シガーandシュガー

学園戦記ムリョウのシガーandシュガーのレビュー・感想・評価

学園戦記ムリョウ(2001年製作のアニメ)
-
私の中で「不思議な少年」モノの位置づけにある作品。
ワケアリの地域、神奈川県天網町に引っ越してきた村田始少年が主人公で、さらに遅れて転校してきた不思議な少年・統原無量が登場することで物語はサクサクとSF世界に入っていく。
天網町の秘密や、宇宙人と戦う「シングウ」となる子どもたち、町になじんでいる友好的宇宙人たちなどなど、それほどもったいぶらずに世界を開陳してくれるのでストレスがない。キャラクターにも強すぎるアクがないところもストレスがない。
この作品を安定させているのは主人公の村田少年。シングウを中心に不思議な力を持つ子どもたちがいる中で、特殊能力を持たないかわりに安定した揺るぎない心を終始一貫もっていてくれることで、見ているこちらも軸が持てておだやかに見続けられる。
子供が戦わなくてはならないことは悲劇のはずだけれど、この世界では「大切なものを守るため」の戦いはあっても、自分に与えられた役割についての戦いはなく、大切なものを守ろうと皆が自然と一丸となれる世界に大人も子供もない。地球人も宇宙人もない。そこがとても魅力的だと思う。
シングウの正体が明かされるラストのほうは、もう何話か費やして描いてほしかったようにも思うけれど、このあっさり感も天網町らしいのかな。
何よりもよかったのは、物語が終わったあとも、無量がそのまま町にとどまること。
不思議な少年は、物語の終わりとともに消えていくものだけれど、無量は残り、無量と、彼が思い出させる事件すべてを、町と人々は受け入れていく終わり方はとても良かった。

個人的には、結婚して第一子をもった頃に放映されていたアニメで、スマホもなく閉塞感いっぱいの生活の中でとても癒やしだった作品。強くありたい、優しくありたいと思わせてくれた作品だったし、仲間が欲しくてとても羨ましかった記憶がある。

二十年以上経った今、あらためて全話通して鑑賞してみて、当時はとてもリズムよく心地よく感じていたはずなのに、今回は作品と自分の呼吸の速さみたいなものが異なって感じられて、時代がそれだけ流れていったんだなあと寂しく思った。
でも相変わらず無量くんは素敵だったし、村田少年は憧れだった。
たぶんこれからも好きだし、また見返す作品。