ベジェリン

葬送のフリーレンのベジェリンのレビュー・感想・評価

葬送のフリーレン(2023年製作のアニメ)
5.0
まだ途中だけどこのアニメ着想が非常に面白い。魔王討伐後の凱旋シーンから始まり、基本的にすべて哀愁というか郷愁みたいな、過去を思い出すシーンの連続だ。3年が1話の中で流れたかと思えば、またすぐ半年が流れ、またすぐ1年が流れる。これほどまでにタイムスパンが長く設定されているアニメはみたことがない。なおかつ80年前に魔王を討伐したパーティのひとりの魔法使い(エルフ)に視点を置くのも初めてのことだと思う。

キャラクターはみんな真剣なんだけど抜けている。人間性は少しずつ違うようでいて、結局はどのキャラもよく似ている。たぶん作者の人間性がこの感じなのだろう。達観すると人間の中にはかならず二面性が現れる。厳しいけどやさしい。真剣だけどふざけてる。悲観的だけど楽観的というふうに。

チート系の作品のようにも思えるけど、どこか社会の仕組みを外側から眺めているような冷めた感じもある。社会人類学者みたいな視点も感じるというか。

個人の知的好奇心を探求することにもっとも意味があると作者は感じているようだし(主人公のフリーレンが民間魔法集めそれ自体を人生の目的としている)、長すぎる人生の中でどのように楽しみを見出すかに焦点を当てているのは、今後より人間は長寿になり、人工知能の活用などでエルフみたいに人間の人生が時間を持て余すようになることを暗示しているようにも思える(考えすぎか)。

ともかくこの作品は過去にまったくなかったし、いまの時代の空気の反映で作られている気がしてならない。昔クロノ・トリガーというゲームで、強くてニューゲームというモードがあったけど、魔王を一回討伐したフリーレンにはそのような無敵の楽しみがあるような気もする。

単なるチートものは下品だが、この作品には絶えず彼女が過去から振り返り現代でひとと関わりながら謙虚に学ぶ姿勢があるので全然いやらしくない。知的に成熟して知的巨人になっている魔法使いが、過去の記憶の中に愛をみいだしつつ、目を開くとそこにまた教えるべき次世代がいるというのは、まるでアラフォー世代の教養ある管理職のようだ。

なるほど。さては作者(年名不詳)アラフォーに向けたメッセージを子ども向けの箱に詰めているのではないか?🕵️‍♀️(なわけないか笑)