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ガンダム Gのレコンギスタのykobのレビュー・感想・評価

ガンダム Gのレコンギスタ(2014年製作のアニメ)
5.0
富野ガンダムは各作品ごと主人公の正確にその時代ごとの性質がよく投影されており、根暗でコンピュータヲタクのアムロ、キレやすいカミーユ、貧困ヤンキーなジュドー、スペシャルなウッソと、その性格と彼らが巻き込まれる展開を追っていくことが出来る点がユニークなのだと思う。

今作の主人公であるベルリは、家柄も能力もスペシャルで気性は素直でポジティブ、絵に書いたような正統派エリートの体をなしている。作品を見て「感情移入」をしたがる類の視聴者には不適切な対象かもしれないが、貧富と教養の格差が拡張し続けている現代においてはふさわしい象徴であるとも思える。

ガンダムという作品はこれまで基本的に「主人公が時代に翻弄され、それを乗り越えていく」作品だったので、今作冒頭に宇宙海賊にさらわれて以降なし崩し的に彼らに協力するようになっていくベルリの状況も別段おかしなことではないと思われるけれど、物語にとにかく辻褄を求めたがる人にはこの展開はやはり不向きだなと感じる。

そのような作品の特徴から苦手意識を持つ人がいることも理解できる。私にとっては前情報から期待をしていたし、リアルタイムで全話視聴して期待どおりのクオリティだったが、アニメの視聴者に対して制作陣が期待を寄せすぎた結果なのではないかとも思う。現実の社会や政治の情勢、人間の性質を表現するためのメタファーとしての役割をアニメに背負わせて許される時代は2000年代に終わったんだろう。

リアルロボットというジャンルを生み出したガンダムだが、今作は展開からすると非常に古臭いスーパーロボットのそれに似ている。ほとんど毎話新しいロボットが登場するし、Gセルフは拡張パックをとっかえひっかえして常に最強の振る舞いで敵をなぎ倒していく。ガンダム作品で敢えて昭和ロボットアニメのような玩具PRのような展開をしてみせるのも翻って愉快だなと思う。
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