すんご

僕の心のヤバイやつ 第2期のすんごのレビュー・感想・評価

僕の心のヤバイやつ 第2期(2024年製作のアニメ)
4.5
個人的にはラブコメ・恋愛漫画(※)の中で最上位の一角にあると思っている(そんなにラブコメ・恋愛漫画は読まないけど)。
ただし、シーズン1序盤は下ネタがひどいので注意が必要。シーズン2は大丈夫


最初は、単によくある美人女子に好かれる陰キャ男子ものと思っていたが、読み進めていくうちに尋常な漫画ではないことに気づかされる。


まずその描写。作者いわく「距離」、「変化」、「気づき」がキーワードらしく、通常のラブコメ・恋愛漫画にある劇的な話の展開がないのにも関わらず、いつの間にか関係が発展している。
セリフのない表情のみのコマで、キャラクターの関係性が発展しているのに、そこはかとないリアルさを感じた。アニメでもその描写はじっくり描かれている。
中学生の恋愛として、少しずつ進んでいく。繊細な描写に、自分も含め多くの人が自身のあったかもしれない過去を投影してしまうと思う。
このあたり、少年漫画かつ女性作家の作品という特異性の賜物と思う。


そして、重要な点。「陰キャで特筆すべき能力もない平凡男子が一軍女子と恋愛関係に発展するかどうか問題」があると思うが、ここはまだ中学生という条件でクリアできていると思う。
高校時代ならばすでに所属するグループが分化しすぎてしまい、市川と山田のようなカップルが成立可能性はそこまで高くない。
だが、中学生で恋愛経験が少ない状態ならば、何かのきっかけで成立することは十分考えられるのではないか。(と、期待してしまう)


なお、主人公の市川は厨二・陰キャ男子というのがわかりやすい説明だが、実際のところ中学受験に失敗して鬱屈しているだけで、本来は思いやりや行動力があり、視野が広く、コミュニケーション能力も高い人間である(当初おどおどしたしゃべりをしているのは、慣れていないだけ)。
結局、ヒロイン山田を振り向かせた要因は、市川の誠実さであり、少年誌的な都合よい展開に頼っていないのがすばらしい。


また、本作は2人の家庭の描写もしっかり描いているのも特徴。そう、現実世界には家族の壁もある。お互いの家族とも交際をしっかり認めてもらっているのが潔い。


原作は8巻で大きな転機を迎える(アニメだとシーズン2まで8巻まで描くと思う)。
ここで完結してしまう漫画も多いが、本作はその後も描く。
少なくとも中学卒業で一旦完結となると思われるが、残りの展開も非常に気になる一作だ。
ただ、単行本発刊ペースがかなり遅いので、アニメのシーズン3以降が制作されるかは心配だ(「君に届け」ですらシーズン2と3のあいだが10年以上あいてしまった)。
気長に待とう。


※勝手に下記のように定義している。
ラブコメ:おもに男性向け雑誌掲載。男性または男性と女性が主人公。コメディ要素、ハーレム要素が高い。女性キャラが理想化されている。女性が勝手に主人公のもとにやってくる。作家が男性であることが多い。

恋愛漫画:ほぼ女性向け雑誌掲載。男性キャラが理想化されている。ほぼ作家は女性である。シリアス展開が多い。
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