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輪るピングドラムのhtksのレビュー・感想・評価

輪るピングドラム(2011年製作のアニメ)
4.6
この物語を作った作者の願いを想像すると、泣けます。10回くらい泣かされました(汗)
音楽でいうとラナデルレイくらい俯瞰して社会への愛と警告とユーモアがあるような、ラナデルレイにも度々泣かされてますが、近い感覚をこの作品から感じます。
明らかに地下鉄サリン事件と思われるテロの実行犯の子ども達のストーリーで、また血の繋がってない家族のキズだらけになりながら兄弟団結して家族愛を絶やさない話?
…すごい題材です。これ以上凄い題材のアニメを私は知りません。
題材だけだとエグいアニメになりそうですけど、演出がポップでカラフルでおとぎ話のようやファンタジーで描かれてるので、とても可愛いアニメとしても観れるのですが、さりげないメッセージ、メタファーだらけでめちゃくちゃ深いです。否定もせず肯定もせず描いてるので、解釈の余地が沢山ある感じです。ただ、作り手の思いをひしひしと感じるとたまらなくなります。まるで絵本作家のような子ども達への深い愛を感じます。
ピングドラムのキャッチコピーは「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」「僕の愛も、君の罰も、すべて分け合うんだ」なんですけど、深いな~って思います。戦後の日本社会の歪みで「何者にもなれない」子ども達と、大人の罰も双方が混じり合って皆で分け合おう。地下鉄サリンも他人事ではないし、テロを実行せざる得なかったブルースは世界全体の繋がりでもあるような。そんな一見平和でも不穏な社会の子ども~若者に本気で愛を届けなきゃという作り手の思いを感じます。(個人的解釈です)
何よりそんな重いメッセージ感じ取らなくても、ポップなファンタジーとして優秀な夢を見させてくれるようなアニメ作品である前提って事が深いポイントだと思います。

トリプルHが歌う音楽はARBの楽曲みたいですが、この作品を通じて初めてARBをちゃんと聴きましたが、凄い歌詞ですね。石橋凌さんの歌詞は素晴らしいです。
ARBっていうと男気溢れるロックンロール、ニューウェーブ、パンクなバンドってイメージですが、言わばオラオラ系のジェンダーを特定しない現代にはアウトな表現だったりしますが、そんな男臭い歌詞を声優さんの萌えな可愛い声で歌うとポリコレ的なアウト感が無くなって、新たな魅力が生まれて、これはある種の発明なんじゃないかと感動しました。

「Welcome To Rock N Roll Band!」
「ニューヨークの寒い夜、ジョンが倒れた時も俺達はいつまでも、あの歌を繰り返した」
「暗い闇の時代が続くけど 早くお前に会いたくて」
「イカれちまったぜ、どいつもこいつも」
「お前を想う夜があるけど、サーチライトがつけ狙う。あちこちでクーデターが起こり出す」
「さあ思い出して、夢に生きてきた頃を。さあ思い出して、愛し合ってた頃を。さあ思い出して輝いていた頃を」

という歌詞をアニメの中のアイドルグループが歌ってます。しかも物語の中心人物のヒマリちゃんはテロ犯の子どもという事になって、友達とアイドルやる事が出来ず、本来トリプルユニットはダブルユニットになってる事も胸が苦しいです。
そんなトリプルHのアルバムCDも買って聴いてますが、本当に良いし、何度も車運転しながら泣かされてます(笑)

アニメとして今まで2回通して観ましたが、またそのうち観ると思います。難解ではあるアニメなので、疲れるっちゃ疲れますが、同時に癒されます。

作家性がロックンロールなアニメだと思ってます◎

P.S.石橋凌さんがこのアニメを観たのか気になります。
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