高柳総一郎

PLUTOの高柳総一郎のネタバレレビュー・内容・結末

PLUTO(2023年製作のアニメ)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

スイスの世界最高水準ロボットの一体・モンブランが無惨にも破壊された。その遺体には二本の角のように木が突き立てられていた。時を同じくして、ロボット権法学者が同じように殺される。ユーロポールに所属するドイツの世界最高水準のロボット刑事・ゲジヒトは、この二つの事件に奇妙な一致を見出すが──
浦沢直樹作品は動画にすると映える、というのは日本のファンにはおなじみだったわけですか、世界にこれを発信してしまうとは……
ご存知漫画の神様手塚治虫の傑作『鉄腕アトム』のこれまた傑作エピソード『地上最大のロボット』のリメイクという、まさに神をも恐れぬ所業をやってのけた浦沢直樹作品のアニメ化。
全体的に落ち着いた声の吹き替え畑の役者さんが多く、手書き感のある作風も相まって非常に見やすい。
 ロボットと共生し、彼らには権利もある──という世界で確かに起こっている差別と軋轢を、イラク戦争を下敷きに翻案してみせる技量ときたら。それをサイコマーダーミステリーに仕立て上げてくるのはさすがといったところ。
 まさかこの作品を書いた時代は、日本人にここまで戦争を意識させるような時代ではなかったのではないだろうか。でもこんな時代だからこそ、いまだからこそ、この作品を見ておいてほしい。
 ゲジヒトは言う。「人間の憎悪は消えますか? 消去しても消去しても消えないものですか? 私が一番恐れていたのは……憎しみを持ってしまった、自分自身なんです」
 憎しみは消えない。それでも、相手を許すことはできるのだ。
高柳総一郎

高柳総一郎

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