もとまち

機動戦士Vガンダムのもとまちのレビュー・感想・評価

機動戦士Vガンダム(1993年製作のアニメ)
4.5
死と絶望に彩られた世界で、それでも生を掴み取ろうと必死にもがく若者たちの姿を力強く描いた名作。鬱アニメだ鬱アニメだとよく騒がれてはいるが、イデオンやダンバインで描かれた圧倒的なまでの「死」への誘いはここには無く、むしろ根本にあるのは後の『ブレンパワード』や『∀ガンダム』へと繋がる「生」に向けての深い祈りである。どこまでも続く闇の中で、一縷の希望を追い求める若者たちの存在こそが、実は希望そのものなのだというメッセージが素晴らしい。しかしその反面、厭な拷問シーンやギロチン処刑など明らかに作り手の「病み」を感じるシーンもかなり出てくる。新キャラはどんどん死んでいくし、その死に様も直接的には描かれないが惨いものばかり。富野の鬱病ぶりがひしひしと感じられる。それが特に印象深く反映されていたのが最終回のラストで、富野が本作を「失敗」と語っている理由はここへ集約されていると思う。つまり彼は自らが提示した希望を肯定することが出来なかったのだ。内容としてはバッドエンドでは無く、むしろハッピーだと思うのだが、何とも拭いきれない哀しみと絶望に満ちている。カテジナが辿る顛末、シャクティの涙、墓石のように立ち並ぶVガンダムの死骸。そこはかとなく漂う陰鬱さが独特の余韻を残し、シリーズ中でも随一で好きな終わり方である。エヴァ同様、作り手の自己矛盾を内包した作品は面白い。
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