KengoTerazono

ガールズ&パンツァーのKengoTerazonoのレビュー・感想・評価

ガールズ&パンツァー(2012年製作のアニメ)
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戦車を男にすり替えてもほとんど違和感がないくらい戦車はファルスとして機能しているが、主要キャラクターが全員女性であるところがミソになっている。

「戦車道をすると良妻賢母になれる」「男にモテる」といった文言が出てくるのとは対照的に、みほは一旦戦車道を拒否する。それは家というファルスに去勢されることを逃れるのと同義だ。だが、みほは仲間の献身さに感化され、再び戦車道へと歩みを進める。アニメは戦車の男根性をひけらかしておきながら、登場人物はホモソーシャルな連携に絡め取られていく。社会に絡め取られるのを拒否する身振りをした後で、自身が仲間のため自律的にその社会へと絡め取られ、自助努力のもとその社会で成り上がっていく過程が印象的だ。自分でその社会へ向かうからこそ、みほは戦車道のリーダーになれたのだ。社会化されるトリガーがホモソーシャルな結びつきであることも大事だと思う。

女性が男性の社会に去勢されるプロセスを描くのかと思いきや、エピソードが進むにつれて、戦車の男根性が影を潜め、ホモソーシャルが前景化していくのがよかった。これを男性だけで行ったら、ヒロイックでファルス的な去勢のプロセスになっただろうが、登場人物が女性ばかりだからこそ、既視感のある少年ものの物語に柔らかさが加わった。ファルス的な社会の統一者となるという物語構造を借りながら、ファルスとは少しズレたところにみほは旗を立てるに至ったのだと思う。
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