Yutaka

攻殻機動隊 SAC_2045 シーズン2のYutakaのネタバレレビュー・内容・結末

攻殻機動隊 SAC_2045 シーズン2(2022年製作のアニメ)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ビッグブラザーやミニラブ、思考警察、101号室、郷愁など、説明が必要な用語や事象が最後まで説明されない点が気なりました。『1984』という作品をモチーフとしたもので、その作品を読むと理解できる形になっているのかと想像します。しかしそれでは一作品として成り立っているとは言い難く作り手のエゴが強すぎるように感じます。一つのエンタメ作品としてモチーフ作品を読まなくても楽しめて、かつ読むと更に楽しめる構造であってほしかったと思います。
シマムラタカシは容姿やその幼さから感じ取れる正義感からどこか、笑い男的なカリスマ性を期待せざるを得ませんでした。しかしそれらの多くが表現されることなく、ポストヒューマンとしての矜持もあまり伝わる内容でもなかったので、反体制側の魅力も中途半端な描写にとどまったように思えます。
今作の構図は、これまでのような公安9課が大きな事件を少佐を中心とした個々の高い能力をもって解決へと導く物語ではなく、主にポストヒューマンになったにも関わらず自我を保ち続けた江崎プリンの物語であり、それに振り回される周りと、とにかく証拠を隠蔽したがる米帝。という構図でした。これによって、9課メンバーの活躍があまりなく、常に後手後手の立ち回りでカタルシスが得ることはなかったです。少佐と同等のスペックをもつ江崎プリンという存在には、今後プリンがどのような動きや活躍をしてくれるのかとワクワクができましたが、終盤の展開ではその能力も中途半端な形で活かされ、不完全燃焼感は否めませんでした。

能力が高いはずの9課が今回起こった問題をほぼ解決できず、最後には少佐がロマンチストだから、という理由で人類の進化の行方を委ねられるのはあまりに乱暴な展開だと感じました。

また締めくくりには「ネットは広大ね」「いくのか?また」というお決まりのセリフがなんら脈絡なく展開され、なんのきっかけで少佐がどこに行こうとして、バトーが何を悟ったのかわからなかったです。これまでのシーンを踏襲することはシリーズを通して視聴してきた者としてはとても嬉しいのですが、納得感がないシーンの挿入では逆に興をそがれてしまいます。
もしかすると、少佐はシマムラタカシのプラグを抜くことなく、誰もが摩擦のない世界を維持したのかもしれず、その世界からは自分は抜けるということかもしれませんし、抜いてしまったのかもしれない。という考察を余地を残したかったのかもしれませんが、その考察にいたる以前に展開が自体が乱暴に感じ考察にふける楽しみの余地がないように感じました。

全体としてポストヒューマン側の矜持やカリスマ性の描写が薄く、そこに関わる公安9課がただただ状況に流されとくに活躍しない様子、ひたすら乱暴な手段で証拠を隠蔽してくる米帝という構図が落ちまで続きストーリー全体を小さくし、カタルシスのない物語になっているように感じました。
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