デベデイ

プラネテスのデベデイのネタバレレビュー・内容・結末

プラネテス(2003年製作のアニメ)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

評価がすごく難しい。
【良いところ】
・SF感。デブリという地味な題材が実に通っぽくていいし、随所にある「宇宙ではたらくこと」の特殊さが楽しい。
・キャラの魅力。タナベがきちんとかわいい。あとノノちゃんの造形が天才的すぎる。ノノちゃんの良さだけで500文字は書ける。
・必要だった恋愛要素。中盤でカップル成立するまでも楽しいし、成立してからフォンブラウン訓練パートに入ってからも、夢を追うことの重みとの対比になってて、唸った。
【悪いところ】
・脚本との相性の悪さが目立つ…宇宙飛行士なんだから、いくらサラリーマンといえど全員相当優秀なはず。だからプラネテスは「頭のいい人が動かす物語」でなければならないのに「一部の頭の悪い人が動かす物語」を書く癖のある大河内一楼と致命的に相性が悪い。序盤のトラブルの数々は話が軽かったのでまだ許せたが、フォンブラウン落とし作戦の一連は、クレアとかも寝返ったのが納得いかない。生まれが貧困国でも、テクノーラに入れたってことは科学的教育を受けてるはずなのに、なんでそんなに浅はかな行動するの?あなたはそこから世界に関わることを選んだんじゃないの?船乗りの端くれたるとしては、宇宙飛行士のプライド描写とこの辺がチグハグに感じた。
・露悪的すぎる一部の描写。厳しい世界だから、フォンブラウン試験あたりはめっちゃ楽しんで見てた。ただその後いい人たちがホイホイ死んで、タナベに究極の選択をさせて、それって意味あるの?と思った。タナベはサラリーマン的な職業宇宙飛行士でありながら超青臭いことを堂々と言って、でもその真っ直ぐさが周囲の人を惹きつけて…というポジションのはず。彼女は愛を語り、ハチマキとは対比的な立場のはず。それなのに宇宙が原因の業を背負わせるのは、因果の結ばれ方が不毛すぎる。あとハチマキ、お前だけは絶対にクレアを許しちゃいけなかったんだぞ。お前は夢は追うけど、好きな人を泣かせたりしないやつだって信じてたのに。最後の最後で幻滅したわ。つか、最後に完全回復させるならマジでその件は要らなかったよ。
・結局宇宙に行くことへの感情がなあなあになった状態で終わるので、ピークの持っていきかた下手くそでは?フォンブラウン試験編の、狂気にも似た感情をどう処理するかが気になってたのに、あんなテロ事件起こしちゃったらそりゃメンタルいったんリセットされるやろ。「結婚しよう」のところは最高だったけど、「あーはいはい旅だったのね」っていう感情になっちゃったぞ。

【番外編 ノノちゃんの良さ】
登場した時、明らかに20歳近くの見た目なのに声で脳みそがバグる。でも態度はちょっと大人っぽくて、でも距離冠が無邪気で、でもいやらしくなくて…しばらく脳みそがバグったまま不思議な魅力に引き込まれていく…病院にいるってとこでハチマキがめっちゃ気を遣うとこが、優しくていいよね。そして明かされるルナリアンという背景。押し寄せる納得感の波。妙な達観さにも合点が行く。途端に存在自体が超儚く見える。月で生まれ、月の重力下でしか生きられない身体。でも底抜けに明るく、地球の海を夢見る。でも一生をシェルターの中で暮らさなければいけない閉塞感はどれほどのものだろう。色鮮やかな海を夢見て、灰色の月の大地しか知らずに死んでいかなければ行けないのか。これも宇宙開発の先にある必然なのか…無数の感情を抱えたまま、エンディングに入る。完璧やろ。
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