ドイツの名門病院に勤務する天才日本人脳外科医天馬賢三。彼の元へ頭に銃弾を撃ち込まれた少年が運び込まれてくる。少年の養父母は何者かによって殺害され、一緒に病院に運び込まれた双子の妹は無傷ながらショック状態。少女はうわ言の様に呟く——ころして。
人を巧みに操り殺人を繰り返す"モンスター"を脳外科医の主人公天馬賢三が追うサイコサスペンス。サスペンスアニメでこれほどまでに重厚なストーリーのものを観たのは初めてで感動した。関わった人間が次々と死んでいく危険人物を追うストーリーということで、アニメの括りで言えば『バビロン』が思い出されるが、あの作品に匹敵するレベルの非常に凶悪なアニメだった。『バビロン』同様恐怖を煽る演出が多く、サスペンスではあるがホラーにも片足を突っ込んでいる作品である。
74話とハイボリュームなだけあってとにかくこのジャンルの良いところが余すところなく詰まっており、サイコサスペンスを主軸にポリティカルスリラーやフィルムノワールの要素などもあり、非常に贅沢な内容になっている。サスペンスとしては道草を食うような回が多いがそれもまた物語の良い緩急になっており、道草回の多さを感じさせないレベルでテンポ良く人が死にまくるため退屈しない。
また、展開やキャラクターなど海外の映画やドラマからの影響を随所に感じるので洋画好きにはより一層楽しめる内容になっている。作中で「赤ん坊」の通称で呼ばれているキャラクターがカルトドラマ『ツイン・ピークス』に出てくる小人のわかりやすいオマージュキャラクターで、ツイン・ピークスが大好きな僕は個人的に登場時にはかなりの衝撃を受けた。また、主人公天馬の元フィアンセであるエヴァなんかはフィルムノワールによく出てくる女性キャラクターの特徴を踏襲しており、高飛車で高慢な、しかし時折見せる純真さがどこか憎めないキャラクターでとても魅力的。このように海外ウケが良さそうなこともあってギレルモ・デル・トロがHBO系列でTVドラマ化を企画中らしく、とても待ち遠しい。