ウサミ

鬼滅の刃のウサミのレビュー・感想・評価

鬼滅の刃(2019年製作のアニメ)
2.5
世間を席巻した大人気作品。

映画化の興行もすこぶる好調、歴史に残る名作と名高い。
あれよこれよという間に、日本で一番売れた映画となった。

いままでアニメの類にはほっとんど触れてこなかったのでスルーしてたけれど、これだけ話題になれば興味が湧いたし、是非とも劇場で映画を観たいなと思ったため、Amazon prime でイッキ観!

うーん!

少年マンガは好き。今は読まなくなったけど、NARUTOもONE PIECEも読んでたし、BLEACHやHUNTER×HUNTERなんかも通ってきた。
アツいのも、シックなのも、「少年マンガ」の王道として、人並みには触れて来たつもり。
これだけヒットした作品となると、それら過去の名作と比べずにはいられないし、今まで読んだ漫画とは一線を画した魅力を求めてしまう。そこにスマッシュヒットの要因を探そうとする姿勢ゆえか、正直この作品の魅力を探すのに大きな時間がかかった。

この作品のヒットは、時代の風潮、サブスクリプションの流行などが噛み合った結果、一大センセーショナルが生まれて起きたと考えられる。
まず、その観点が必要かなと思った。
作品に対してあまり構え過ぎる、過度にハードルを上げるのは本作の鑑賞の姿勢としては適切じゃない。

そもそも、アニメの類を観ない僕がわざわざ観て、あーだこーだ言うというのも違うのかなと思うんですが。
本作が好きな人もたくさん居るし、それはこの作品が持つ魅力あってのことだとは思います。
が、僕にとって本作は、好きな作品にはなりませんでした。

まず感じたのは、有無を言わずに、アクションと少年マンガ的展開で楽しませてくれる、という訳には行かないのから、全体的に妙にじれったい。
もちろんアニメーションのクオリティはとんでもないし、戦闘シーンの迫力は息を飲む。3Dと2Dを折衷したような映像には、思わず目が奪われることもしばしば。
とはいえ、アクションの迫力で走りきる少年バトル!!とも行かない。

作品の舞台である古風な日本を強調した、お洒落な演出やキャラクターデザイン、叙情的な展開は好み。
しかし、今作は、それらが奥行きのあるドラマを生んでいるとは感じにくい。
敵が現れてはそれを倒し、成長しながら目的を果たすべく進むという少年漫画の王道をひた走るでも無い脚本の中に、心が奪われて強く惹かれるような奥深いドラマは特に無かった。

脚本やドラマの面白さや奥深さの薄さもさることながら、キャラクターに感情移入したりカリスマ性に惚れたり、が特にないので、イマイチ作品に対する情熱が向けられず、宙ぶらりんの状態が続いた。

炭治郎は「優しさ」が軸のキャラクターだと思うけど、キャラクター像としては、非常に曖昧で、作品的に「都合の良さ」を感じる。
「優しい人」とまず言われる男がモテないように、「優しい」は割と「都合いい」にとどまりがちなのでは。
鬼を「人間」として許容する優しさ、みたいなのが描かれているんだけど、妹を守るために「鬼を狩る」立場に回らなくてはならない、という葛藤があまり見えなかったのが残念だったな。

妹を絶対守る!でも、敵も可哀想な面もある… それを許す理由は、優しいから!
っていう都合の良さが、もったいなく感じたな。

結局曖昧な優しさ、があるだけで、あまり彼の信念みたいなのが見えないから、主人公の軸が分からない。
妹を守ることが全てなのか、鬼を狩り尽くしたいのか、人間を守りたいのか、とか、イマイチ真っ直ぐに彼の目的が見えてこなかったかな。モノローグは葛藤や心理描写より戦況の説明ばっかりで、うるさい。うるさいだけで、言葉を使わなくては説明しきれない感覚を視聴者に伝える、という役割を全く果たせていない。

脚本の中で現れたキャラクターたちに説得されるばかりで、イマイチ炭治郎の顔が見えなかったのが残念だった。
彼の感情の変遷が、観客である僕とリンクしないから、話を追うのが退屈に感じた。

個人的には、最初の方は結構ワクワクした。
鬼に家族が殺されるシーンを目撃していないから、実は家族を殺したのはネズコなのかなとか。その事実と対峙したときにネズコを斬れるのか?とか。
最初の敵は、鬼と化した家族なのかな、とか。
助けてくれた富岡義勇に刃を向けたのも、戦うために残酷になれる芯や強さを感じたし。
その辺の要素は深読みに過ぎず、奥深いドラマになりそうな点が、フワフワ〜っと「優しさ」という曖昧な言葉でボヤけた印象。

だからこそ、善逸や伊之助が出てきたあたりから面白い!みたいな評判をちょこちょこ耳にするのかなあ、と思った。
全体的にキャラクターはアクが強く個性が前に出ているため、わかりやすい。この辺りは、さすがは少年漫画と言ったところ。
イマイチ輪郭の薄い単次郎というキャラより、シンボル的にわかりやすいキャラが出ると人気が出るのはうなずけた。

また、キャラクターの問題として、敵味方問わず、キャラクターに興味深さがなく、それを「壮絶な過去」みたいなので埋めるのは少しスマートでは無いと感じた。

なぜ、富岡義勇は炭治郎に手を差し伸べるのか?
なぜ、鱗滝は修行をつけたのか?
とか。
現在の時間における精神的交流が描かれず、とにかく「過去が…」が多い。これは個人的に好みではなかった。
きっと悲しい過去があるに違いない!
と、後付けの説明を待つのは退屈だ。

さらに、どんな悪役、端役に至るまで、またしても「過去が…」みたいな展開。どんなものにだって事情はあるし、そりゃあ壮絶な過去的なのを引っ張り出せばドラマチックになるだろうけれど、結局はその瞬間の闘いなのだから、これを後付けで説明するのは後味が悪い。

敵が現れる⇒すげえ残酷なやつ⇒なんとか倒す⇒でもコイツにも可哀想な過去が…
の繰り返し。魅力のない敵の過去とかどうでもいい。

因縁を飲み込んだ上で各々の正義の下戦う、みたいなのが作品のテーマなんじゃないのかな?ならば、過去よりも現在のドラマを厚くして欲しかった。

特に楽しい部分も好きな部分も見つけられず、なんとか26話を観た。
最後の5話くらいはもはやよくわからなかった。最後の5話クイズとか出されてもまったく分からないだろう。

と、つらつらと文句を言った作品の劇場版は空前の大ヒットを飛ばした。
もちろん、映画版も観るつもりは大有り。
ミーハー的ヒットを馬鹿にしてやろうという不遜な態度で映像館に行ったぼくは、人生で3番目くらいに映画館で泣くこととなるのでした。
ウサミ

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