40年代キューバ音楽シーンの豊穣さと、90年代キューバの貧しさを目の当たりにして、切なくて涙が出た。
老ミュージシャンたちは、そんな感傷を吹っ飛ばして、恰好いいけどね。
ドイツ敗戦後、ナチス高官の子供たちがたどる過酷な逃避行。カメラは、汚れ傷ついてゆく子供たちの腕や脚を冷酷に写す一方で、木漏れ日や飛び交う綿毛や芽吹く木々を美しく写す。
ナチズムへの強烈な拒否を描いて唐>>続きを読む
「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」や「バベル」の脚本家ギジェルモ・アリアガらしい巧みな構成の映画。不倫する母をK・ベイジンガーが演じ、その母を誤って殺してしまう娘にJ・ローレンス。そして、母殺>>続きを読む
戦争という最大の暴力を、ペキンパーが「なんでもありでしょ」とでもいった具合にとことん濃密に描いた映画。
ドイツ軍の視点で捉えているのが、へそ曲りのペキンパーらしい。
寡黙な男をいつもスタイリッシュに演>>続きを読む
異能の哀しみを描いた映画。犬と交わってできた子として生まれ、馬をも追い越す脚力を持つ設定に映像のリアリティを与え、尚且つ剣の美学を貫く離れ業はさすがに三隅研次!
冒険活劇のお手本の容な映画。実現不可能に思えるミッションがあり異能のメンバーが集められる王道ともいえる冒頭から、大嵐の難破あり、断崖絶壁のサスペンスあり、メンバーの衝突と裏切りありと、次から次へと見せ>>続きを読む
生涯、マイノリティとアウトサイダーに取り憑かれたペキンパーのドキュメンタリー。「ワイルドバンチの撮影じゃ、メキシコ軍は実弾撃ってたぞ」と大笑いするA・ボーグナインや、「酔っ払ったペキンパーは道端に尻餅>>続きを読む
みっともなくてふわふわしてて行き場のない「冒険者たち」。街中を着物姿で男を追っかけ、揚句に首吊りに失敗する絵沢萌子も素敵だが、素っ裸で延々と馬跳びする中川梨絵はもっと素敵だ。つくづく中川梨絵はロマンポ>>続きを読む
母娘の近親憎悪とでもいうべき嫉妬や依存が全編激しくぶつかり合いながらも、最後は切っても切れない強い絆を感じさせる、なんとも切ない映画。娘はまたもや暗い演技の有馬稲子で、母親は陽気でヒステリーな淡島千景>>続きを読む
走る列車内からひとりの女性が消える。だが、乗客は誰もそんな女性は見ていないと口を揃える。ヒッチ本人が「他愛もない」と語っている謎だが、ユーモアたっぷりの展開を観ていると、言葉とは裏腹に案外ヒッチは気に>>続きを読む
兎に角、暗い。慣れ親しんだ小津映画を期待すると、最後まで居心地の悪さが付き纏う。「東京物語」の笠智衆が亡くなるシーンで、父親を亡くしたばかりの今村昌平にトイレで「親が亡くなったときって、こんなもんだろ>>続きを読む
踊りながら他人の家に上がり込んで、ギターを奪って歌い出す。な〜んてことを面白可笑しく納得させちゃうンだから、植木等のC調ぶりは半端じゃない。しかも苦み走った二枚目顔だから、無責任とはいえ凄みがある。「>>続きを読む
老人介護に象徴される人と人との距離に対する怒りの映画。それは、いまの時代をどんよりと包む冷酷さや無関心さへの怒りなんだろう。ただ、個々のエピソードは成程面白いが、如何せん3時間16分は長い。特に、津川>>続きを読む
観音様のようになった一条さゆりに、一条を妬み嫉む反骨のストリッパーを対置することで、一条さゆりを逆照射する脚本が先ず上手い。さらに神代演出は闊達奔放。笠原和夫が「こんなに映画は自由でいいのか」と呆れた>>続きを読む
三船敏郎の演技に代表される尋常じゃない重厚長大さは、一旦ロングに引いて見ると喜劇にしか見えない。無自覚な喜劇は戦後を生き延び、いまだに敗戦を認めない政権となってのさばっている。
映画は安藤昇の左頰の大きな傷痕のアップから始まる(「懲役18年」も、このオープニングショットを踏襲する)。ここでは戦争を生き抜いた男の諦観と再生が、闇市三国人との抗争のなかで描かれるが、加藤泰映画特有>>続きを読む
安藤昇という稀有な存在感の役者を得て、笠原和夫は「変わりたくないんだ!」と冷徹に言い放つ特攻隊崩れの漢をスクリーンに創造した。そこには「仁義なき戦い」では「脇役にしかなりえなかったヤクザ」たちとは違い>>続きを読む
1967年。万博を3年後に控えた大阪の不良たちの物語。GS、ボーリング、ザ・ガードマン、金嬉老事件、シンナーといった風俗世相をないまぜに描く大阪グラフィティーだが、反骨の精神が愚直に貫かれた傑作。ラス>>続きを読む
老舗の博徒と新興のヤクザが公共事業の発注を巡って争いになり、博徒の親分が死に、嫌がらせが続き、子分を殺された健さんが最後には殴り込み、傘を持った池部良がそれを助ける。まさに型通りのシリーズ
第四作。纏>>続きを読む
映画はほぼ全編にわたって、R・ミッチャム演じる米駆逐艦の艦長とC・ユルゲンス演じる独潜水艦の艦長が水面をはさんで戦うシンプルな構造。お互いが見えないところに戦いの工夫がありサスペンスが生まれる仕組みが>>続きを読む
ブルジュホテルの荒唐無稽なシーンしか記憶になかったが、再見すると前作を受けたストーリー展開がしっかりしていて、ラストのしっとりとした大人の味わいなどはなかなかです。
陰惨で破壊的なエネルギーに満ちた怪作映画。無茶苦茶なンだけど緊張感の持続が半端じゃないし、反権力の筋目がきっちりとついているので映画がぶれない。無口なナイフ男、荒木一郎が効いてます。
荒れたモノクロ画面の導入部。殴られるままに我慢する哲。起き上がる野良犬。壊れたオモチャの拳銃。くすんだ赤が目に沁みる。「もう一度頼む。これでもう三度めだ。頼むから俺を怒らせないでくれ」。哲の叫びにかぶ>>続きを読む
前半は九州・若松の博徒をカラッと描いて好調なのだが、後半、物語は一気に凄惨な様相を帯びる。なにしろ、鶴田浩二以外の主要人物がみんな殺しあうんだから尋常じゃない。ただし、多くのシーンが名作「総長賭博」の>>続きを読む
呆然とするほど美しい映画。映像も物語も世界観も、すべてが荒々しい神話のように美しい。かつてスクリーンで「戦艦ポチョムキン」や「駅馬車」や「七人の侍」を観た観客の興奮がこの映画にはある。凄すぎるよ、J・>>続きを読む
親分が死に、耐えに耐えた子分たちが最後に敵の組に殴り込む。それぞれ泣かせる別れのエピソードを盛り込み、殴り込みの前には祭で遊んで敵の目を欺く。「忠臣蔵」そのものの物語。高倉健は三白眼の大石内蔵助。吉良>>続きを読む
なんてったって桜町弘子!健気で愛らしくてユーモアがあって、こんな素晴らしい女優だったとは。加藤泰リアリズム映画術に咲いた可憐な花です。
傑作!スタイリッシュな犯罪映画でありながら、主人公が兄を殺した犯人を捜す探偵映画の要素もあり飽きさせない。しかも、主人公はサイコ的なギャングという難しい役どころだが、マイケル・ケインが表情も変えず見事>>続きを読む
田宮良子と後藤というふたつの流れが絡み合い有機的なうねりにならないのが辛い。中盤、田宮良子の流れで一旦は盛り上がるが、そのあとがグダグダ。意味不明のラブシーンでアレッ?となり、ヤマ場のCGに脱力して大>>続きを読む
ジャス歌手からエンタテナーとして成功するも、最後は車椅子生活になり火災で死亡したというモニカ・ゼターランドの半生。同じくジャスでデビューし幅広いエンタテナーになり、高倉健と結婚・離婚をし、最後は酒を飲>>続きを読む
ソフィーが「マルゴー」を飲みながらの台詞。
「聖人のように清く生きて、天国で飲ませて呉れるのはこの酒よ」
B・デイビスが共演のJ・クロフォードを評した台詞。
「あの人のあとの便座には座りたくないわ」