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∀ガンダムのTenKasSのレビュー・感想・評価

∀ガンダム(1999年製作のアニメ)
5.0
再見。何となく見始めたら止まらなくなって全部観てしまった。危険すぎる。

異人種への差別意識や独りよがりな歴史認識、他人を打ち負かしたい闘争本能の問題といった人類史上、不変の問題を扱いつつ、数千年後を設定とした世界を描きながら、「核兵器」を登場させることで、ガンダム史を統合する以前に現実世界ともばっちり接続してしまうのはやはり凄い。
それを可能にしているのは、人間が生きているということをしっかり描いているからだろうと思う。人はご飯を食べなければ死んでしまうし、愚かで考えなしに行動してとんでもない結果を招き、互いに影響し合い妬みあい、殺し合いをする。そしてその為に道具を作る。しかしその反面愛し合うこともすれば、互いを理解することもでき、道具の使い方を考えることもできる。
両陣営に商売をするパン屋だとか、受け継いだ土地を守りたい農家だとか、補給が枯渇して技術者が流出するとか、人は生きているから汚れ物が出るだとか…一つ一つのエピソードの良さがその普遍さを強力にささえている。

言うまでもなく菅野よう子の音楽は素晴らしいを乗り越えて凄まじく、毎話多少強引な戦闘描写を音楽の凄まじさだけで帳消しにしてしまうくらい。
寄りになるとやけに書き込まれたメカデザインの良さは勿論、自分が一番感動するのは、ウォドムの腰より上が揺れない歩き方だったり、ターンAの頭がぐるぐる回ったり、ターンXが分裂するところだったりする。シド・ミードデザインは現実的に理に適ったデザインとしてガンダムを翻案しているのだろうが、今までと一線を画しているところから、人知の及ばない謎のマシンとしての不気味な表情に結果的になっていてとても好き。それに「髭のある」「股間に筒状のコクピットのついた」「迫害の象徴」たる兵器の使い方をどうするか…なんて出来過ぎなくらいだと思う。

とりあえずソシエの無鉄砲さと何かあると割と急にシュンとするところのギャップに幸せを願わずにいられないので、観終わるといつもがんばれソシエ…と思っているし、ディアナさまの指輪は「普通に生きて死ぬ」を願った結果の一つだと解釈してる。みんな幸せになって…。
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