ユウ

M3-ソノ黒キ鋼-のユウのレビュー・感想・評価

M3-ソノ黒キ鋼-(2014年製作のアニメ)
4.4
ホラーロボットアニメという、なぜそれを混ぜた?!と言いたくなるアニメ。

強力な力であるロボットを保有しながらどうやってホラーを? というのが見始めるきっかけだった。
この作品は驚くことにムクロというひたすら強い不死身の敵が一体。潔いというかなんというか、実に思い切った設定。
ホラーの王道である追跡者タイプに範を取った形だ。

そのホラーとしてのアプローチは、ジリ貧の籠城戦を続けるしかない主人公たちに対し、度々威力偵察を行う敵、ムクロという構図で実現される。
舞台は日本だが、日本のほとんどは壊滅し、ムクロの影響で国外との連絡手段は断たれ、救助は望めない。

ムクロと相対した物体は生物、無生物を問わずシバガネ化という現象に襲われ、黒い金属質の何かになる。(動くとは限らない)
シバガネは必ずしも敵対的というわけではないのだが、ムクロに連なる貴重な手掛かりであるため調査対象(動くなら仕留める)。

この調査をヴェスというロボットもとい重機で行うのだが、お世辞にも強いとは言えないことに加え、シバガネを一体倒すのに最低でも一発、ペネトレイターという杭を打つのだが、これ一発の価格がおよそ2000万円。にも関わらず滅多に当たらないという劣悪なコストパフォーマンス。
(ちなみに現実から比較対象を挙げると、空対空/地対空兼用のミサイルが8割程度の精度を誇るとされ、一発当たり100万円程である。)

重ねて、シバガネはムクロがいる限り際限なく現れる。その上、件のペネトレイターはムクロへの有効打になるかは不明というなんとも心許ないスタート。
既にムクロは不死身と記述した通り、結論を言えば効かない。

物語は新機軸の重機であるマヴェス『アージェント』を配備し、ジリ貧な状況を打破するために急ピッチでマヴェスとヴェスの連携訓練を進めつつ、成功する見込みが極めて低い作戦に主人公たちが身を投じ続けるという、悪あがきとしか言えない状況が続く。
そして当然のように、作戦の度に犠牲者が増える一方。
その中で、主人公であるアカシの暗い過去や死神と渾名されるアージェントの血濡れの疑惑が示唆され、物語は暗澹とした猜疑と少なくない犠牲に溢れ、それらが齎す軋轢や孤立をこれでもかと見せつけてくれる。

元来ホラーとはそういうものだが、結構超展開が多い。そのため、ロボットものとして期待した人からは酷評されがちである。
このアニメはあくまでホラーがメインである。
ユウ

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