だいすけ

響け!ユーフォニアムのだいすけのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム(2015年製作のアニメ)
4.5
爽やかな青春スポコンものみたいな印象がある。前々から吹奏楽に興味はあったけど、各楽器やパートのあれこれが分からなかったので、色々勉強になった。

自分は高校時代、真剣に部活に打ち込むことができなかった人間なので、本作の登場人物をうらやましく思う。それこそ葵のように「将来の役に立たないからほどほどにしておこう」と妥協してしまった。今でも後悔している。何かに熱中できる時間はこのうえなく贅沢で幸福だと、社会人になって思う。そしてそのような活動を通して築いた人間関係や経験が、人間の厚みになると思う。

とはいえ、子供のころにピアノを習っていたので、音楽にのめり込む人の気持ちは分かる。頭の中では「こう弾きたい」というイメージがあるのに、身体が追い付かずもどかしい思いをする。それでも発表会で思い通りのパフォーマンスを披露でき、拍手を全身に浴びるときの達成感。これに勝る喜びはない。

そういう意味では、吹奏楽は二つの要素を兼ね備えている。自分と向き合うこと、そして仲間と向き合うこと。この二つの要素は相反するわけではなく、むしろ仲間との相互作用の中で刺激を受け、自分自身についての気づきも得て、完成に近づけていくのが吹奏楽。だから本番を迎えるまでの過程で、至るところで軋轢が生まれ、そのたびに共同で解消していく。そして最後にはみんな同じ方向をむき、素晴らしい「シンフォニー」を奏でる。

基本的にさわやかで、悪い登場人物はいない。けど、青春時代特有のヒリヒリとした人間関係が繊細に描かれていて、下手な鬱アニメよりよっぽど胃が痛くなる。ただ、社会的地位や経済的利害などの黒々とした欲望とは無縁の、純粋に演奏したい、上達したいという、どこまでもまっすぐな願望は、見ていて嫌な気持ちはしない。これは健全な劣等感から始まり、健全に自尊心を育んでいく物語だ。
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