チョコレートと猫

天国大魔境のチョコレートと猫のネタバレレビュー・内容・結末

天国大魔境(2023年製作のアニメ)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ノーチェックの上、前知識なしで滑り込みで1話を観始めたけれど、最終回まで観終わった今、最後まで見続けてよかったと思った作品だった。

2つの世界が交錯して、視点を交互に変えながら物語が進むので、最初は理解するのに手間取ったけれど、どっちの世界でもどんどん謎が生まれて解答が明かされていく手口が面白かった。

キルコ・マルの視点の世界で、
キルコの大きな秘密に焦点が当てられているのが面白かった。
OPのキルコの疾走シーン(線画と着彩がズレて一つになる)、
お風呂場で裸になって割れた鏡で自身の姿を見つめるシーン、
このあたりでの解説を見かけて、演出が面白い作品なんだとわかり、自分が着目してなかった部分の面白さから楽しめたし、これはどういう意味があるんだろう?と考えながら見れて楽しかった。

特に8話は大変すばらしかった。
怪しい教団の医師・宇佐美と、彼が助けてほしいと頼んだ対象の彼女を、キルコとマルが、マルの能力を使って救おうとする。
依頼を遂行した後にわかる彼女の想いと、それを受け取った宇佐美からこぼれる涙が本当に綺麗で美しかった。
宇佐美の献身が実を結んで救われた瞬間だったように思える。

依頼を済ました後に一旦2手に別れる時、
宇佐美の決心はすでに道路の停止線で止めた足元と明暗描写で描かれ切ってたし、階段上る描写がしっかり入るのってそういうこと!?もしやタイトルとかけてるな!?って気づいた瞬間もっと話に引き込まれてしまったし、
その後マルが、キリコがピンチの時に咄嗟に助けを呼んでしまったロビンと、医者にならされて結果的に人助けになってしまった宇佐美を引き合いに出して、自分は彼らがしてた生かすことで人を助けることができない、殺しの能力だと決めつけてしまったのが、
目の前の二人が死んだことによる発端が自分であることを理解し、自己で理由付けにしてしまったことに繋がるのが本当につらいと思って2通りで理解した時、何とも言えずにうなってしまった。

救いのない終わりのように見せて、
Cパートで「君が居なければこの世界で生きてる意味がない」と「あなたが迎えに来たからもうこわくないもう大丈夫」を理解させられて、泣いてしまった。

8話だけでも観る価値があるので、個人的に8話だけでいいから観てほしいと思う。


全話通してお勧め出来ないのは、
女性への結構露骨な性的加害描写が何度か目立つ上に生々しいので、
その辺にネックに感じて周囲にすすめにくいので満点には出来なかった。

全話通して面白いけど、個人として公に好きだと言ったり、周囲へお勧めできない作品も珍しいなという感想。