鹿山

リラックマとカオルさんの鹿山のレビュー・感想・評価

リラックマとカオルさん(2019年製作のアニメ)
4.3
シンプルにかわいい子供向けアニメかと思いきや、かつてのリラックマファン(20~30代)をメインターゲットにした「労働」と「家庭」の話で驚愕。鑑賞者を安直に「ごゆるり」させるのではなく、「ごゆるり」の意義を今一度全員に問いただす一筋縄ではいかぬ内容だ。息苦しい現実を直視させるからこそ、リラックマという存在の崇高さが一層際立つ。

主人公カオルさん(独身OLでリラックマたちの扶養者)が適度に優しく、適度にイヤなヤツなのが良い。リラックマたちを暖かく受け入れてくれる聖人かと思いきや、時折愚痴や浪費が抑えられなって暴走をはじめたり。人間誰しもが抱えている問題をそれぞれ補い合うのが「もちつもたれつ」ですよね。

劇伴:岸田 繁(くるり)も素晴らしい。クラシック~ポストロック~ジャーマンロック~アンビエントを横断しつつのほほんとした空間を丁寧に演出するが、その一方で何処か引っかかるような余韻を残していく。現実と理想の間で絶えず揺れ動く本作には実にピッタリ。
くるりに関しては『ワルツを踊れ Tanz Walzer』『THE PIER』『天才の愛』に感銘を受けつつも何となく距離があったのだけど、本作を通して心の距離がググッと縮まった想いだ。
鹿山

鹿山