クドゥー

響け!ユーフォニアム2のクドゥーのレビュー・感想・評価

響け!ユーフォニアム2(2016年製作のアニメ)
5.0
『その涙の温かさを、僕はいつまでも忘れない』

続編とは、群像劇とは、連続アニメとは何か・・・そのすべてに確たる答えを出したテレビアニメーション史上最高傑作。いつ見ても泣く、何度見てもひたすら泣く。本作を経験すれば、並みの物語の脆弱性に耐えられなくなってしまう。

第一回「まなつのファンファーレ」
アバン〜Bパート
→「サウンドスケープ」が流れた瞬間からオールタイムベスト誕生の予感、やがてそれは現実に。劇場総集編で初めて口を開いた儚き少女が、最強巻き込まれ型主人公と邂逅を果たす壮絶なる面白さの展望。日常に回帰する成長。
Cパート〜ED
→のぞみぞ・あすくみ・黄前姉妹での同時展開に原点にして頂点たるくみれい。どう考えても一回で張っていい伏線の熱量じゃない。花火大会のモノローグに「今」というこの瞬間を生きる作品で伝えたいことがぜんぶ凝縮されている。

第二回「とまどいフルート」
→素肌より素顔を晒してしまうのがユーフォ流水着回。相手の視線や言葉の含みを一瞬にして読み取ることで、無意識に正解へと近づていく探偵役としての適性。希美はフルートが大好きだから、才能よりも努力ができないことに大粒の涙を流していた。

第三回「なやめるノクターン」
→才能とか努力とかそういう範疇にない見えているものが違う視点。滝先生の過去に関する世代別失言代表選手の会話は、実はユーフォ2屈指の泣けるシーン。麗奈のどうみても夫の帰りを待つ妻にしか見えない感じとか、第二回から引き続き最高に可愛い。

第四回「めざめるオーボエ」
→「私、人が苦手・・・」から始まったみぞれの想いを経験してからはずっと、他のあらゆる回想表現を陳腐に感じてしまっている。人格を預かることに対する真摯な姿勢は、圧倒的な才能より鋭利な表現にさえなりうる。観る者の何かをめざめさせる。

第五回「きせきのハーモニー」
→一期と対を成す人間ドラマの延長戦上のコンクール。Bパートほぼ全編でお届けする7分間のフル演奏シーンは、テレビアニメ史に永遠に刻まれる軌跡であり輝石であり奇蹟だ。「ガルパンはいいぞ!」超える最強最高の「たった今好きになった。」

第六回「あめふりコンダクター」
→文字どおり「嵐の前の静けさ」となっているユーフォ流学園祭回。大人になれなくて家を飛び出してしまった久美子が、大人であろうとする姿勢とそれでも滲み出る喪失の切なさに触れる。それに真摯さを見出せることが彼女のポテンシャルなのだと思う。

第七回「えきびるコンサート」
→みんなが特別だと思っていた存在が抱えた、本人からすれば他にいくらでも同じ子がいる事情。自分だけではなく部員全員で向き合うまで導く真のリーダー。ひと時の高揚感で忘れさせてくれる「宝島」が、今後の展開を予感させて切ない。

第八回「かぜひきラプソディー」
→揉めごとしか起こってないのにどうして瞬間ぜんぶが美しく愛おしいのだろう。友達の家庭事情を垣間見てしまった時みたいな。指導者としては超一流でも教育者として口をつぐむ滝先生、三年生編でその聖域に踏み込む土壌は整っている。

第九回「ひびけ!ユーフォニアム」
→特別の中の特別な回だけのスペシャルエンディング。音楽を始めたいと思ったのはお姉ちゃんがいたからで、吹奏楽を本気でやりたいと思ったのは親友がいたから。それでも「ユーフォニアム」を響かせたいと思うのは、貴方がいたからでした。

第十回「ほうかごオブリガート」
→かつて誰かが諦めてしまった想いが他の誰かを動かす原動力となるかもしれない。そんな奇蹟を物語の世界はAパートからBパートで見せてくれる。儚げな後ろ姿を回想して心に火をつけた瞬間、ぼくの知る最高のカットがそこにある。

第十一回「はつこいトランペット」
→「リズと青い鳥」「決意の最終楽章」すらも及ばないかもしれない、あらゆる創作物のオールタイムベスト。貴方が役者を志しているのならば、Aパート最後の台詞は聞かない方がいい。残酷な程の経験の差って、物語で描くことが出来たんだ。

特別になりたい少女と特別となっていた少女が、悪感情を自覚し教唆し共有するまでを描いた壮絶な友情譚に、愛しさでも切なさでもなく涙が止まらない。

「あなたを想い続けます。」
その深きに、今はまだ思い至れない。

第十二回「さいごのコンクール」
→長かった、本当に長かった彼女たちの真夏のおわり。さいごのコンクールの描きかたが、ユーフォ2とは何が込められている作品かということを象徴する。それでもやっぱり僕は、想いぜんぶを「お姉ちゃん、大好き!」で届けてほしい人なんだ。

最終回「はるさきエピローグ」
→モヤモヤしたままで過ぎていく半年間の先に、本当に伝えたかった言葉があり想いがあった。特別な人からの「またね!」の一言は自宅で見て劇場で観ても、きっと次の曲が始まる原動力となるのです。全二十八回ご成長ありがとうございました。

鑑賞記録
2023.07.30
NETFLIX
→青春18きっぷで京都から揺られるお供に。
クドゥー

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