死ぬ前にやり残したこと"を実践していく。

"意味の
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真実(2019年製作の映画)

4.0

フランスの国民的大女優が自伝本『真実』を出版したことをきっかけに繰り広げられる母と娘の修整の物語。
女優を演じる女優、現実を覆う銀幕。
劇中劇が劇中に作用し、高次の視点から大局に見る構成。
優しい嘘と
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クロール ー凶暴領域ー(2019年製作の映画)

3.6

最大級のハリケーン上陸、我が家がワニの棲家へと変わる。‬

‪襲われる脅威、追い詰められる畏怖、ワニの姿が見えても見えなくても緊張感と緊迫感が途切れない。‬
‪生に縋る精神力が疎遠になっていた父娘の絆
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エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2018年製作の映画)

3.9

中学校生活最後の一週間。欲しいものは自信と親友、そして彼氏。

"いいね!"の数は、わたしの価値じゃない。
自己評価と他己評価の乖離。
日常で抱く疎外感と饒舌な動画。
至極ありふれたプロットの中でSN
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毒戦 BELIEVER(2017年製作の映画)

3.9

ジョニー・トー監督作『ドラッグ・ウォー 毒戦』の韓国版リメイク。
緊張感と緊迫感はそのままにオリジナルを大胆にアレンジした韓国ノワールとして昇華した秀作。

韓国映画はやはりすごい。
原作のリスペクト
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