福野ふくろー

妄想代理人の福野ふくろーのレビュー・感想・評価

妄想代理人(2004年製作のアニメ)
4.4
オカルト的人気を誇る今敏監督によるアニメ。
今敏映画はほとんど観たことあったけど、個人的には芸術性が高すぎてあまり肌には合わない印象。でも、印象は深く残り、もう一回見ようかな、と二郎ラーメン的に癖になってしまい離れなくなる。今回は、友人に勧められ鑑賞。

1話完結のオムニバスだが、全てが繋がっている形のアニメ。序盤からずっと不穏で、夢に出てきそうなくらい、腹の底からくる闇の怖さのようなものがずっと滲み出ている。

精神的な病を想起させるそれぞれの話は、黒いものを心にじわじわ染み込ませてくる。だけどだからか、どんどん目が離せなくなる。

特に、3話の二重人格の女性の話から、釘付けになる。その後の話へ、どうなるんだ?どうなるんだ?と次へ次へ見たくなる。でも話自体は、変に余裕のある態度で進んでいくので、そこも気持ち悪い。スピーディーにこちらを導いてくれない。じわじわじわじわ犯してくる。本当に気持ち悪い。でもそれが今敏監督らしさというのか、ぐいぐい惹きつけられてしまう。

「自分の居場所がない、この世界が俺の居場所なんだ…!」

このセリフに辿り着くための全てだったのか。(自分のオールタイムベスト映画のひとつ、湯浅監督「MIND GAME」のメッセージと似ていて熱くなった。)アニメ13話という映画よりも多くの時間を使うことにより、今敏監督の人間味が少しだけ見えたような気がした。でもそれすら、今敏監督の手のひらの上で、そういうことではないのかもしれない。
最後まで見てもスッキリはせず、頭の中があらゆるシーンで渦巻いたまま終わる。ほんと気持ち悪いけど、観た後は充足感と達成感がある。また見返すと思う。

あと、エンディング狂ってる。
こんな気持ち悪くて裏怖いアニメなのに、エンディングは登場人物の気持ちよさそうな寝顔をひたすら映している。気味が悪すぎるって!!こわいよ!!

福野ふくろーさんの鑑賞したアニメ