元空手部さんの映画レビュー・感想・評価 - 3ページ目

LOVE LIFE(2022年製作の映画)

4.4

聴覚障碍者の元夫の前で夫が独白する場面では元夫と夫との間で音の分節化がなされている
この音の分節化の演出はラインの黄金(終幕間際のローゲのモノローグ)などのオペラの手法に近いものがあって良かった。

ONE PIECE FILM RED(2022年製作の映画)

4.0

ノワール映画のような目や口を隠したアップによる主体化のショットの多さや、ラストの視点の衝突を回避した弁証法的対立に、解決を回避する作用があった

NOPE/ノープ(2022年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

白鯨の変遷作品の一つ。
本筋とは直接関係のない、チンパンジーが人を襲う視点ショットから映画は始まる。
この時点では誰の視点ということすら明かされないショットは、その後の映画本編に寓話性や関連性や意味を
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吉原炎上(1987年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

映画冒頭、吉原の象徴として初めて登場する揚屋は、中心が空洞な螺旋階段の設計になっている。この、空洞の中心に立ち入ることが、作中を通して重要なアクションとなっていた。
女郎が自殺する場面では、女郎は衆人
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鬼龍院花子の生涯(1982年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

映画冒頭、花子の死体の前景とソフトフォーカスの後景に位置した人物が発するほとんどオフに近い声が重なるショットがある。死が近く、生が遠い前景と後景の弁証法的対立により、体験できない死を象徴的なイメージに>>続きを読む

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)

4.0

劇中ほとんどの場面で雪を踏む音や剣を交える撃鉄音などの環境オンを排し、ショットサイズと一致しない後撮りのセリフを挿入させる
この音響設計はスコア上の音を再現させるオペラに近いものがあった
また、ショッ
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ベイビー・ブローカー(2022年製作の映画)

3.8

高低差のモチーフが偏在する作品
そして高いところに位置することが、観覧車の場面が表すように秘密や独白の象徴として扱われている
映画は雨中に捨てられる子供からはじまり、物語ラスト付近ではその子供が海辺で
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リコリス・ピザ(2021年製作の映画)

4.0

和食レストランのキャッチコピーをキメる場面での切り返しによる弁証法的対立では前景の夫妻と後景の主人公→後景の母親と前景の夫妻の後ろ姿が繰り返し挿入される。一見母親と夫妻を主体化した切り返しに見えるが、>>続きを読む

EUREKA ユリイカ(2000年製作の映画)

5.0

このレビューはネタバレを含みます

固定ショットが繰り返し挿入されることで物証化され、脱出できない磁場が映像的に発生した兄弟の家、そしてその家をいとも簡単に抜け出してしまうドラマの展開には神話的な超然性があった
劇中たびたび登場する、打
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恋の秋(1998年製作の映画)

4.0

カフェで、女が男に自分ではなく違う女を紹介したいと打ち明ける場面の切り返しで、女が飲んでいるティーカップが男と女、どちらのショットにも前景に映っている
この弁証法的対立での前景の共有は、小津作品にも見
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冬物語(1992年製作の映画)

4.0

ただし、要再見
ロメールらしく、目まぐるしくアングルの固定による物証化と切り返しの弁証法的対立が繰り返される中、人物の移動が頻繁に行われ、後景の位置の変化により、二項対立性が解体されている
教会と冬物
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ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン/ブリュッセル1080、コルメス3番街のジャンヌ・ディエルマン(1975年製作の映画)

3.9

この映画は一日目の日常が朝から描写されず、いわばノーマルの始点から物語が開始されない
構造の繰り返しという点での反復が反復としての条件を完全に満たさずに、不完全な形で構成されている、ここに不条理性とリ
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シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)

3.8

ウルトラマンシリーズでは、画面後景にウルトラマンと怪獣を配置して戦闘場面を描写することが多い
シンウルトラマンで上記の構図が見られたが、ネロンガとの初戦でのワンショットにおいて、同じ後景に位置する電線
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THE BATMAN-ザ・バットマンー(2022年製作の映画)

4.3

視点ショットとアップの多さが特徴的な作品
それに伴いソフトフォーカスされた後景も多く、これが世界に対する不安定さ=対自的イメージを喚起していた。
対して不規則に、たびたび挿入されるパンフォーカスで突然
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MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

3.8

主体化を排した非動的な画面に対してオブジェクトのように響くあの音には主体性があった
これまでのアピチャッポンは仏教的な存在論を映像で描写することが多かったが、今作ではキリスト教的な神秘表現を用いていて
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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム(2021年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

固定アングルでの切り返しで物証化されたピーター三会談の場面は、フランス映画のようなテンポの停滞がある
これが他にもアクション映画らしからぬ戦争映画での決戦直前のような決意性ももたらしていて良かった

クライ・マッチョ(2021年製作の映画)

4.0

メキシコとの国境を越えたイーストウッドが野宿する場面で、後景の窪みにに寝っ転がりまるで棺桶に入るかようなショットが挿入される
この擬似的な死が、劇的展開とも関係なしに映画序盤に挿入され、何事もなかった
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偶然と想像(2021年製作の映画)

4.0

古典的な演出が多い中、わずかなラディカルさが混じる映画

第一話
古典的ハリウッド映画にあった、シルフスクリーンを意識させるタクシーの後部座席フロントガラス越しの後景が良かった。
古典的ハリウッド映画
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奇跡(1954年製作の映画)

3.9

僕はアンゲロプロスの映画が好きで、諸要素の統合の作用としてのパンの動きは似ている部分があって良かった
オフの声の他者性が偏在している映画だったが、難産の場面では苦しむ妻の声がオフで、妻の体が映像と分離
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水俣曼荼羅(2020年製作の映画)

5.0

第一部と第二部では役人と原告団は机と机の間に距離を挟んでの討論をしているため、主に切り返しや前景と後景を用いての描写が続く。それが第三部では打って変わって、環境省では役人と原告団が机を合わせ、熊本県で>>続きを読む

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)

3.7

ムーミンのモチーフによりトーベヤンソンの心情が換喩され、一面的に表現されず、表に出てこない出てこない作風が良かった

DUNE/デューン 砂の惑星(2020年製作の映画)

3.5

同じ音楽が流れ、似たようなイメージ映像、アクションが繰り返され、物象化されていくことで停滞が引き起こされている

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ(2019年製作の映画)

4.0

スカイフォールでもあった前景の障壁が氷面や電車のガラス越しのモチーフで再度用いられていたが、今作では接触可能な距離にいても接触ができない、作中の関係に代表される矛盾した使われ方になっていた
森の場面で
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ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)

4.0

妻のテープが最初再生される場面ではカーステレオのアップで主体化されていたテープの妻の声が、物語を通してオフとして表現されたり、オフやロングショットのショットサイズと合わさっていない換喩等と組み合わされ>>続きを読む

ゲット・アウト(2017年製作の映画)

4.0

コロナ陽性になり自宅療養中に鑑賞

催眠術のトリガーが物象化されたティーカップからさらに分割されるあの場面が良かった

竜とそばかすの姫(2021年製作の映画)

4.0

家と学校のルーチンで物証化された空間に対して、場面に応じた微細な変化がもたらされるのが良かった
これに組み合わせた後景でオールを漕ぐカヌー部等の、画面全体を生かしたショットも良い

ただ点字ブロックの
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ミークス・カットオフ(2010年製作の映画)

4.1

制限されたアングルや舞台にやり反復され、物証化された映像が話のテンポを停滞させていて良かった

ウェンディ&ルーシー(2008年製作の映画)

3.8

視線の一致しない切り返しでの弁証法的対立は止揚しない、ここが良かった

オールド・ジョイ(2006年製作の映画)

3.7

ただし、要再見
移動ショットやアクションの無駄の多さに商業映画への反骨心があってよかった

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)

3.7

セリフに象徴される道路の線やホース等の線形のモチーフがあった
警官=暴力のイメージに死体のショット写す換喩のズレ、北へ向かう際に車線変更することで映像で方角をしめす換喩が良かった

笑の大学(2004年製作の映画)

3.8

冒頭の警視庁の張り紙や不認可のスタンプが傾いていて、権力を示すシンメトリーさがないのが良かった

ゴジラvsコング(2021年製作の映画)

3.5

このレビューはネタバレを含みます

ドローン撮影や避難シーンなどの説明ショットの速度がかなり早く、テンポを重視した演出が良かった
雨のヴェールや海面、少女に対峙するコング等、後景と前景が境界として分別されているのもショットにイラスト的な
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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(2021年製作の映画)

3.8

後継の人物の描き方や、アニメーションの動きの簡素さに過剰さがなくてよかった
執務室でのハサウェイと大佐の会話の場面で銅座に置かれた大佐の馬の銅像が、同じ執務室で大佐とギギと話す場面では置かれていない、
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るろうに剣心 最終章 The Final(2021年製作の映画)

3.8

前景と後景の境界を曖昧にする雪やビラのモチーフ、脱主体的な篝火のモチーフが良かった
アクションシーンが早回しなことで、会話シーンとの区別がミュージカル映画の歌唱パートのような厳粛さになっていて、その落
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るろうに剣心 最終章 The Beginning(2021年製作の映画)

4.0

これまでのシリーズでは前景と後景が火の粉や雪などで混沌としていたが、古屋が燃えるシーンでは後景の炎と全く峻別された前景の剣心と、掟破りな演出法を採用している、ここに決別や不可避性が強調されていてよかっ>>続きを読む