中学三年生の夕城美朱(ゆうきみあか)と本郷唯(ほんごうゆい)は、ある日、図書館で一冊の古い書物を見つける。その本・四神天地書(しじんてんちしょ)を手にした美朱と唯は、突如紅い光に包まれたかと思うと、本の中へと吸い込まれてしまった。異世界へと迷い込んでしまった2人は暴漢に襲われる。そんな二人の前に現れたのは、額に鬼の文字を持つ少年・鬼宿(たまほめ)。鬼宿は暴漢どもを華麗に倒していく。彼に救われる美朱と唯だが、その直後、不思議なことに唯だけが再び紅い光に包まれ、美朱は一人本の世界に取り残されてしまう……
唯が元の世界へ戻ったことを知らない美朱は、再び暴漢に騙され襲われそうになるのだが、またもや鬼宿に助けられる。美朱は鬼宿に唯を探す協力を求めるのだが、お金を持っていない美朱に鬼宿は手を貸す気はない。何としても力を貸してほしい美朱は、ちょうどそこを通りがかった皇帝の行幸の列に、冠の飾り物をもらえないか声をかけるのだが、無礼を働いたとして美朱は衛兵たちに殺されそうになってしまう。しかしすんでのところを鬼宿に救われる。美朱の想いを知った鬼宿はしぶしぶながらも美朱に力を貸すことに。その瞬間、美朱の体が紅い光に包まれ……
朱雀の巫女となった美朱だが、元の世界へ帰りたいという気持ちが夢となり現れた。美朱を心配する鬼宿は、朱雀の力ならば元の世界へ戻ることもできるのではないかと提案をする。帰る方法が見つかった美朱は、四神天地書を手掛かりに朱雀七星士を探すことに。自ら七星士と名乗り出た鬼宿と星宿(ほとほり)を除くと残りは五人。早速文武に優れた者たちを集め七星士を探すのだが、なかなか見つからない。それどころか、美朱が彼らを怒らせてしまった。追われる美朱は近くの建物に逃げ込むのだが、建物は崩れ、助けに入った鬼宿共々瓦礫の下敷きに。その時、一人の女性が次々に瓦礫を持ちあげ二人を助け出す。彼女の正体とは……
七星士である柳宿(ぬりこ)と仲良くなろうと奮闘する美朱。しかし、当の柳宿にはまったくその気がない。そんな時、美朱は一人思い悩む柳宿を見つける。訳を聞いてみれば、母の形見である耳飾りを池のほとりを散歩中に落としてしまったという。美朱は柳宿の為に夜の池に耳飾りを探しにむかうのだが、探している間に誤って池に落ちてしまった。一方、美朱の異変を察知した鬼宿は、柳宿が美朱に嘘をついたことを知る。彼女は耳飾りなど失くしていなかったのだ。想いを寄せる星宿に大切に想われる美朱に嫉妬し、嫌がらせを繰り返していた柳宿の気持ちを知った美朱は、彼女の想いに協力することを約束するのだが……
鬼宿の心を知ろうと自分の気持ちを告白する美朱。しかし、鬼宿がその想いに応えることはなかった。それがきっかけとなったのか、なれない世界での生活に心身ともに弱っていた美朱は熱に倒れてしまう。熱にうなされながら母と兄を呼ぶ美朱の姿に、星宿は彼女を一度元の世界へ帰す決心をする。美朱を元の世界へ帰すべく、巫女と七星士だけの旅が始まった。旅の途中、気まずい雰囲気の美朱と鬼宿を見かねた柳宿の計らいにより、鬼宿の本当の気持ちを知ることが出来た美朱だったのだが、些細なことから森の中で鬼宿たちとはぐれてしまい……
森の中で美朱が迷い込んでしまった世界。そこには鏡に映ったもう一人の自分がいた。美朱の影は鏡の中に本物の美朱を閉じ込め、美朱に成り替わろうとしていたのであった。まったく同じ姿だが真逆の性格をしている影に戸惑う一行だが、その違和感にすぐに気付く。正体を見破られた影は、一転して鬼宿たちに襲いかかってきた。自身の影によって傷ついていく鬼宿たちを鏡の中から見ていた美朱は、影の言葉を思い出す。影がもう一人の自身だというのならば、自分が消えれば……。皆を助けるため、美朱は自ら割れた皿の破片を胸に突きたてる……
美朱と七星士が互いを想い命を賭けたとき、彼らの前に太一君(たいいつくん)が現れた。鬼宿たちの前に現れた美朱の影は太一君が与えた試練であり、彼らのいるその場所こそが大極山(だいきょくざん)だったのである。大極山に招かれた一行は、それぞれ傷の手当てを受ける。しかし、美朱の怪我は自身が思うよりも重く、このままでは元の世界へ帰ることが出来ない。そんなとき、鬼宿と星宿は、自らの血を美朱の為に使ってくれと太一君に頼みこむのであった。
太一君と朱雀七星士の力により元の世界に戻ることができた美朱。だがそこには自分を必死に呼び戻してくれた唯の姿がない。一度家へと戻った美朱は本の世界であった全ての出来事を兄・奎介(けいすけ)に話す。奎介は二度とその本に近づくなと忠告するが、本の中に残してきた鬼宿たちの事が気にかかってしまう美朱。そしていまだに行方が知れない唯の事も。唯を探すべく再び四神天地書の世界へ戻る決意する美朱。だが、現実世界とは時間の流れる速さが違い、再び本の世界へ戻った時には、すでに三カ月という時がすぎていたのであった。
鬼宿との再会の喜びもつかの間、美朱は何者かに連れさられてしまう。美朱をさらった人物は、彼女が倶東国(くとうこく)に狙われているという忠告を残して消えてしまった。一方、その場に残された柳宿と村人たち。だが、村人たちは美朱を狙った矢により殺されてしまう。やはり朱雀の巫女である美朱は倶東国に狙われているようだった。次の朝、早くにどこかへ出かけていく鬼宿を見つけた美朱は、柳宿と共に後をつけることに。どうやら鬼宿は彼の故郷へ戻ってきたようだった。そこでは父と幼い兄弟たちが鬼宿の帰りをまっていた。
倶東国が青龍の巫女を探しているという噂を聞いた美朱。唯が青龍の巫女にされてしまう前に見つけ出すために、美朱はたった一人で倶東国へ向かう。それは、朱雀の巫女である自分と共にいることで、鬼宿に迷惑がかかることを避けての行動であった。その頃鬼宿は、美朱が倶東国へ向かったことに気づき、急ぎ後を追う。互いに離れ離れになっていた三カ月の間に、鬼宿は美朱に対する自分の気持ちに気がついたのだ。一方、やっとの思いで倶東国にやってきた美朱。彼女はそこで自らを青龍の巫女と偽り、宮殿へ招かれることとなる……
唯との再会の喜びも束の間、朱雀の巫女であることがばれてしまった美朱は、唯と共にその場から逃げ出す。ひとまず宮殿内の一室に身を隠した二人は、美朱を追いかけて宮殿までやってきた鬼宿とも再会を果たす。一緒に紅南国に帰るために、美朱と鬼宿に代わり、唯は朱雀の四神天地書を取り返すのだが、戻ってきた彼女が見たものは互いを想いあう美朱と鬼宿の姿。二人の姿を目にした唯の頭に、青龍七星士・心宿(なかご)の言葉と美朱の言葉がよぎる。そして唯は、紅南国(こうなんこく)へ戻る前に美朱を青龍廟へと案内し……
青龍の巫女となる決意を固めた唯を残し、深手を負った美朱と鬼宿を井宿(ちちり)は大極山へ連れもどる。傷は癒えた美朱だが、唯が自分を憎む理由が判らない。自分が現実世界へ戻っていた三カ月の間に、唯に何が起こったのか……。再び唯に会うために倶東国へ戻ろうとする美朱に、太一君は世界の全てを記録している鏡を見せる。そこには三カ月前、倶東国を訪れた唯の事も記録されていた。現実世界へ戻っている間、唯が自身を呼び続けていたことを知った美朱は、答えることのできなかった自身を責める。
朱雀の巫女として新たな決意を固める美朱は、鬼宿への気持ちを忘れようとする。しかし、鬼宿が自身に向ける想いの深さを知り、美朱もその想いに応えるようとするのであった。時を同じくして、倶東国は紅南国への進軍を開始する。すでにいくつかの村が襲われているのだが、倶東国へ鬼宿を献上するならば、これ以上の進軍を止めるという。紅南国を守るために、鬼宿は美朱に手紙を残して倶東国へ向かうのだった。
太一君より授かった鏡を手掛かりに七星士を探す美朱たち。山という文字を手掛かりに厲閣山(れいかくざん)へ向かうのだが、不意をつかれた一行は山賊に捕らえられてしまった。この山賊の中に朱雀七星士がいるかもしれない……。手掛かりをつかむべく美朱は自ら山賊の頭・睿俔(えいけん)の元へと向かうのだが、七星士の情報を教える代わりにと襲われそうになる。駆け付けた星宿と柳宿により、やっとの思いで体に字を持つ翼宿(たすき)という人がいることを聞き出した美朱だが……
朱雀七星士・翼宿がすでに亡くなっている先代の頭のことだと知った美朱たち。朱雀七星士のうち一人でも欠けてしまっては朱雀は現れない。打つ手はないかと思われたのだが、死んだ人間を生き返らせる事のできる人がいるという噂を聞いた美朱たちは、わずかな望みにかけて張宏(ちょうこう)の都に向かう。そこでは妖怪・疾很鬼(しっこんき)の仕業と思われる原因不明の不治の病がはやっていた。
疾很鬼の病に倒れる美朱。少華(しょうか)は美朱を助けるためには彼女を一度殺し、自らの力で蘇らせるほかないという。旅を続けるためにも、自ら殺してくれと星宿に頼む美朱。美朱の願いを叶えるために剣を構える星宿だったのだが、やはり美朱を手に掛けることはできない。なんとかして殺さずに美朱を助けたい星宿たちは、町外れに住む医者の妙寿安(みょうじゅあん)を訪ねるのだが、彼らはそこで意外な事実を知ることとなる。
七星士を探して旅を続ける美朱たちは、再び鬼宿の故郷を訪れることとなる。軫宿(みつかけ)の力により鬼宿の父の病気も治り、鬼宿の家族と共に一時の休息をとる美朱たち。その夜、どこからともなく響いてくる笛の音を辿り外へ出た美朱は、突如コウモリの大群に襲われてしまう。倶東国の刺客が美朱達を襲ってきたのだ。鬼宿の家族に迷惑をかけないために美朱は森の中へ逃げ込むのだが、数が多すぎるために翼宿たちの攻撃も効かず……
張宿(ちりこ)が見つかったことにより朱雀七星士が揃い、ついに朱雀を呼びだせるようになった美朱。鬼宿と四神天地書を取り返すべく倶東国に向かうため、井宿の術により鬼宿と再会の約束をする。一方、鬼宿がいなくなってしまうことを知った唯は、鬼宿を引きとめるために自らの想いを告白する。しかし、鬼宿がその想いに応えることはなく、帰ってきたのは拒絶の言葉。悲しむ唯に、鬼宿を自分のものにしたいのならばと、心宿は蠱毒(こどく)を渡す。
鬼宿との再会の場所に現れたのは、心宿と倶東国の兵を従えた唯であった。井宿と翼宿を何とか逃がすものの、唯の命により捕らえられてしまった美朱はかつての親友の変貌に戸惑う。牢番を騙しなんとか牢を抜け出した美朱は、場内をさまよううちに再び唯と対面することとなる。唯に自分の想いを伝える美朱だが、その言葉は彼女の心には届かない。そんな中、二人の前に捕まっているはずの鬼宿が姿を現す。
身も心も傷ついた美朱は鬼宿を信じて再び約束の場所へと向かう。だが、美朱の前に現れたのは、やはり彼女の知る鬼宿ではなかった。美朱に残した手紙を破り捨て、彼女を殺そうとする鬼宿。間一髪のところを井宿と翼宿に救われる美朱だが、再会を喜んでいた彼女を知る翼宿は鬼宿の仕打ちが許せない。とうとう朱雀七星士同士で戦いが始まってしまう。思うように戦うことの出来ない翼宿たちは井宿と張宿の力により倶東国から脱出するのだが……
井宿の術により紅南国へと戻った美朱たち。軫宿の術により体に受けた傷は癒えるも、心に受けた傷が癒えるはずもなく、鬼宿への想いが美朱を苦しめる。皆に心配をかけまいと気丈にふるまうものの、鬼宿への想いを断ち切ることができない美朱は、悲しみのあまり自分を見失い荒れ狂う川に自ら身を投じてしまう。意識を失い水底に沈んでいく美朱。そんな彼女を助けだしたのは星宿であった。ただひたむきに美朱だけを想い続けていた星宿。彼が自身へ向けるまっすぐな愛情に心揺れる美朱は……
心宿の術により心を操られ刺客となった鬼宿は、再び美朱の命を狙い紅南国へ現れる。星宿は美朱を守る為に鬼宿を迎え撃つのであった。このままでは必ずどちらかが死んでしまう……。二人の戦いを止めるために駆け付ける美朱だがわずかに遅く、激しい戦いの末に鬼宿は星宿の剣に倒れてしまった。重傷を負いながら、なおも美朱を殺そうとする鬼宿に、死んで欲しくない一心で自らの命さえ投げ出そうとする美朱。その時、二人に奇跡が起こる……
朱雀七星士がそろい、朱雀の四神天地書も取り戻した美朱たち。宮廷ではいよいよ朱雀召喚の儀式を行うための準備が始まった。唯や鬼宿とのことを考えながらも、星宿の想いにいまだ返事をしていないことに気づく美朱は、儀式を行う前に彼のもとを訪ねる。鬼宿を愛する美朱と、そんな彼女を思い続けた星宿。互いの心に整理をつけ、美朱たちは儀式へと望むのであった。一方で、唯のもとにも青龍七星士が集い、心宿の企みが動き出すのであった。
宮廷の朱雀廟にてついに朱雀召喚の儀式がはじまった。美朱の唱える祝詞と共に炎の中に四神天地書がなげこまれるのだが、なぜか何もおこらず、朱雀が現れる気配すらない。その時、朱雀廟に張宿の笛の音が響き渡り、不気味なその音色に頭を抱える美朱たち。美朱たちがこれまで張宿だと信じていた彼は、心宿により送りこまれた青龍七星士・亢宿(あみぼし)だったのだ。
亢宿から美朱たちを救ったのは本物の朱雀七星士・張宿であった。亢宿により朱雀召喚の儀は失敗に終わり、美朱たちは四神天地書も失ってしまう。朱雀を呼び出す事が出来なくなってしまったのだ。悔み自らを責める美朱に、太一君は北甲国(ほっかんこく)へ旅立つように告げる。玄武の国の神座宝(しんざほう)を手に入れることができれば、再び朱雀を召喚することができるというのだ……
北甲国への旅立ちを控え、柳宿と翼宿は美朱を誘い星見祭りへと繰り出す。わずかに与えられた休息を楽しむ三人。だが美朱は亢宿へ花を贈る為に、ひとり彼が消えた川へ……。一方鬼宿は、美朱のそっけない態度が腑に落ちず、理由を問うために美朱を追いかける。鬼宿の態度に、太一君との話を隠し通せないと悟った美朱は、全てを打ち明ける。
いよいよ北甲国への出発が近づく。家族を残して旅立つ鬼宿を気遣い、星宿は家族を都へ呼ぶように提案する。しかし、喜び家族の元へと向かう鬼宿を待ち受けていたのは、あまりにも悲しい出来事であった。荒らされた家の中、息絶える愛する家族たち。かすかに息のあった結蓮(ゆいれん)も、鬼宿の腕の中で命尽きる……。それは亢宿の双子の弟、青龍七星士・角宿(すぼし)の仕業だった。怒りと悲しみに我を忘れて暴れる鬼宿を、柳宿は体を張って止めるのだが……
朱雀と青龍。それぞれの巫女としての運命を背負う美朱と唯。互いの心はすれ違い、いつしか敵対していく。そして互いに強く惹かれていく美朱と鬼宿を待ち受ける過酷な運命とは……。第1章から第27章までを振り返る、第1節総集編。
神座宝を手に入れるため、北甲国へと向かう美朱たち。そんな彼女たちを兄・奎介は本の向こうで見守っていた。しかし、二つの世界が一瞬つながったことから、奎介は四神天地書に疑問を持ち始める。図書館で偶然会った友人・梶原哲也(かじわらてつや)と共に四神天地書について調べる奎介はある一つの考えに辿りついた。もしその仮説が正しければ美朱と唯は……。美朱の身を案じ、こちらの世界に帰ってくるように説得する奎介。しかし美朱の決意は固く……
青龍七星士・房宿(そい)の術により美朱たちの乗る船が雷に襲われた。船から落ちてしまった美朱と鬼宿、柳宿は、波にもまれながらもなんとか岩穴に避難する。やむ気配のない雨と雷に三人はそこで救助を待つことに。岩穴の中、美朱を護るために無茶をする鬼宿に一喝する柳宿。大事なものを二度と失いたくないとつぶやく鬼宿に、柳宿は自分の過去を語り聞かせる。
仲間と合流を果たした美朱たちは房宿の攻撃を受けるが、星宿の神剣により房宿を退けることに成功する。ようやく北甲国へと辿り着いた一行は、神座宝の手掛かりを求めて特烏蘭(とうらん)へとやってきた。しかし、青龍七星士もまた、神座宝を求めて特烏蘭へと来ていたのだった。手掛かりを探す中、鬼宿は偶然唯と再会するのだが……
青龍七星士・尾宿(あしたれ)に襲われた美朱と柳宿は、柳宿の機転によりなんとか尾宿を退ける事に成功する。一方、特烏蘭の街角で偶然唯に再会した鬼宿は唯を説得するのだが、もう後戻りはできないと鬼宿が神座宝の在処を知った事を心宿に伝えるのだった。その夜、唯の言葉が頭から離れない鬼宿は、美朱にどこかぎこちない態度をとってしまう。
神座宝を探し独り黒山へ向かう柳宿を再び尾宿が襲ってきた。狼のように動きの速い尾宿に苦戦を強いられる柳宿は、ついにその体を鋭い爪で貫かれてしまう。深い傷を負う柳宿。しかし仲間のため、美朱のために、ボロボロになりながらも尾宿を絞め殺す。そして最後の力を振り絞り、神座宝への道を開くのであった。柳宿の異変を察知した美朱たちは、柳宿のもとへと駆け付けるのだが……
柳宿の死を無駄にしないため、美朱は神座宝がある山の扉を開ける。そこで一行を待ち受けていたのは、200年前に死んだはずの玄武七星士・斗宿(ひきつ)と虚宿(とみて)。彼らは残留思念となり玄武の神座宝を守り続けていたのだ。肉体を失った斗宿と虚宿に鬼宿たちの攻撃は効かず、討つ手がないかと思われたが、美朱の必死な懇願に、斗宿と虚宿は彼女にある試練を与える。巫女の力を示すことができれば、神座宝への道を開いてくれるというのだが……
斗宿と虚宿により氷に閉じこめられてしまった美朱だったが、柳宿の腕輪と朱雀の力により、神座宝を手に入れることができた。しかし喜びも束の間、突如現れた狼に神座宝を奪われてしまった。神座宝を取り戻す為に狼を追う美朱だが、いつのまにか狼を見失い、鬼宿たちともはぐれてしまう。自らを責める美朱の前に、様子を見に来た太一君が現れる。太一君は座宝を取り返す方法を教えるのだが、その方法とは……
美朱の前に現れた太一君は青龍七星士・氏宿(とも)による幻影であった。罠にはまった美朱は心宿の強い気により気を失ってしまう。一方、西廊国(さいろうこく)へと向かっていたはずの鬼宿は、妙な胸騒ぎを感じ、一人美朱を追いかける。猫のタマの案内で美朱の居場所を突き止めたのだが、美朱の身を案じる鬼宿の前に現れたのは青龍七星士・心宿。心宿の言葉に怒りをあらわにする鬼宿。その怒りは心宿の肩に一撃を与えるが、心宿は房宿とともにその場を立ち去ってしまい……
心宿に汚されたと思った美朱の悲しみは大きく、優しくしてくれる鬼宿の気持ちにも応えることが出来ない。もう鬼宿のそばには居られない……。夜の暗闇を一人駆け出した美朱は、崖から転落してしまう。落ちた衝撃で足を捻り、心も体もボロボロの美朱の前に現れたのは角宿であった。美朱に剣を向ける角宿。動くことのできない美朱は覚悟を決めるのだが……
荒野をさまよう美朱を助けたのは、死んだはずの青龍七星士・亢宿にそっくりの少年・懐可(かいか)であった。懐可の介抱により少しずつだが回復していく美朱。だが心に受けた傷は癒されることはない。苦しむ美朱を想い、懐可は忘却草を渡す。全てを忘れてしまえば楽になれる……。懐可の言葉に揺れる美朱。しかし、柳宿の腕輪が美朱を止める。自分を想ってくれた大事な人たちを忘れてはいけない。涙を流す美朱に、懐可は……
氏宿の幻術により罠にはめられた鬼宿。美朱への想いの力によって一度は幻術に打ち勝つことが出来たのだが、再び氏宿に捕らわれてしまう。一方、房宿により自分が心宿に汚されていないことを知った美朱は、房宿の忠告も聞かずに鬼宿のもとへと駆け付ける。再会を喜ぶ美朱と鬼宿。だが不意を突かれた鬼宿は、氏宿の攻撃に背中を貫かれてしまう。
何もかもが思い通りの世界で幸せに暮らす美朱は、青野(あおの)という少年に恋心を抱く。しかしその青野こそが氏宿の分身であったのだ。四神天地書のなかで起こった全ての記憶を失い、普通の生活をおくる美朱。だが、偶然目に入った「鬼」の文字に、たまたま立ち寄っただけの図書館に、なぜか心揺さぶられる。自分には忘れている事が、思い出さなければいけないことがあるはず……。美朱の中で、少しずつ記憶がよみがえっていく。自分がいるべき世界は、本当の想い人は……
氏宿の幻覚を打ち破るも、角宿に襲われてしまった美朱。その窮地に駆け付けたのは、崖から落ちたはずの鬼宿と氏宿の幻覚に囚われていた七星士たちであった。再会を喜ぶ一方で氏宿に受けたダメージは大きく、一行は鬼宿のかつての師匠・奎宿(とかき)の家に身を寄せることに。西廊国へ入り、神座宝を手に入れるためにも決意を新たにする美朱。しかしそんな美朱に、鬼宿は思いもよらない言葉をかける。これ以上お前を愛してやれない……。別れを告げる鬼宿の真意とは……
巫女と七星士が結ばれることはない……。二人の愛が決して報われることが無いと知った鬼宿は美朱に辛くあたる。しかし鬼宿の言葉を信じることのできない美朱は、日が沈むと同時にその塔の上で唇を重ねあった男女は何があっても離れる事はないと言う伝説の塔へと鬼宿を誘うのだった。塔の上で一人鬼宿を待つ美朱。いつか必ず来る別れを知っている奎宿は、美朱の元へ向かおうとする鬼宿を引きとめる。しかし、たとえ傷つくことになっても、鬼宿の美朱への想いを止めることはできないのだった……
青龍七星士・箕宿(みぼし)により声を奪われ投獄されてしまった美朱は、そこで白虎七星士の一人、婁宿(たたら)と出会う。婁宿から白虎の神座宝を貰い受けた美朱は、巫女と七星士の運命を聞かされることに。朱雀は自分の願いをかなえてはくれない……。鬼宿の言葉の意味を知り、迷う美朱は唯に騙され神座宝を奪われてしまう。一方、現実世界で四神天地書の謎を追う奎介と哲也は、かつての白虎の巫女・大杉鈴乃(おおすぎすずの)に会うことに……
婁宿が命を賭けて倒したはずの箕宿は、死んではいなかった。魂だけの存在となった箕宿は、今度は張宿の体を乗っ取ったのだ。体は張宿のため反撃することも出来ない七星士たち。うつ手がないかと思われたその時、かすかに残っていた張宿の意識が、美朱たちの呼びかけに応えた! 体の中でせめぎ合う二つの意識…… 朱雀七星士・張宿の決意とは……
美朱の願いもむなしく、唯は青龍召喚の儀式を行ってしまう。光の中現れた青龍星君(せいりゅうせいくん)と交わることで、三度だけその神通力を使う事が出来るようになった唯。彼女は心宿に促されるままに一つ目の願いを叶える。最初の願いは朱雀の永遠の封印。紅南国で異変を感じとる鬼宿たちは、朱雀を封印されたことにより、七星士の力を失ってしまう。その時、星宿の元に倶東国進軍の報せが……。紅南国を守るため、力は失ってしまったが、朱雀七星士として倶東国と戦うことを決意する鬼宿たち。そして美朱もまた、朱雀の巫女として鬼宿たちと共に唯と戦う決意を固めるのであった……
唯の二つ目の願いにより、引き裂かれたかに思われた美朱と鬼宿の二人。しかし、美朱を想う一心で、鬼宿は美朱と共に本の世界から抜け出してきたのだ。見たこともない世界に戸惑う鬼宿は、残してきた仲間の身を案じて美朱と共に本の中の世界へ戻ろうとするのだが……。そして、本の世界と現実世界が繋がった事により、四神天地書にも変化が表れ始めていた。美朱たちの世界を手にするべく、心宿が動き出していたのであった……
現実の世界で、普通の恋人同士のような時間を過ごす美朱と鬼宿。それは美朱がずっと夢見ていたものであった。しかし、鬼宿は本の中の人物。いつかは本の中に帰らなければいけない……。奎介に諭されるも、必死に否定する美朱。だが、鬼宿も自身の存在に違和感を抱き始める。特烏蘭での唯の言葉の意味に気付いた鬼宿は、一人街中へ飛び出していく。美朱は鬼宿の後を追うのだが、鬼宿を探す途中、唯に出くわす。そこには、本の中にいるはずの角宿がいて……。
七星士としての力を失いながらも、美朱を守るために角宿と戦う鬼宿。しかし、力の差は歴然。窮地に追い込まれ、これまでかと思われた鬼宿を助けたのは、本の世界で角宿に殺された幼い兄弟たちであった。彼らの想いが形となり、鬼宿を救ったのである。一方本の中では、星宿と心宿が戦場で対峙していた。心宿の真の計画を知った星宿は、皇帝として、朱雀の七星士として心宿に立ち向かう。そしてついに、心宿へと一撃を浴びせるのだが……。
軫宿、そして星宿までもが命を落とし、朱雀を召喚出来ていればと、美朱は自身を責める。悔む美朱に、哲也は奎介と共にたどりついた巫女の本当の意味を伝える。次に青龍に願った時、唯は青龍に喰われてしまう。美朱は再び唯を説得する決心をする。その頃、鬼宿もまたある決心をする。本の中の人間である自身と、現実の世界を生きる美朱。本当に美朱を想うのであれば、一人で本の中に帰って欲しいという奎介の説得に、鬼宿は一人で本の世界へ帰ろうとするのだが……。
ついに現実の世界に現れた心宿。美朱のいる世界を守る為に心宿と戦う鬼宿だが、力の差はあまりに大きかった。2人の戦いにより崩壊していく街の中、鬼宿を探す美朱は気を失っている唯を見つける。唯は心宿の結界に囚われいたのだ。囚われの唯を助けようとする美朱だが、そこにあらわれた心宿に阻まれてしまう。自分の願いを叶えるように唯に迫る心宿。唯を助ける為に、美朱は傷ついていく。その姿を目にした時、唯は自身の本当の気持ちに気付く。
奎介の呼びかけにより、美朱を助ける為に現実世界へとやってきた井宿と翼宿。相討ちを覚悟して心宿へ挑もうとしたその時、傷だらけで気をうしなっていたはずの美朱が、朱雀召喚の祝詞を唱えはじめる。唯が最後の願いで朱雀を呼び出す力を与えたのだ。願いを叶えるたびに自身が喰われていくことを知りながらも、一つ目の願いで青龍に喰われてしまった唯を助ける美朱。その身に受ける衝撃は大きかったが、負けたくないという想いが美朱を支えていた。しかし、傷だらけの美朱に再び心宿の攻撃が迫る……
戦いで命を落とした七星士たちが再び美朱の元に集った。一度はやられたと思われた鬼宿も、美朱の声に再び力を取り戻す。ついに最後の戦いが始まろうとしていた。七星士たちの力と想いを背負い戦う鬼宿だが、それでもいまだ及ばぬほどに心宿の力は強大で、これ以上打つ手はないかと思われた。しかし、負けられないという想いから、美朱は青龍の封印を朱雀に願う。鬼宿たちの戦いに決着が訪れたその時、鬼宿が見たものは……