子供や孫たちが帰っていった直後のショットの切り替えし、音楽の鳴るタイミング、階段の昇り降りのスピードの差、その全てが完璧。
ここではない何処かへ旅立ち、結局はここに戻ってくる。その行為によって何かが変わったわけではないけれど、何かしらの実感を得て元の生活を続けていくという、その単純さの描き方にグッとくる。
『ラ・パロマ』の名シーンを思い起こす、イザクとアンジェリカの幸福感に満ちた空中浮遊のシーンの美しさには見事に心を奪われた。夢だからこそ幻想的で美しい、映画でしか味わえない極上の体験。
押し付けがましくもなく素っ気なくもない、絶妙な距離感から語りかけてくる『ヤンヤン 夏の想い出』は、想いや悩みを抱きながら都市で生きている人々をエドワードヤンの暖かく優しい視線を持って描くことで、未来は>>続きを読む
ラストのロングショットによる長回しに一気にもってかれた。彼の恋がどういう結果を迎えていようが、オリーブ林をぬけたその先も人生はつづいていく。
希望も救いもなく、絶望的な結末しか待っていないと分かっているからこそ、二人の幸福な時間はより一層輝きを増していて、観ていて切ないけれど愛おしかった。キーチの笑顔と、ラストの振り向きざまの生きる強さを感>>続きを読む
日常を切り取った映像の連続に、不意に詩的な瞬間が現れて何度かハッとさせられた。その映像を観ていると、どうしてもジョナスメカスを思い出してしまう。
第1話の「青い時間」は『緑の光線』のラストとはまた違った静かな高揚があって、永遠を感じるほど美しく尊い瞬間だった。レネットとミラベルだけが共有しうるその瞬間は、言葉なんかじゃなくて抱きしめ合うという行>>続きを読む