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ふしぎの海のナディアのKuutaのレビュー・感想・評価

ふしぎの海のナディア(1990年製作のアニメ)
4.0
ナディア全話見返すという変な方向にテンションが高まっています。

・庵野ユニバースはエッフェル塔に始まりエッフェル塔に終わる。第1話は混乱する世界の「止め絵」で始まった。

・火や電力、灯りが人間文明の象徴であり「太陽が人の営みを見守っている」構図が頻発する。発電所や電線、煙突の描写。「科学は知恵の実を食べた人類の罪」。ノーチラス号には「普通より明るいライト」がある。「南の島が暑い」「冷房で涼しい」といった、科学と自然がせめぎ合う温度描写。

→「太陽と青い海」を舞台とするナディアが、赤いUFOと戦う話。対照的に見える「月と赤い海」のエヴァも、結局は赤と青の陣地合戦に収束していっている。

・繰り返される「火」への言及は「ナディアの黒人設定」とリンクしているのだろう。彼女が故郷のアフリカを訪ねる32、33話は、人類の進化の起源を辿るストーリー上、本来は必要だったのかもしれない。

→ただ、監督の判断で黒人問題の描写を避けたこともあり、完全に浮いている。クオリティ維持のための「公式捨て回」としては23〜30話の「島編」が有名だが、本当の意味で捨て回になっているのはこの「アフリカ編」だ。

(「島編」は全てを失い、リセットされた世界の浜辺で倒れる男女が、連帯を取り戻していく話。ギャグに寄りすぎているきらいはあるが、アフリカ編よりは意味があると思う)

・科学を信奉し、電力で神になろうとするネオアトランティスはネルフの前身?バベルの塔を復活させる場面はモロにヤシマ作戦。ノーチラス号がその攻撃を「電源オフ」で乗り切る対比構造。

・落下と上昇を物語の原動力にする。崖、エレベーター、飛行機。海に沈む潜水艦と空を飛ぶ宇宙戦艦。飛べなかった飛行機の残骸は十字架となって地面に突き刺さる。ナディアはブルーウォーターの力で身のこなしが軽い。南極基地の地下深くに眠る白鯨の、ターミナルドグマ感。

・トラウマものの15話。犠牲になる乗組員の名前は「フェイト」。彼の「壊れたものは直せばいい」発言はカヲルくんのようだった。彼の「命は治せない」もラストの伏線に。

・ジャン、ナディアが、周囲の大人の助けを借りて、死の痛みを受け入れ、それぞれ大人になっていく。ネモ船長に献身的な愛を注ぐ「仮想母」としてのグランディス、理性担当のハンソンと愛情でごり押すサンソンが、2人の教育役としてとても良い味を出している。

・ジャンは亡くなった父親のためではなく、ナディアのために空を飛ぶという、新しい目標を見つけていく。マリーを寝かせるための「ママのキス」を覚えたナディアは、ジャンに対しても別れのキスをしてみせる(少女に母性背負わせすぎ問題)。彼女は死に対してとても敏感だったが、中盤で花を摘み、墓に供えられるようになる。

・庵野監督の投影として、ナディアは魚も肉も食べずスナックでエネルギー補給する。ただ、ピンチになっても魚や鳥(自然)は助けにこない。ナウシカのアンチテーゼ?

・35話。「ずっと1人で生きてきた」ナディアは、自身の出自を知り、自己嫌悪、自己否定のループに陥る。だがジャンは「自分のこと嫌い嫌いっていうけど、僕は君のこと好きだよ」と声を掛ける。泣ける。自信を取り戻したナディアは周囲から「おめでとう」「ハッピーバースデー」と祝福を受ける。TV版エヴァ最終話であり、「生きる」でもある。

・最終39話。機械の理屈を超えたネオ皇帝のラストはエヴァの暴走。ナディアによる父、母との訣別と魂の継承に、父殺しの達成と要素がてんこ盛り。腕を押さえるネモ船長の姿はシンエヴァ予告のミサトと同じ。

・「娘のように愛していた」エレクトラを妊娠させるネモ船長、ヒロイックだけどゲンドウ的な気持ち悪さが残る。
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