白陵大付属柊学園3年生の鳴海孝之には、平慎二と速瀬水月という2人の親友がいた。そんな彼らの輪の中に、水月の親友で控えめな少女・涼宮遙が入ってきた。ある日、孝之は学校の裏の丘に水月に呼び出されるが、そこに待っていたのは遙だった。そして孝之はいきなり遙に「好きです」と告白されてしまう。
カップルになった孝之と遙は、デートを重ね、蜜月状態。日々毎日、ただ2人で同じ時間を過ごすことにさえ、喜びを見つけられる2人。孝之にとって、それはこれまで味わったことの無い幸福だった。孝之と遙…。2人はこの時がいつまでも続くと信じていた。
高校を卒業した孝之は、ファミリーレストラン「すかいてんぷる」でアルバイトの日々を送っている。大学には進学していない。バイト先では、傍若無人な「大空寺あゆ」、天然ボケな「玉野まゆ」、高倉健と見紛うばかりの「崎山健三」店長らに囲まれ、ドタバタとした毎日を楽しんでいる。
遙は何も答えない。実は3年前の事故以来、遙は昏睡状態のままだった。一方の孝之と水月は茜と出会って以来、どこか落ち着かない。今は恋人同士の2人でも、遙のことはずっと深い影を落としているのだった。
孝之は大学進学をやめ、卒業式に出ることもなく、部屋に引きこもるようになった。水月はそんな孝之を心配するあまり、水泳を断念。普通のOLとなってしまっていた。涼宮茜は水月を「人生の先輩」と慕い、姉の遙の代わりに半死人同然の孝之を支えてくれていることに深く感謝していた。
遙、茜…孝之との生活と引き換えに失ったものを思い、気持ちを沈ませる水月。一方の遙は、3年が経ったことも知らず、孝之が見舞いに来てくれることを待ち望んでいる日々。そんな姉に真実を告げることも出来ず、悩む茜…。
互いに自分たちの関係に不安を感じ始めている孝之と水月。それぞれにバイトや仕事に取り組むも、心ここにあらずといった日々。必死に「大丈夫」と言い聞かせながら、今を守ろうとすればするほど、不安が膨らんでいく。一方の遙は何も知らず、見舞いに来てくれる孝之の顔を見ては、無邪気に喜んでいた。
孝之の部屋で一緒に暮らし始めた水月。2人分の食事を作る日々は充実しているが、どこか虚しさを禁じえない。それは孝之の心が遙に傾きつつあることを知っているからだった。一方の遙は、孝之と共に過ごす時間をひたすら純粋に喜んでいるが…。
孝之は水月との関係、遙との関係、何もかもが重荷となりつつあった。水月もまた、修復できない孝之との関係に疲れ果て、涙に濡れる日々がつづく。どうして、こんなことになってしまったのだろう……。笑顔にあふれていたあの日は……もう、2度と戻らないのか…。
徐々に記憶を取り戻しつつある遙は、自分の置かれた『今』に疑いを抱き始めていた。やがて……全てが明らかになる日が来る。そのことを素直に喜べないばかりか、不安が大きくなるのを孝之は抑えられなかった。
自分を蔑み、自分を責め、もう孝之のもとへは帰れないと泣き崩れる水月。彼女はもはや、自分の居場所を見失っていた……。
久しぶりに孝之の部屋に戻ってきた水月が見たものは、高熱に倒れた孝之だった。これまで破局寸前の2人だったが、甲斐甲斐しく看病する水月の姿に、孝之は水月の存在をありがたく感じはじめていた。今ならまたあの頃に戻れるかもしれないと……。
遙の覚醒を知らされた孝之は、病院を訪れる。3年間の空白を埋めようとする遙の最大の関心事は、孝之が今、別の誰かと付き合っているかどうかだった。
ついに遙に全てを話すことを決意した孝之は、2人で海岸へと向かう。