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地球外少年少女のTKLのレビュー・感想・評価

地球外少年少女(2022年製作のアニメ)
3.3
地球の内外で生まれ育った少年少女たちが、宇宙ステーションで決死のサバイバルを繰り広げる王道ジュブナイル。殆ど前情報なしで衝動的に鑑賞をし始め、Netflixで全6話をほぼ一気観した。
同監督作として有名(らしい)「電脳コイル」も不勉強ながら観たことも、聞いたこともなく、全くまっさらな状態で鑑賞したが、アニメーションのクオリティやキャラクター造形は精細で魅力的だった。

近未来を想定した各種ガジェットや諸々の舞台設定も、現代の実社会と地続きなリアリティーライン上にクリエイトされていて違和感なく受け入れられる。
そこかしこに描写されるアニメ世界の企業のロゴデザインや名称が、現実社会のそれに即したものになっていることも、実在感を高めている要因だと思う(“◯ニクロ”や“◯ーグル”など)。
主人公たちが自分の“手”と一体化したスマートデバイスを駆使して生活し、また危機を回避していく様にもとてもリアリティがあった。

非常に“面白味”に溢れたアニメ世界を創造していたと思うが、SF作品としては物足りなさを否定できない。
王道ジュブナイルであることは問題ないが、描き出されるストーリー展開とその顛末が、SFとしてはあまりにもありきたりだったように思う。
主人公をはじめとする少年少女たちの言動が、ある意味「想定の範囲内」で新鮮味が無かったと言える。

また、ストーリー構成が、少年少女たちが初めて一堂に会して、突如として巻き込まれる一連のサバイバルを描いたせいぜい数時間程度のお話なので、どうしてもそれぞれのキャラクター描写が弱かったし、キャラクター同士の関係性が希薄に映ってしまった。
故に、地球規模、人類規模に発展するサバイバルにおける一体感や成長の様にも、今ひとつ説得力を感じることができなかったのだと思う。

結果として、キーマンであるAIを含めたキャラクターや、このアニメの世界観そのものに対して「愛着」を持つことができなかったのだと思える。(メインキャラの一人である“バカチューバー”の姉のキャラクター性に対してもユニークさよりも嫌悪感の方が上回ってしまった)

宇宙を舞台とした邂逅と進化は、テーマとして個人的には大好物だし、物語の帰着そのものは良かったと思う。だからこそ、SF作品としてもっと「想定外」の場所に少年少女を連れて行ってほしかった。
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