世界遺産に認定される熊野古道、そこにひっそりとたつ玉倉神社。鈴原泉水子は、神社の宮司である祖父に育てられ、外の世界をほとんど知らない。長いお下げ髪、めがね、引っ込み思案。泉水子がさわるとパソコンも携帯もなぜかフリーズしてしまう。「もっと、普通の女の子になりたい」周りと違う自分に悩んでいた、そんなある日、幼なじみの相楽深行が玉倉神社に現れて、泉水子の通う中学校に転校してくることになるが---!?---泉水子自身もまだ知らない大きな運命が、静かに動き始める!
世界遺産に認定された熊野古道--玉倉山にひっそりと建つ玉倉神社。そこで宮司の祖父に育てられた鈴原泉水子は、外の世界をほとんど知らずに暮らしていた。中学3年生になり、引っ込み思案な自分を変えたいと思った泉水子は、ある朝思い立って前髪を切る。そんな時、泉水子の両親の友人である相楽雪政が学校へ現れる。泉水子は、雪政の息子で幼なじみの深行と再会することになるが……。
泉水子のクラスに転校してきた深行。二人は雪政から、一緒に東京の鳳城学園へ進学するように言われ、落ち着かない日々を過ごしていた。やがて東京への修学旅行が近づき、泉水子はその機会に東京にいる母親・紫子と会い、進学の件を断ってもらおうと深行に相談する。修学旅行当日、二人は紫子と落ち合う予定の都庁展望室へ向かうが、泉水子は何かに付け狙われているのを感じていて……。
修学旅行での一件を経て、深行は自分の意思で進学先を決める。一方、泉水子は修学旅行を欠席したクラスメイトの和宮さとるにおみやげを渡すが、いつも穏やかで優しかった和宮は、思いがけないことを口にする。泉水子が以前とは心変わりしていると。同じ頃、突然、クラスメイトの男子生徒たちから喧嘩を吹っかけられた深行は、彼らの様子が普通ではないことに気づく……。
春を迎え、東京の鳳城学園へ進学した泉水子。寮のルームメイトは宗田真響という少女で、学園には弟の真夏もいた。入学式の日、心機一転して髪型を変えた真響を見て、泉水子も眼鏡を外してみることにする。クラスは真夏と同じC組で、深行は真響と同じA組だった。深行と別々で不安になった泉水子は、クラスメイトの留学生にただならぬ気配を感じる。留学生は怯える泉水子に声をかけてくるが……。
真響に怪我を負わせた高柳一条と、決着をつけようとする真夏。同行した泉水子と深行は、真響と真夏の弟・真澄を紹介される。泉水子は真響たちも“特別な存在”だと知り、彼らの強さを見習おうと自覚する。そんな時、雪政が学園の非常勤講師になった影響で、近づきつつあった深行との距離が再び離れてしまう。一人でいる泉水子に声をかけてきたのは、生徒会会長の如月・ジーン・仄香だった。
夏休みが始まった。実家へ帰る真響たちと共に長野を訪れた泉水子は、友達の家へ遊びに行くという初めての体験に気持ちが高まる。宗田家では大学教授を務める父親の生徒たちも招き、バーベキューパーティーが開かれた。その夜、ふと目覚めた泉水子は、庭で真澄と再会する……。翌日は戸隠で行われる生徒会執行部の合宿に参加。そこで泉水子は、学園内に複雑な対立関係があることを知る。
深行の山伏としての能力を試そうとする真響。危険を感じた泉水子は必死に止めようとするが、こうなったのも自分が深行を巻き込んだからだと落ちこんでしまう。そんな時、真夏が幼い頃から大切にしている愛馬・タビが病気との知らせが入る。真夏は真響が止めるのも聞かず、真澄に自分の身代わりをさせて合宿を抜け出す。一人で勝手な行動をとる真夏に、イラ立ちと不安を隠せない真響だが……。
真夏が、姿を消してしまった。真響は真澄が連れていったと考えるが、真相を聞こうにも一人では真澄を呼び出せない。悲しむ真響を助けいと願う泉水子は、姫神ならば真澄を呼び出せるのではと思い立ち、深行に相談する。だが、姫神は現れず、気がつくと目の前には真澄だけが立っていた。泉水子は、真夏がいるところへ案内してほしいと真澄にお願いするが……。
夏休みが終わり、学園祭の準備が始まった。今年は「戦国学園祭」というテーマに沿って、八王子城の攻防を模した合戦イベントが行われることになる。そこで学園トップを決める争いに決着をつけようとする高柳は、泉水子に自分たちの陣中へ来るよう誘いをかける。そんな時、泉水子は思わぬトラブルによって、真響と共に戦国衣装の着付け講習会で姫姿のモデルを務めることになってしまい……。
ついに幕を開けた学園祭。泉水子と深行を含めた生徒会執行部のメンバーは全員黒子姿になり、学園内を巡回する。泉水子はクラスの模擬店などに立ち寄り、にぎわう様子を楽しむが、心の中では姫神が突然現れた時のことが気にかかっていた。ずっと姫神と話していた深行に、ヤキモチのような感情をぶつけてしまう泉水子。そんな時、ふいに飛び込んでしまったホラーハウスで幽霊に遭遇する……。
夜になり深行と真夏が学園内を調べると、高柳の呪術が仕掛けられていた。真響と真夏は用心のため、真澄を呼び出して協力を頼む。そしていよいよ学園祭2日目。真響は合戦ゲームで防衛軍の姫将軍となり、高柳との決着に臨む。万一の事態に備えて学園内の警戒を強める深行は、泉水子に携帯電話を渡し、必ず連絡を取り合うように念を押す。だが、泉水子がひとりになった隙に、高柳と留学生たちが近づいて……。
不穏な空気が漂い、異変が生じる鳳城学園。通信機器も一切使えなくなり、深行は泉水子が原因ではないかと感じる。だが、真夏と共に高柳のところへ駆けつけた時、すでに泉水子は姿を消していた。普通ではない自分に怯え、もう学園には戻れないと思ってしまう泉水子。深行は泉水子を迎えに行くことを決意するが、その行く手を遮るかのように、八王子城の亡霊たちが襲いかかる……!
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