モトメ

機動戦士ガンダム 水星の魔女のモトメのレビュー・感想・評価

機動戦士ガンダム 水星の魔女(2022年製作のアニメ)
2.9
最新6話まで視聴

現時点で新しい物は何もない。ライトノベル全盛時代の異能学園物のような舞台設定とウテナの相の子のような世界観は、一周回って新しいとはまだ言えない。キャラクターは皆、アニメの世界にしか存在しない精神構造と行動原理で動いていて、生身の人物は見当たらない。メインのキャラクターデザインに引っ張られた結果か、あるいは人物をきちんと描けるアニメーターの不足のせいか、大人がみな老けた子供のように見えるのも問題である。最大限に風呂敷を広げようとはしているが、チラチラと顔見せしている組織はみな平板かつありきたりな描写に終始しており、対立構造にも期待がもてない。個人的には、一人で観るには視聴に耐えられない作品ではあるが、友人が続きを気になっているので、これからも一緒に見る予定である。

と、個人的な感性からは酷評せざるを得ない作品であるものの、ガンダムはその時点で最高のスタッフを集めるビッグコンテンツであり、今作もその作りは非常に丁寧。SNSで盛り上がりを見せる仕掛けがふんだんに盛り込まれており、実際に話題となっているところを見るに、売れっ子脚本家たる大河内氏の実力はやはり確かなもの。作品屈指の面白キャラであるグエル君のこれからも気にならないわけではない。サブカルで最早やり尽くされた学園編をテンポ良く通過して弾みとし、後半にかけては広げた大風呂敷を最大限に活用するドラマ、つまりは彼らが企業間戦争へと否応なしに巻き込まれていくような展開も考えられる。その場合は、ひょっとすると、過去のサブカル的文脈を総決算して新しい境地で終結させる大傑作に変貌する可能性もあり、手のひらを返さざるをえない事態にもなりうる。

ガンダムシリーズ屈指の名作に昇華する可能性はまだ残されているし、それを待ち望む所である。
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