抹茶マラカス

平家物語の抹茶マラカスのレビュー・感想・評価

平家物語(2021年製作のアニメ)
4.5
座組みで言えばワンダーしかないこの作品、実に素晴らしかったと言える。
全体を見通す、未来視の能力者として琵琶という女の子を起くが、彼女は決して主人公ではなく鑑賞者であり、傍観者であることを徹底して未来を変えようとはしない。それが諸行無常。
平家物語は軍記物と呼ばれるジャンルだが、そのアニメ化にあたっては、明確に絵巻物という別ジャンルの文化を重要視している。
絵巻物は院政期、即ち平家の隆盛期に始まったジャンルであり、貴族の生活を描く上でカメラを上に設置して、吹抜屋台と呼ばれる天井を省略する手法で描画される。だが、鎌倉期に成立した平家物語絵巻になると、戦場の描写が増え、そのカメラ位置は変化していく。全体を通すアニメの中に傍観者=絵巻物の読者としての琵琶を提示することで、琵琶の存在を歴史を通して語ること、そして作品自体の提示した許し、祈り続けることをも描き切った。
奇しくも、この祈りは山田尚子監督が描けば意味が生まれるものであり、勿論そこと結びつけずにはいられないだろう。
悠木碧、早見沙織への賞賛は当然として、源義経cv梶裕貴と高倉天皇cv西山宏太朗の解釈一致にハイタッチしたくなる。